【肌荒れ】皮膚科で処方される薬の種類と市販薬との違いを解説

乾燥して粉をふいた頬の肌を接写した写真。肌荒れの原因と、皮膚科で処方される薬の種類や使い分けをまとめた記事

肌荒れが治らないとき、皮膚科ではどんな薬が処方されるのか

肌荒れ 皮膚科 薬|肌荒れが治らないとき、皮膚科ではどんな薬が処方されるのか

市販の保湿クリームを塗っても、粉をふくようなカサつきや赤みが引かない。

化粧ノリが戻らず、かゆみで夜中に目が覚める。そうした肌荒れは、単なる乾燥ではなく、治療の必要な皮膚の炎症であることがあります。

秋になると気温や湿度の低下で、当院にも相談が非常に多くなります。

今回は、肌荒れと呼ばれる状態の正体を整理したうえで、皮膚科で実際に使われる薬の種類と選び分けの考え方を、日本皮膚科学会の診療ガイドラインなど公的資料にもとづいて説明します。

  • 「肌荒れ」に含まれる代表的な皮膚の病気
  • 皮膚科で処方される保湿外用薬・ステロイド外用薬・その他の薬の役割
  • ステロイド外用薬の強さ(ランク)と、顔に使うときの考え方
  • 市販薬で様子をみてよい範囲と、受診したほうがよい状態の目安
  • ステロイドをめぐる誤解と、見落とされやすいポイント

「肌荒れ」と呼ばれる状態の正体

肌荒れ 皮膚科 薬|「肌荒れ」と呼ばれる状態の正体

肌荒れは病名ではなく、患者さんが感じている状態を表す言葉です。皮膚科では原因ごとに別の病名がつき、それによって使う薬が変わります。

乾燥が主体のもの(皮脂欠乏症)

日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」によると、皮脂欠乏症は乾皮症と同義で、皮膚の水分保持機能や表皮被覆機能が破綻して乾燥を示す状態の総称です。

初期は細かい鱗屑(りんせつ)や落屑だけですが、進行すると皮膚表面がざらつき、さざ波状・菱形模様の亀裂が現れます。かき壊して炎症が起きると、皮脂欠乏性湿疹に進みます。

炎症を伴う湿疹・皮膚炎

赤み、ぶつぶつ、じくじく、かゆみを伴うものは湿疹・皮膚炎群に分類されます。

同ガイドライン(接触皮膚炎診療ガイドライン2020)が引用する日本皮膚科学会の全国調査では、皮膚科を受診した患者のうち湿疹群が38.85%を占め、内訳はアトピー性皮膚炎9.98%、接触皮膚炎3.92%、脂漏性皮膚炎3.28%、手湿疹3.00%などでした。肌荒れで受診する人の多くが、この湿疹群のどれかに当てはまります。

かぶれ(接触皮膚炎)

化粧品や外用薬などが皮膚に接触して起きる湿疹性の炎症が接触皮膚炎で、刺激によるものとアレルギーによるものに分かれます。原因を突き止めて接触を断てば根治しうる一方、原因を見逃したまま対症療法を続けることは望ましくないとガイドラインは指摘しています。

顔のフケ・赤み(脂漏性皮膚炎)

鼻のわき、眉間、生え際などに脂っぽいフケと赤みが出るタイプです。真菌(カビの一種)の関与があるため、抗真菌薬の外用が選択肢になります。

肌荒れの原因として考えられること

肌荒れ 皮膚科 薬|肌荒れの原因として考えられること

皮脂欠乏症診療の手引き2021は、皮膚が乾燥する要因を三つに整理しています。

加齢などによる皮膚生理機能の変化(生理的要因)、外気や暖房による低湿度環境・過度の入浴・脱脂作用の強い洗浄料や擦り洗い(環境要因)、そして皮膚疾患や全身性疾患、抗がん剤や放射線治療に起因するもの(非生理的要因)です。

高齢者では頻度が高く、7割以上に皮膚の乾燥が認められたとする報告が同手引きに引用されています。

糖尿病や慢性腎臓病などの持病がある人にも起こりやすくなります。

手の荒れについては、手湿疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会、2018年)が、職業病のうち皮膚疾患が25〜30%を占め、職業性皮膚疾患の7〜8割を接触皮膚炎・湿疹群が、発症部位の8割以上を手や上肢が占めると記しています。理美容師、看護師、調理・皿洗い業などで頻度が高く、水仕事の多さが関わります。

皮膚科で処方される主な薬

肌荒れ 皮膚科 薬|皮膚科で処方される主な薬

保湿外用薬

皮脂欠乏症の治療の土台になります。保湿剤は、水溶性成分で角層の水分を直接増やすモイスチャライザー(ヘパリン類似物質、尿素など)と、皮膚を覆って水分蒸散を抑えるエモリエント(ワセリンなど)に分けられます。

ワセリンは油膜を作る一方でベタつきがあり、使用感に難があるとされています。

塗る量の目安として、手引きはFTU(finger-tip unit)を挙げています。1FTUはチューブから成人の示指の先端から第1関節まで押し出した量(約0.5g)で、これを手のひら2枚分、体表面積のおよそ2%に塗ります。ローションなら手のひらに1円玉大で約0.6gに相当します。1日1回より2回塗ったほうが高い保湿効果が期待できるという報告も示されています。

ステロイド外用薬

炎症を抑える中心的な薬です。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024によれば、日本では強さによって5段階に分類されます。

ランク 使い方の考え方(皮疹の重症度)
ストロンゲスト I群 ベリーストロングでも効果不十分な部位に限定して使うことがある
ベリーストロング II群 重症(高度の腫脹・浸潤・苔癬化を伴う紅斑、多数の搔破痕など)の第一選択
ストロング III群 中等症(中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹など)の第一選択
ミディアム IV群 中等症〜軽症(乾燥と軽度の紅斑、鱗屑)の第一選択
ウィーク V群 ごく弱い炎症に用いる

炎症症状に乏しく乾燥症状が主体の「軽微」な段階では、ステロイドを含まない外用薬を選ぶとされています。塗る場所も選択に関わります。同ガイドラインは、前腕伸側を1としたときの吸収率が頬13.0、頸部6.0、頭部3.5、陰囊42と示し、顔には原則としてミディアム(IV群)以下を使うとしています。米国は7段階、欧州は4段階で分類しており、海外の情報をそのまま当てはめられない点にも注意が必要です。

ステロイド以外の抗炎症外用薬

アトピー性皮膚炎で有効性と安全性が検討されている外用薬は、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏の4種類です。顔や首など吸収率が高く副作用が出やすい部位では、ステロイドで炎症を抑えたあとにこれらへ移行する方法がすすめられています。なお、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の外用は抗炎症効果が極めて弱く、接触皮膚炎の副作用もあるため、アトピー性皮膚炎では使用は推奨されていません。

内服薬

かゆみに対しては抗ヒスタミン薬が使われます。ただしアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬は抗炎症外用治療の「補助療法」として提案される(推奨度2、エビデンスレベルB)にとどまり、抗炎症外用薬を使わずに抗ヒスタミン薬だけで治療することは推奨されていません。

抗真菌薬

脂漏性皮膚炎には抗真菌薬の外用が用いられます。ケトコナゾール製剤の添付文書(PMDA)では、効能又は効果に白癬、皮膚カンジダ症、癜風とともに脂漏性皮膚炎が記載され、脂漏性皮膚炎に対しては1日2回患部に塗布するとされています。当院の一般皮膚科(保険診療)でも、ステロイド外用薬・抗アレルギー薬・抗真菌薬などを症状に応じて用いています。

市販薬と処方薬は何が違うのか

肌荒れ 皮膚科 薬|市販薬と処方薬は何が違うのか
項目 市販薬でのセルフケア 皮膚科の処方薬
想定される状態 軽微な鱗屑や粗造のみで、かゆみを伴わない一過性・軽度の乾燥 明らかな鱗屑や搔破痕があり悪化が予測される場合、湿疹化した場合
原因の特定 自己判断になる 問診・視診に加え、かぶれが疑われればパッチテストで原因を確定できる
抗炎症薬の選び方 購入時に薬剤師・登録販売者へ相談する 皮疹の重症度・部位・年齢に応じてランクと剤形を選ぶ
使える薬の幅 店頭で購入できる範囲 タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏など医療機関で扱う薬も選択肢になる
効かないとき 薬剤そのものが接触皮膚炎の原因になっていることもある 4週間程度外用しても改善しない場合や重症例は、皮膚科専門医への紹介が望ましいとされる

皮脂欠乏症診療の手引き2021も、一過性や軽度の乾燥には医療用保湿剤を使わず、一般用医薬品・医薬部外品・化粧品の保湿剤と生活指導で対応する考え方を示しています。市販薬で様子をみること自体は妥当な選択です。

よくある誤解と見落としがちなポイント

肌荒れ 皮膚科 薬|よくある誤解と見落としがちなポイント

誤解1: ステロイドを塗ると肌が黒くなる

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024は、ステロイド外用薬の使用後にみられる色素沈着について、皮膚炎が続いたことで生じた炎症後色素沈着が、炎症が消退して顕在化したものであり、ステロイド外用薬によるものではないと明記しています。むしろ色素沈着を防ぐには、早期に抗炎症外用薬で皮膚炎を十分に鎮めることが挙げられています。

同ガイドラインは、ステロイドへの恐怖感や忌避の背景に、ステロイド内服薬の副作用との混同、そして病気そのものの悪化と薬の副作用との混同があると指摘しています。全身性の副作用については、2週間以上ステロイド外用薬で治療された小児のメタアナリシスで視床下部―下垂体―副腎系の抑制がみられた割合は3.8%で、副腎不全の症状との関連は認められなかったと記載されています。局所の副作用(毛細血管拡張、皮膚萎縮、酒皶様皮膚炎など)は起こりうるため、強さと期間を医師と決めて使う前提は変わりません。

誤解2: 肌に合わないから化粧品を替えれば治る

接触皮膚炎診療ガイドライン2020に掲載されたSSCI-Netの全国調査では、パッチテストで確定したアレルギー性接触皮膚炎の原因製品423件のうち、化粧品・薬用化粧品が54%、医薬品が25%を占めました。化粧品の中では染毛剤、シャンプー、化粧下地、化粧水が多く報告されています。原因成分が特定できていなければ、別の製品に替えても同じ成分で再発します。自己流の入れ替えを繰り返す前に、パッチテストという検査があることを知っておく価値があります。

見落としがち: 顔のカサつきは「乾燥」とは限らない

皮脂欠乏症の好発部位は両下肢の伸側で、皮脂分泌や発汗の多い顔面での発症頻度は低いと手引きは記しています。顔だけが粉をふく、赤みが引かないという場合は、脂漏性皮膚炎や接触皮膚炎など別の病気が隠れている可能性を考えたほうが近道です。

セルフケアでできること

皮脂欠乏症診療の手引き2021の患者指導にもとづくチェックポイントです。

  • 入浴後は角層から水分が蒸散するため、直後でなくてよいので保湿剤を塗る
  • 石鹸・洗浄剤は主成分が界面活性剤で、過度の使用やすすぎ残しは乾燥を悪化させる
  • ナイロンタオルやブラシでこすらず、よく泡立てて泡を手のひらに取り、やさしく洗う
  • 乾燥の強い部位への石鹸・洗浄剤の使用は最小限にとどめる
  • 冬は暖房で室内の相対湿度が下がるため、加湿器などで対策する
  • 羊毛素材やごわごわした衣類、髪の毛先の接触など、軽微な刺激も避ける
  • 紫外線の強い5〜8月、特に10時から14時頃の外出では帽子や日陰を活用する

保湿剤を塗るタイミングについては、入浴1分後と1時間後で角層水分含有量に有意差はなかったという報告が引用されています。生活の都合に合わせて続けやすい時間帯を選んで問題ありません。

皮膚科を受診すべきタイミング

次のいずれかに当てはまるなら、自己判断で薬を替え続けるより受診が近道です。

  • 市販薬や保湿剤を使っても改善せず、かえって広がっている
  • 赤み、ぶつぶつ、じくじく、かさぶたなど炎症の所見がある
  • かゆみで眠れない、無意識にかき壊してしまう
  • 亀裂ができて痛みを伴う、出血する
  • 特定の化粧品や外用薬を使った後に悪化する心当たりがある
  • 手荒れが水仕事のたびに再発し、季節を越えても治らない
  • 顔の同じ部位だけに赤みやフケが繰り返し出る

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024は、4週間程度外用しても皮疹の改善がみられない症例や重症例について、皮膚科専門医への紹介が望ましいとしています。手湿疹診療ガイドラインも、ステロイド外用薬を連日使っても改善しない難治例では原因検索を行い、漫然とした外用を避けるよう求めています。

よくある質問

Q. 保湿剤だけで治りますか
乾燥が主体で炎症がなければ、保湿剤による治療の反応性は高く、一般に予後は良好とされています。ただし対症療法であり、中断や季節の変化で再発します。保湿剤を使っても悪化して湿疹化した場合は、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を併用します。
Q. ステロイド外用薬は途中でやめてよいですか
長期間使って炎症を鎮めた後は、急に中止せず、寛解を維持しながら漸減または間欠投与に移すとされています。再燃を繰り返す場合は、週2回など間隔を空けて塗り続けるプロアクティブ療法という方法もあります。自己判断での中断より、次の診察で相談してください。
Q. かゆみ止めの飲み薬だけで治せませんか
非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬は、外用治療の補助として提案される位置づけです。抗炎症外用薬を使わずに抗ヒスタミン薬のみで治療することは推奨されていません。かゆみの元にある炎症を外用薬で抑えることが前提になります。

気になる症状があれば皮膚科へご相談ください

セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。

▼ 麹町皮ふ科・形成外科クリニック 公式サイト

所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)

まとめ

肌荒れという一語の中には、乾燥主体の皮脂欠乏症、かぶれ(接触皮膚炎)、脂漏性皮膚炎、手湿疹など、治療の異なる状態が混ざっています。

皮膚科の薬は、保湿外用薬で土台を整え、炎症の強さと部位に応じてステロイド外用薬のランクを選び、必要に応じてステロイド以外の抗炎症外用薬や抗真菌薬、抗ヒスタミン薬を組み合わせる、という順序で組み立てられます。

市販薬で改善しない、繰り返す、かゆみで眠れないといった状態が続くなら、原因を確かめる段階に来ています。気になる症状があれば当院を受診してください。麹町皮ふ科・形成外科クリニック、BIOTOPE CLINICでもオンライン診療でもご相談いただけます。

お気軽にリンクからご連絡くださいませ。

References

  1. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』日本皮膚科学会雑誌 134(11):2741-2843、2024年 出典
  2. 皮脂欠乏症診療の手引き作成委員会『皮脂欠乏症診療の手引き2021』日本皮膚科学会、日本皮膚科学会雑誌 131(10):2255-2270、2021年 出典
  3. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』日本皮膚科学会雑誌 130(4):523-567、2020年 出典
  4. 手湿疹診療ガイドライン委員会『手湿疹診療ガイドライン』日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー接触皮膚炎学会、日本皮膚科学会雑誌 128(3):367-386、2018年 出典
  5. 『ニゾラールローション2% 添付文書(2022年9月改訂・第4版)』独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、2022年 出典

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監修医師

苅部 淳 形成外科専門医・麹町皮ふ科形成外科クリニック理事長

苅部 淳

Karibe Jun

理事長

略 歴

順天堂大学医学部卒業
東京大学附属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
山梨大学附属病院形成外科 助教・医局長
2019年 麹町皮ふ科・形成外科クリニック 開院(千代田区市ヶ谷)
2021年 BIOTOPE CLINIC 白金 開院(港区白金)

資 格

日本形成外科学会 形成外科専門医
日本抗加齢学会 専門医
日本医師会認定産業医
アラガン社 ボツリヌス注射・ヒアルロン酸 VST認定医

受 賞

東京大学形成外科 最優秀賞(2016年)
日本形成外科学会 優秀賞(2018年)
ASPS(アメリカ形成外科学会)優秀演題発表(2018年)

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