薬疹とは

中毒疹(薬疹)とは、体外物質が体内に入り、または体内で産生された物質が、生体に障害を与え、その結果発疹を生じたものを中毒疹(toxicodermia)という。原因物質が薬剤である場合、これを薬疹(drug eruption)と言います。

原因

薬疹は、体内に入った薬剤の成分、あるいはその代謝産物が、アレルギー性または非アレルギー性機序で皮膚に障害を起こすことで発症。

アレルギー性の薬疹のなかでは、Ⅳ型アレルギーによるものが最も多いです。

種類

薬疹には皮疹の形によって臨床的な病型分類があります。しかも、原因となる薬によって、ある程度は薬疹の型が決まっていますので、経験のある皮膚科医であれば、皮膚の性状を見て、原因となる薬剤を予測することができます。しかしながら、最近の新しく開発された薬剤、例えば生物学的製剤や分子標的薬などでは古典的な薬疹の分類に入らない皮疹をとる場合が少なくありません。

1. 多型紅斑型
2. 播種性紅斑丘疹型
3. 水疱型
4. 蕁麻疹型
5. 扁平苔癬型
6. 湿疹型
7. 固定薬疹型
8. 光線過敏型
9. ざ瘡型
10. 粘膜型
11. 重症型薬疹
①SJS / TEN
②DIHS
③AGEP

1. 多型紅斑型

抗生剤や痛み止めで起こす場合が多い薬疹です。円形の紅斑で、同心円状に拡大するために、弓の的状にみえる(Target lesion)場合があります。

2. 播種性紅斑丘疹型

最も頻度の高い薬疹の病型であり、全身に紅斑・丘疹が多発します。様々な薬剤で起こりますが、抗生剤で起こる薬疹の多くはこのタイプです。

風邪薬による多型紅斑型薬疹

3. 水疱型

4. 蕁麻疹型

色々な薬剤で起こりえる薬疹ですが、唇が腫れたり、息苦しさを感じるときには緊急性を要する場合があります。

5. 扁平苔癬型

高血圧薬によるものが最も多い薬疹ですが、飲み始めて、皮疹が出現するまでに、比較的長期間を要する(半年~数年して薬疹がでる)こともあるため、薬疹であると認識していない場合もあります。

6. 湿疹型

7. 固定薬疹型

解熱剤や風邪薬などによって起こる場合が多い薬疹です。同じ場所に繰り返すのが特徴であり、繰り返すたびに症状は強くなってきます。水疱を形成する場合もあります。

8. 光線過敏型

高血圧の薬や高脂血症の薬、便秘薬などでよく見られますが、クロレラなどのサプリメントで起こることもあります。最近では湿布薬(モーラス(R))によるものがよくみられます。

リピトール(R)(高脂血症治療薬)による光線過敏型薬疹

モーラス(R)テープによる光線過敏型薬疹:モーラス(R)を貼っただけでは薬疹は起こしませんが、日光に照たると薬疹を起こします。一旦、薬疹を作ると治った後でも半年~1年間は日光に照たるたびに薬疹を作ります。

9. ざ瘡型

副腎皮質ホルモンやビタミンB12によるものが多い。
副腎皮質ホルモンによるニキビ型の中毒疹

10. 粘膜型

痛み止めによるものが最も多いが、重症型のSJSやTENの初期症状の場合があるので、注意が必要です。
ロキソプロフェンRによる粘膜型薬疹

11. 重症型薬疹

痛み止めによるものが最も多いが、重症型のSJSやTENの初期症状の場合があるので、注意が必要です。
ロキソプロフェンRによる粘膜型薬疹

①SJS/TEN:Stevens-Johnson syndrome/Toxic Epidermal Necrosis

口腔内や外陰部などの粘膜症状を主体とした中毒疹であり、皮疹の面積が30%を超えるものをTEN、それ以下をSJSと定義されます。

  • 表皮剥離(BSA30%~)
  • 組織学的に広範囲にケラチノサイトのアポトーシスがみられる
  • SCORTEN:重症度評価
  • 致死率30%:高Na血症が予後に関連する
  • アポトーシスのメカニズム:

粘膜症状

②DIHS:Drug induced hypersensitive syndrome、薬剤誘発性過敏症候群
  1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑
  2. 薬剤中止後も2週間以上遷延する
  3. 38℃以上の発熱
  4. 肝機能障害
  5. 血液学的異常(a.白血球増多1.1万以上 b.異型リンパ球出現5%以上 c.好酸球増多1500/mm3いずれか1つ以上)
  6. リンパ節腫脹
  7. HHV-6の再活性化

1~7全て満たすもの:典型的DIHS
1~5を満たすもの:非典型的DIHS
と定義されます。重症の場合には死亡する可能性がある(死亡率5~10%)重症型薬疹です。
デパケン(R)によるDHIS

③AGEP:Acute generalized exathematous pustulosis、急性汎発性発疹性膿疱症

(1)急速に出現、拡大する紅斑
(2)紅斑上に多発する無菌性非毛孔性小膿疱
(3)末梢血好中球増多(7,000/mm3以上)
(4)発熱(38℃以上)

検査

①チャレンジテスト:薬疹の確定診断は、原因と考えられる薬剤を実際に投与して(チャレンジテスト)皮疹が出現するかどうかを確認するしかありません。ただし、重症型の薬疹などではチャレンジテストをすることで、より重症の薬疹を起こしてしまうことがあるので、最近はほとんど行われません。もし、チャレンジテストを行うのであれば、入院して医師の監視の下で行うべき検査です。
②パッチテスト:薬剤を皮膚に貼付して48時間後と72時間後に皮膚を観察するテストですが、陽性率が低いためにほとんど行われていません。
③プリックテスト:皮膚の表面にキズをつけて、薬剤をその場所に置いてアレルギー反応が起こるかをみるテストですが、1型アレルギーの場合にはショックなどを引き起こす可能性があるため、実施には慎重であるべきです。
④DLST検査:患者さんの血液からリンパ球を分離して、疑わしい薬剤を加えて細胞培養を行い、リンパ球の変性率を観察する検査法です。採血のみで行われるため、安全性が高い検査です。ただし、被疑薬を使うために飲んでいた薬剤がないとできません。また、検査できる薬剤が限られるために、すべての薬剤でできる検査ではありません。

当院の治療

重症型薬疹以外は、基本的には外来で治療が可能です。ただし、原因となった薬剤により治るまでの期間は異なります。一般的には水溶性の薬剤は飲むのを止めて48~72時間程度で体から無くなりますが、脂溶性の薬剤(例えばアジスロマイシン)は、飲むのを止めても長期間(1~2週間)体内に残りますので、薬疹も長期間続くことになります。

治療の基本は、
(1)原因薬剤を推測して、中止する。
(2)副腎皮質ホルモン剤の外用。
(3)抗アレルギー剤の内服。
(4)副腎皮質ホルモン剤の内服。などです。

日常生活の注意点

アレルギー反応は一生続いてしまうため、ほとんどの場合、薬疹を起こしてしまった薬をその後内服できません。

原因となる薬を自らが知り、それに関連する内容の薬を飲まないようにすることが第一の予防策となります。どうしてもという場合は、なるべく飲む薬の種類を少なくして、飲む期間も短期間に留めます。

また、自分が薬疹にかかったことがあることを、受診のたびに医師や薬剤師に示す(薬疹カードの提出)ことも大切です。市販薬には医師や薬剤師のチェックが入らないため、患者さん自身が知識を蓄え、成分にアレルギー反応を起こすものが含まれているかを確認していく必要があります。

どのようなケースでも、原因となる薬が何なのかをしっかりと突き止めておくことが大事です。

よくある質問

薬疹が疑われる時はどんな時ですか。

薬疹を起こす薬はある程度きまっているため、その薬を服用してら24時間以内に出現した蕁麻疹などの皮疹は薬疹を疑います

薬疹の診断はどのように診断しますか。

薬剤の使用歴を確認し、特定の薬剤によるアレルギーが疑われる場合には、一般的なアレルギー検査が行われます。
簡便に行える検査は皮膚テストであり、皮下に原因薬剤を注入して発赤の程度をみるものや、パッチテストなど、さまざまなものがあります。

薬疹にならないためには日常生活で注意することはありますか。

薬疹を起こした方ことがある方、アレルギー体質の方は、医療機関にかかる際、薬疹を引き起こす薬などを避けてもらいましょう

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