悪性黒色腫
悪性黒色腫はメラニン色素を作り出すメラノサイトが癌化して発生する皮膚癌です。人種差があり、白人で発生が最も多く、日本人は10万人あたり1~2人とされています。
原因
はっきりとした原因は不明です。外的刺激、紫外線などが誘因となることがあります。
症状
多くは黒色調の色素斑ないし腫瘤です。ときにほくろとの区別が難しいことがあります。一般的に左右非対称の不規則な形、病変の境界が不明瞭・不均一、色調に濃淡がある、大きさがやや大きい、表面が隆起しているなどの所見があることが多く、これらの所見を総合的に加味して診断します。まれに無色素性黒色腫とよばれる赤色調の病変があり、診断が非常に難しい場合があります。
病型分類
見た目の所見、顕微鏡の所見、予後から4型に分類されます。
悪性黒子型
高齢者の顔面に多く、10年以上かけて水平方向に徐々に大きくなり、病変内に腫瘤や潰瘍が生じます。慢性の紫外線照射が関係するといわれています。
表在拡大型
あらゆる年齢層の体幹、下腿に生じます。紫外線照射が関係するといわれており、白人では最も多い病型です。
結節型
結節、腫瘤のみで色素斑が生じない病変です。腫瘍の厚さが予後に関係するため、この病型は一般に予後がよくありません。
末端黒子型
一般に青年から壮年期以降の足底や手足の爪に生じます。最初は不整形の黒色斑で始まり、数ヵ月から数年を経て色素斑内に結節や腫瘤、潰瘍を生じます。外的刺激が誘因になることがあります。日本人では最も多い病型です。
これら4病型の他に眼瞼、鼻腔、口唇、口腔、外陰部などの粘膜に生じることもあります。外的刺激が誘因となると考えられています。皮膚に生じる悪性黒色腫よりも治療が難しい場所で、血管やリンパ管などが豊富であるため、一般に予後がよくありません。
検査
最初は黒いシミとして始まり、徐々に不規則な形をとって拡がります。早期の悪性黒色腫とホクロとを肉眼的に鑑別するのは困難ですが、診断のポイントとして、
- 全体の形が非対称的で、縁どりが凹凸不整
- 黒色、茶褐色、青色などが入り混じり、色の濃さにもムラがある
- 大きさが7mm以上(生まれつきのホクロを除く)
- 大きさや形が変化してきている
などの徴候がみられる場合は要注意です。早期の段階を過ぎると、表面に腫瘤(こぶ)を形成するようになり、出血や潰瘍を伴います。
爪の悪性黒色腫も日本人に比較的多くみられます。爪の縦方向の黒い線が初発症状の場合が多いですが、これは日本人では正常でもときに認めます。黒い線の幅が拡大する、爪のまわりの皮膚に黒いしみだしを認める、それらに伴って爪が変形してくる、という場合には悪性黒色腫を疑う必要があります。
当院の治療
病変の厚さ、潰瘍の有無、所属リンパ節・他の臓器への転移の有無など病気の進行により治療が異なります。
臓器転移を生じていない例では手術による切除、所属リンパ節の生検ないし郭清、および術後補助化学療法が行われます。病変は境界より0.5~2cm程度離して切除します。所属リンパ節の転移が明らかでない場合は、リンパ節生検を行い転移が判明したらリンパ節郭清を行います。所属リンパ節転移が明らかな場合は同様にリンパ節郭清を行います。病期Ⅲ以上では術後に補助療法を行います。
リンパ節転移が広範囲に及んだり、臓器に転移がある場合は、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬などの化学療法を主体とし、外科治療、放射線治療を加えた集学的治療が行われます。
日常生活の注意点
悪性黒色腫の早期発見のために、気をつけるポイントはありますか?
通常のほくろやシミと見分けることが重要です。
悪性黒色腫の早期発見のためには、下の表に示す5つの特徴(ABCDE基準)が役立つといわれています。ほかにも病変の大きさ、形、色に変化がないか、潰瘍や出血がないか、感覚に変化がないか、大きさ(最も長いところ)が6mmを超えていないかという点にも注意が必要です。