以下の症状がある場合は粉瘤かもしれません。
・黒い点のある皮膚の盛り上がりがある
・大きくなるしこりがある
・しこりから臭くてドロっとしたものが出てきた
粉瘤なのかな?粉瘤かもしれない!と気づいたら、なるべく早く受診した方がいいのですが、病院のなかでも何科を受診すればいいのかわからない方も多いでしょう。
この記事では粉瘤の特徴や原因、治療法、似ている腫瘤との違いについて解説しています。
さらに何科を受診すると良いのかまで解説を加えています。
ぜひご参考にしてください。
粉瘤とは?(アテローム)
粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の内側にできた袋に垢(角質)や皮脂がたまってしまった良性腫瘍のことです。
粉瘤は袋が表皮(皮膚の表面)と同じ作りなので表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)、ドイツ語ではアテロームとも呼ばれています。
できた袋は表皮と同じ作りになっているため、古くなった角質は剥がれますし皮脂も出てきます。
しかし出口がとても狭くなっているので袋の中にたまり続けて少しずつ大きくなっていき、皮膚が盛り上がってしこりとなります。しこりの大きさは数mm〜数cmです。
粉瘤の中央には黒い点が見られ、強く押さえるとドロっとした内容物が出てくる場合があり、皮膚の老廃物がたまったものなので悪臭がします。
細菌感染や異物反応(異物を体外に出そうとする)によって粉瘤は炎症を起こして赤く腫れ、自然に破れて内容物や膿が出てしまう場合もあります。
粉瘤の症状でくる患者様はどちらかというと中年男性が多いです。
また、男性は女性の約2倍の発生率といわれています。
粉瘤とニキビやイボや脂肪腫との違い
粉瘤は皮膚にできる良性腫瘍ですが、他のニキビなどの症状と見た目が似ているものだと迷う場合もあるでしょう。
よく見かけるものの中から「ニキビ」「いぼ」「脂肪腫」をピックアップしました。
粉瘤との違いを下記でそれぞれ解説しています。
粉瘤とニキビとの違い
ニキビは毛穴に皮脂が詰まり発生します。
炎症が起きていない初期のニキビには毛穴が閉じている「白ニキビ」と、毛穴が開いて詰まったものが酸化した「黒ニキビ」があります。
赤く腫れているのはアクネ菌が増殖して炎症を起こしている状態です。
大きさは炎症を起こしていても数mmです。
<粉瘤とニキビの違い>
粉瘤 | ニキビ | |
大きさ | 数mmから数cm | 数mm |
黒い点 | 見られる場合がある | 黒ニキビにはある |
しこり | ある | ない |
内服薬や塗り薬 | 効果なし | 効果あり |
内容物のにおい | 臭い | 臭くない |
ニキビは内服薬や塗り薬で治せますが、粉瘤の完治に効果のある薬はありません。
そして、ニキビは炎症を起こして膿が出てもほとんどにおわない点も違っています。
粉瘤とイボとの違い
よく見かけるイボはヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が皮膚に感染してできる小さなできものです。
正式にはウイルス性疣贅(ウイルスせいゆうぜい)と呼びます。
ヒトパピローマウイルスは正常な皮膚には感染しないと考えられており、ケガをしたりかきむしったりなど皮膚に異常がある時にウイルスが中に入り込んで感染します。
<粉瘤とイボの違い>
粉瘤 | イボ | |
大きさ | 数mmから数cm | 数mmから1〜2cm |
多発してつながる | ない | ある |
表面のブツブツ感 | ない | ある |
内容物が出てくる | ある | ない |
イボの表面はブツブツした感じがあり、多発したものが徐々につながって大きくなる場合があります。
粉瘤はそれぞれが独立しているため、他のものとつながりませんが徐々に大きくなります。
また粉瘤と違って、イボは押しても何も出てきません。
粉瘤と脂肪腫との違い
脂肪腫とは皮膚の下に脂肪細胞が増えてできた良性の腫瘍です。
脂肪のため触ると柔らかく、皮膚の下で動いているのを感じます。
通常は痛みもなく徐々に大きくなり、1〜15cm程のドーム状に盛り上がります。
脂肪腫が発生する原因はわかっていません。
血管を含んでいる脂肪腫や、大きくなって神経を圧迫するようになった脂肪腫は痛みを感じる場合があります。
<粉瘤と脂肪腫の違い>
粉瘤 | 脂肪腫 | |
しこり | 硬く弾力がある | 柔らかい |
しこりの可動性 | ない | ある |
黒い点(開口部) | ある | ない |
感染 | する | しない |
脂肪腫には開口部である黒い点は見当たらず、感染はしないので赤く腫れる症状もありません。
完治させるには手術で取り除くしか方法がないのは粉瘤と同じです。
粉瘤の生じる原因
粉瘤は皮膚の内側にできた袋に、垢や皮脂がたまった表皮嚢腫です。袋ができる原因は詳しくわかっていませんが、毛穴の上の部分である毛漏斗部が内側へ向かってくぼみ込んで発生すると考えられています。
しかし、毛穴のない手のひらや足の裏などにも粉瘤ができる場合があります。
これはケガなどにより小さくても傷ができた場合に、表皮が内側に入り込んでできると考えられている外傷性表皮嚢腫(がいしょうせいひょうひのうしゅ)です。
そして外傷性表皮嚢腫の発生には、イボと同じヒトパピローマウイルスが関与しています。
粉瘤には垢や皮脂がたまっていますが、袋の内側で出たものを外に排出できないだけですので、皮膚を清潔に保っていないことが原因ではありません。
粉瘤のできやすい場所
粉瘤は体中どこにでもできますが、頭、顔、耳、首、背中、お尻などはできやすい場所として知られています。
顔、首、背中で全体の約60%を占めているといわれています。ここでは、粉瘤ができやすい場所とその特徴について解説をしていきます。
頭
頭にできる粉瘤は外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)が多いです。
表皮嚢腫は毛漏斗部が皮膚の内側へくぼみ込んで発生すると考えられていますが、外毛根鞘性嚢腫は毛漏斗部より下側の毛包峡部から発生すると考えられています。
表皮嚢腫よりもしこりは硬いのが特徴です。徐々に大きくなっていくと皮膚が盛り上がった場所は毛根が死んでしまうため、頭髪が生えず部分的にハゲてしまいます。
表皮嚢腫は中年男性に多く見られますが、外毛根鞘性嚢腫は40〜50代の女性に多い粉瘤です。
顔
顔にできる粉瘤は全体の約23%で最も多いです。顔は自分でも常に目に入る場所であるため、小さな状態で見つけやすいです。その反面、目立ちやすい場所のため、小さいうちに手術で摘出した方が傷跡も小さくて済みます。
耳たぶや耳の裏
耳は皮膚が薄いので皮膚が盛り上がりやすく見つけやすいです。耳たぶや耳の裏に粉瘤ができた場合ヘッドホンが接触する刺激や、ピアスの穴を開ける位置が粉瘤に近いと炎症を起こす可能性があります。
首・ワキ
首の粉瘤は全体の約19%で、2番目にできやすい場所です。*
顔と同様で隠すのが難しい場所のため、大きくなると見た目が気になります。
また袋は柔らかくて破れやすいので、感染するとすぐに破れて手術で取り出すのが難しくなります。
首やワキにたくさんできる1cm位の粉瘤は、多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)です。これは皮膚の下の袋に皮脂が多く出るため、内容物はどろっとした黄色の液体です。
ワキは女性の場合、ムダ毛処理による刺激が粉瘤を悪化させる要因ともなります。
胸
胸にも粉瘤ができますが、発見したらなるべく小さいうちに手術をした方がよいでしょう。
胸部は肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん / ケロイド)のできやすい場所なので、手術跡がケロイドになりやすいからです。
皮膚を大きく切ると、その分大きなケロイドができてしまう可能性があります。
背中・お尻
背中の粉瘤は全体の約17%を占める3番目にできやすい場所ですが、自分で見られないため発見するのが遅れがちです。*
仰向けに寝た時に圧迫感があるなどで粉瘤を発見する場合もあり、他の場所よりも大きくなっている傾向にあります。
お尻も自分では見えにくい場所で、座った時の圧迫感で発見する場合があります。
手足
粉瘤は毛穴の上の部分が皮膚の内側にくぼみ込んでできると考えられていますが、毛穴のない手のひらや足の裏にもできる場合があります。
中でも足の裏の粉瘤は10〜30代が多く、他の場所に比べて低年齢であるのが特徴です。*
足の裏は常に地面に押し付けられているので、皮膚の外側には盛り上がらず内側へ入り込んで行きます。そのためウオノメやタコなどと間違いやすい形状になります。
鼠径部・陰部
鼠径部と陰部に関しては性別で特徴が異なりますので、男性と女性に分けて解説します。
男性
陰嚢に1cmほどの粉瘤がたくさんできるものは多発性陰嚢粉瘤症(たはつせいいんのうふんりゅうしょう)です。内容物が次第に石灰化して硬くなりやすく、見た目も米粒や白い小豆のように隆起しています。
女性
女性の鼠径部・陰部は分泌腺が多いため、男性よりも粉瘤の袋に垢や皮脂がたまりやすい状態です。
さらに下着で擦れたり内股で歩いたりすることが刺激となって、粉瘤が大きくなりやすいです。
鼠径部や陰部は皮膚が薄く炎症を起こすと周りに広がり、痛みが強くて座るのも苦痛な状態となります。
粉瘤ができたら皮膚科か形成外科へ
粉瘤は何科にかかれば良いのか迷う方もいるでしょう。世間では外科、皮膚科、整形外科を受診している場合が多いのですが、おすすめは皮膚科または形成外科です。
皮膚や皮膚の下にできる病気はさまざまで、粉瘤に似た脂肪腫やニキビ、さらには粉瘤であってもガン化したものもあります。ガンである可能性は少ないですが、素人判断で良し悪しを決めるのはリスキーです。
医師の診察をきちんと受けて診断してもらいましょう。
皮膚科と形成外科のどちらが良いのか判断しかねる場合は、それぞれの特徴をよく把握して選んでください。皮膚科も形成外科も、内科や外科に比べると特殊な診療科です。
厚生労働省によると形成外科の病院・クリニック数は皮膚科の半分なので、比較的身近にあるのは皮膚科です。*
皮膚の病気全般に詳しい皮膚科でとりあえず診察を受けて診断してもらってもよいでしょう。初めから手術を考えているのであれば、形成外科を受診する方が流れはスムーズです。
粉瘤の治療方法
粉瘤の治療は炎症がある場合とない場合で若干違いますが、基本は手術です。
皮膚の内側に袋ができて老廃物がたまっていく粉瘤は、そのままにしておくと少しずつ大きくなります。
さらに細菌感染や異物反応で炎症を起こすと痛みがあり、最悪皮膚が破れる事態にまで至ると見た目にも悪くなります。炎症を起こした場合は、炎症を抑えるために抗生剤を使ったり切開して膿を出したりしますが一時的なものです。粉瘤を完治させるには、手術で袋を全て取り除かなければなりません。
手術には主に2種類ありますのでそれぞれ解説していきます。
くり抜き法
体への負担が少ない手術方法に「くり抜き(へそ抜き)法」があります。
小さめの粉瘤が対象で主に皮膚科で行われています。
くり抜き法の流れ
1.局所麻酔
2.粉瘤の黒い点の開口部(へそ)に使い捨てのホールパンチで穴を開ける
3.2〜5mmほどの穴から内容物を押し出す
4.粉瘤の袋をできるだけ取り除く
5.穴はそのままで縫合しない場合が多い
小さい穴から袋まで取り除くので先に内容物を全部出し切る必要があります。
開けた穴はそのままの場合が多いため、傷口は小さくても完全に治るまで2週間程度かかります。
くり抜き法のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
傷跡が小さい | 出血のリスクがある |
炎症性粉瘤でも可能 | 再発のリスクがある |
日帰り手術が可能 | 傷が治るまでに時間がかかる |
小さな傷で済むのがメリットです。
しかし、開口部を的確にくり抜けなかったり袋を完全に除去できなかったりすると再発のリスクが高まります。
そして袋を完全に除去しようとすると、今度は出血のリスクが高まります。足の裏や炎症を何回も繰り返した粉瘤、サイズの大きな粉瘤は適応ではありません。
メスを使った切除縫縮
もう1つの手術方法はメスで切開し切除する方法です。
あらゆるサイズの粉瘤が対象で、形成外科で多く行われています。
メスを使った切除方法の流れ
1.粉瘤の範囲をマーキング
2.切開するラインを記入
3.局所麻酔
4.メスで葉っぱ状に切開
5.皮膚と粉瘤の袋を破らず一緒に取り除く
6.皮膚を縫い合わせる
粉瘤の袋を傷つけずそのまま取り除けるため、再発リスクは少ないのがメリットです。
切開する範囲は粉瘤の直径と同じくらいになります。
メスを使った切除方法のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
再発するリスクが少ない | 粉瘤のサイズが大きいと傷跡が大きくなる |
傷は1週間で治る | 粉瘤のサイズが大きいと入院する場合もある |
出血のリスクが少ない |
切開した部分は縫い合わせますので1週間で治り抜糸ができます。傷は大きくなりますが、形成外科の医師は傷をきれいにする専門家ですので目立ちにくくなるよう対応してくれます。
粉瘤治療の注意点
粉瘤は手術で取り除く以外に完治する方法はありません。粉瘤の袋がある限り垢や皮脂はたまっていくからです。
大きくなる粉瘤に対して、自分で針で穴を開け内容物を押し出して小さくする行為は危険です。
自分で粉瘤を潰そうとすると、開けた穴から細菌が入って炎症を起こし痛みが出てきます。最終的に手術で取り除くようになった場合、炎症による癒着や粉瘤の袋の変形により手技が難しくなってしまいます。
炎症による影響
・手術後の再発率が上がる
・色素沈着やひきつれで傷跡が残りやすい
・手術の局所麻酔の痛みが強い
開口部を含めて袋を完全に取り除けずに再発率が上がります。
炎症で色素沈着を起こしたり、大きなダメージを受けた分だけ強く治ろうとしてひきつれを起こしたりするリスクもあります。
後々悩ましい状態にならないためにも、粉瘤に気づいたら自分で処理せずに病院を受診して処理してもらうことが大事です。
受診する病院を選ぶポイント
粉瘤の疑いがあるものに気づいた時は早めに病院を受診した方がよいですが、ここでは受診する病院を選ぶポイントを3つご紹介します。
・実績のある医師が手術している ・粉瘤治療での実績が多いクリニック ・傷跡が気になる場合は形成外科 |
後悔のない粉瘤の治療を受けるために、下記のポイントを把握しておきましょう。
実績のある医師が手術している
粉瘤の治療法は手術なので、実績のある医師が執刀している病院がいいです。できた場所や大きさ、炎症の既往などにより、よりよい手術法を選ぶ必要があります。
そしてその手術をこなすだけの熟練した技術が必要です。
粉瘤治療での実績が多いクリニック
実績のある医師が手術していると必然的にそのクリニックの粉瘤治療実績も上がってきます。
医師には得意・専門分野があるので、粉瘤の治療数にも偏りが出てきます。ホームページなどでクリニックの治療実績や得意・専門分野を確認してみてください。
傷跡が気になる場合は形成外科
顔や首など目につく場所の場合、傷跡を少しでもきれいにしたいのであれば形成外科の受診がおすすめです。
粉瘤の治療法は手術で袋を取り除くことで、くり抜き(へそ抜き)法と切開して切除する方法がありますがどちらも傷跡は残ります。
傷跡が目立ちにくいようにする技術を持っているのが形成外科の医師です。皮膚のしわを見て切開の向きを決定。
そして切除して欠損した皮膚を、どのように縫い合わせるとよいのかまでも考慮して切開するラインを決定しています。さらに傷は何針縫ったかではなく、いかにきれいに縫ったかが重要だと認識しています。
傷をきれいにする専門家の形成外科医師ならば手術も安心です。
粉瘤ができたら早めに皮膚科か形成外科を受診しよう
皮膚の内側に袋ができ、垢や皮脂がたまったものが粉瘤です。
顔や首にできると小さくても気になりますが、反対に背中やお尻は大きくなるまで気づきにくいです。
粉瘤は少しずつ大きくなり炎症を起こす場合もあります。早めに治療をした方がいい病気ですが、治療法は手術で取り除く以外にありません。
また、皮膚や皮膚の下にできる病気は粉瘤だけではなく悪性のものもありますので、鑑別のためには医師に診断をつけてもらう必要があります。
自己判断で放置するのはやめましょう。
粉瘤を疑うものに気づいた時は、できるだけ早い時期に皮膚科または形成外科での受診をおすすめします。
監修医師
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