基底細胞癌とは
基底細胞がんは、最も多くみられる皮膚がんで、皮膚の外層(表皮)にある特定の細胞から発生します。
- 通常は、皮膚に小さくつやのある隆起が現れ、徐々に大きくなっていきます。
- 隆起は破れてかさぶたになることがあり、ときには出血を伴ったり、平らになって瘢痕状になったりすることもあります。
- このがんは外観から確認できることが多いですが、通常は生検を行います。
- 通常は切除しますが、皮膚に化学療法薬を塗ることもあり、ときには放射線療法や薬物療法も行うこともあります。
基底細胞は表皮(皮膚の外層)の最下層にあります。基底細胞がんは必ずしも基底細胞から発生するわけではありませんが、顕微鏡で観察すると、がん細胞が基底細胞に似ているために、この名がついています。
基底細胞がんは、最もよくみられる皮膚がんの一種です。米国では、毎年400万人以上の人に、この種のがんが発生しています。皮膚の色が薄く、日光にさらされた経緯のある人に多くみられ、皮膚の色が濃い人での発生はごくまれです。基底細胞がんは通常、日光にさらされる表皮に発生し、部位としては頭部と首によくみられます。
この腫瘍は非常にゆっくりと大きくなっていきますが、増殖のペースがかなり遅いため、新たに現れた増殖性病変とは気づかれないこともあります。しかし、成長速度にはかなり幅があり、なかには1年で1センチメートル程度大きくなるものもあります。
このがんは、他の部位に転移することはまれですが、周囲の組織に広がって徐々に組織を破壊していきます。基底細胞がんが眼、耳、口、骨、脳などの近くにできている場合、そこから広がると深刻な事態を招くことがあり、死に至る場合もあります。しかし、ほとんどの場合、このがんは皮膚の中でゆっくりと成長していくだけです。
原因
表皮の基底細胞や毛包を構成する細胞から発病する皮膚癌です。皮膚癌の中でも最も発生が多い癌です。
症状
基底細胞がんは通常、小さくて硬い、つやのある盛り上がった増殖性病変として出現します(結節型の基底細胞がん)。数カ月から数年が経過すると、表面に拡張した血管(毛細血管拡張)が見えるようになることがあり、中心部が破れて、かさぶたを作ることもあります。がんと正常な皮膚の境界では、皮膚が厚くなり白いつやがみられる場合があります。がんの部分からときおり出血し、かさぶたができては治ることを繰り返す場合もあるため、患者本人はがんではなく潰瘍だと誤解してしまうこともあります。
その他のタイプの基底細胞がんは外観が大きく異なります。例えば、表在型の病変は平坦で厚みのない赤色またはピンク色の斑として現れ、斑状強皮症型の病変は厚みのある肌色または明るい赤色の斑として出現し、瘢痕(はんこん)のようにも見えます。
検査
生検
基底細胞がんは見ただけで分かることが多いのですが、診断の確定には生検を行うことが標準的方法です。この検査では、皮膚から少量の腫瘍組織を採取し、顕微鏡で調べます。
当院の治療
原則として手術により切除します。通常病変辺縁より3~5mm離して切除します。前述のように多くが顔面に発生するため、切除後の皮膚欠損に対し見た目を損なわない再建手術をすることもしばしばです。転移がまれであることから、初回の手術で病変が取り切れれば根治する確率は非常に高くなります。
高齢者や切除が困難な部位での発生例、合併症などで手術が難しい場合は放射線で治療することもありますが、手術にくらべ根治性は劣ります。
化学療法(抗癌剤による治療)は、手術不可能な進行例に適用されることがある以外は通常行われません。
日常生活の注意点
基底細胞がんは日光曝露が原因で引き起こされる場合が多いため、以下の対策を講じることが、このがんの予防に役立ちます。
- 日光を避ける:例えば、屋外では日陰に入る、午前10時から午後4時まで(日光が最も強くなる時間帯)の屋外活動を減らす、日光浴や日焼けマシーンの利用を控える
- 保護効果の高い衣類を着用する:例えば長袖のシャツ、ズボン、つばの広い帽子
- 日焼け止めを使用する:紫外線防御指数(SPF)30以上で紫外線A波とB波に対する防御効果のあるものを指示通りに使用し、2時間毎に、また泳いだ後と汗をかいた後にも塗り直す(ただし、日光を浴びる時間を増やすことを目的に日焼け止めを使用してはならない)
また、皮膚に何らかの異常が現れて数週間経っても消えない場合は、医師の診察を受ける必要があります。