水虫(足白癬)とはどんな病気か

水虫は、白癬菌(はくせんきん)という皮膚糸状菌が足の角質に感染して起きる皮膚疾患です。正式には「足白癬(あしはくせん)」と呼ばれ、かゆみや皮むけ、水ぶくれなど、さまざまな形で現れます。日本臨床皮膚科医会の調査(2007年)によると、足白癬の推定患者数は約2,500万人で、有病率は約21.6%にのぼります。
白癬菌は高温多湿の環境を好みます。感染の主な経路は、プール・公衆浴場・ジムなどの床で他者からの角質片を踏むことです。ただし、足に触れただけで必ず感染するわけではなく、洗い流さずに長時間放置された場合に皮膚へ定着します。
同じく日本医真菌学会の調査(2016年)では、皮膚の表面に生じる真菌症(表在性皮膚真菌症)のうち85.2%が白癬で占められており、そのうち足白癬が57.4%と最多です。非常に身近な感染症でありながら、正しい治療をせずに症状を繰り返している方も多くみられます。
- この記事でわかること
- 水虫が「完治しにくい」理由と治療期間の目安
- 病型(指間型・小水疱型・角化型)ごとの特徴と治し方
- 外用薬と内服薬の違い・使い分け
- 「症状が消えたら治った」が危険な理由
- 爪白癬の放置が再発の原因になるしくみ
水虫の3つの病型——自分のタイプを把握する

足白癬は症状の出方によって主に3つの型に分けられます。どの型かによって治療期間が大きく変わるため、自己判断で「軽い水虫だから」と決めつけず、皮膚科で確認することが大切です。
指間型(趾間型)
足の指の間、とくに4本目と5本目の趾間の皮膚が白くふやけ、じゅくじゅくしたり、皮がむけたりするタイプです。3つの型の中で最も多く、かゆみが強く現れやすい特徴があります。梅雨から夏にかけて悪化する傾向があり、靴の中の湿気が症状を助長します。
小水疱型(汗疱型)
土踏まずや足の側縁に小さな水ぶくれが集まって現れるタイプです。水疱が破れてかさぶたになり、強いかゆみを伴います。初夏に出始めて秋に落ち着く、という季節性のパターンを繰り返すこともあります。
角化型(角質増殖型)
足の裏全体が厚く乾燥し、かさかさとひび割れるタイプです。かゆみがほとんどなく、「乾燥肌」や「皮膚の老化」と見誤られることが多くあります。角質が分厚いため外用薬が浸透しにくく、3つの型のなかで治療期間が最も長くなります。爪白癬を合併しているケースも多くみられます。
水虫が「完治しない」と感じる本当の理由

水虫の治療でよくあるのが、「かゆみが消えたから薬をやめたら再発した」というパターンです。これは白癬菌の生物学的な特性が関係しています。
白癬菌は皮膚の最外層である角質層に寄生します。外用薬で菌の数が減ると、数週間でかゆみや水疱などの症状は治まります。しかし角質の深部に残った菌は死滅しておらず、薬をやめた後に再び増殖します。「治ったと思ったのに再発した」の多くは、この途中中断が原因です。
「完治した」かどうかを自覚症状だけで判断するのは難しく、皮膚から角質を採取してKOH直接鏡検(顕微鏡で菌の有無を確認する検査)によって陰性を確認することが確実な方法です。症状が消えた後も決められた期間は薬を続け、皮膚科で判定を受けることを勧めます。
水虫を完治させる治療法

日本皮膚科学会と日本医真菌学会が合同で策定した「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」では、足白癬への外用抗真菌薬による外用療法、および難治例への内服療法は、いずれも推奨度A(行うよう強く勧める)と位置付けられています。
外用抗真菌薬(塗り薬)
指間型・小水疱型の足白癬に対する基本的な治療です。1日1回、患部だけでなく周囲の一見正常な皮膚まで広めに塗ることが重要です。イミダゾール系、アリルアミン系、ベンジルアミン系などの薬剤系統があり、皮膚科で処方されるものと市販薬で成分が重なるものもあります。
症状が消えた後も、角質の内部に残っている菌を完全に除菌するために塗り続ける必要があります。ガイドラインが示す治療期間の目安は以下のとおりです。
- 指間型:2か月以上の外用継続
- 小水疱型:3か月以上の外用継続
- 角化型:6か月以上の外用継続(内服薬の併用も検討)
内服抗真菌薬(飲み薬)
角化型・爪白癬の合併・外用薬によるかぶれが生じた場合などに選択されます。テルビナフィンとイトラコナゾールが主に使われ、どちらを選択するかは合併症・使用中の薬との相互作用・肝機能を考慮して医師が判断します。内服薬の使用中は定期的な血液検査が必要になることがあります。
外用薬・内服薬の比較
| 項目 | 外用抗真菌薬(塗り薬) | 内服抗真菌薬(飲み薬) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 指間型・小水疱型 | 角化型・爪白癬・難治例 |
| 治療期間の目安 | 2〜6か月以上(型による) | 薬剤・投与法によって数か月単位 |
| 保険適用 | あり | あり |
| 主な注意点 | 塗り忘れ・塗布面積が不十分だと効果が出にくい | 肝機能への影響・他の薬との相互作用を要確認 |
| ガイドラインの推奨度(2025年版) | A(強く推奨) | A(難治例・爪白癬合併に強く推奨) |
※治療期間は個人の症状・検査結果によって異なります。必ず担当医の指示に従ってください。
見落としがちなポイント——2つの誤解

誤解1:「かゆくなければ水虫ではない」
角化型の足白癬はかゆみがほとんど現れません。長年「かかとのひび割れ」「乾燥肌」と思っていたものが、検査してみると角化型水虫だったというケースは珍しくありません。症状だけでは他の皮膚疾患(掌蹠膿疱症・異汗性湿疹など)との区別がつかないため、KOH鏡検による菌の確認が必要です。
誤解2:「市販薬で十分だから皮膚科に行かなくていい」
水虫に似た皮膚疾患に抗真菌薬を塗り続けると、改善しないだけでなく悪化することがあります。また、市販薬は医師の指示なしに内服薬を選べないため、爪白癬や角化型など外用薬だけでは治りにくいタイプへの対応が遅れます。「何か月使っても良くならない」場合は、まず正確な診断を受けることが遠回りのようで実は最短ルートです。
皮膚科を受診すべきタイミング

以下に当てはまる場合は、自己判断でのケアを続けず皮膚科を受診してください。
- 市販の抗真菌薬を1か月続けても改善しない
- 爪が白く濁る・厚くなる・もろくなるなどの変形がある
- 患部が赤く腫れて熱感がある(細菌感染の合併が疑われる)
- 糖尿病・免疫疾患・ステロイド長期内服など基礎疾患がある
- 足の裏全体がかさかさ・ひび割れている(角化型が疑われる)
- 症状が足だけでなく手・体・陰部にも広がっている
- 家族の複数人が同様の症状を持っている
爪白癬は外用薬だけでは治りにくく、治療せずに放置すると周囲への感染源になり続けます。爪の変化に気づいたら早めの受診を勧めます。
完治後も続けたい再発予防
水虫の治療が完了した後も、生活環境を整えなければ再感染が起こります。白癬菌は角質片(皮むけのかけら)として床やマットの上で長期間生き続けるため、家庭内での対策も欠かせません。
- 足を洗った後は指の間まで丁寧に乾燥させる
- バスマット・スリッパは家族と共有しない
- 靴を2足以上ローテーションして乾燥させる
- 公衆浴場・プール・ジムの後は足をよく洗い、拭いて乾かす
- 同居家族も水虫・爪白癬の有無を皮膚科で確認する
- 完治確認後も、年1回は皮膚科で状態をチェックする
なお、近年はインド・ネパール等で発生した抗真菌薬(テルビナフィン)耐性の白癬菌(Trichophyton indotineae)が日本でも確認されており、国立健康危機管理研究機構(JIHS)のIASR(2024年2月号)でも注意が呼びかけられています。「通常の治療を続けても改善しない」場合は、耐性菌を含む別の原因を考慮して皮膚科を受診することが必要です。
当院(麹町皮ふ科・形成外科クリニック)では一般皮膚科として、KOH直接鏡検による正確な診断と抗真菌薬の処方を行っています。「市販薬を使っても治らない」「爪が気になる」という場合は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. 水虫は何か月で完治しますか?
- 病型によって目安が異なります。日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同ガイドライン(2025年版)では、指間型で2か月以上、小水疱型で3か月以上、角化型で6か月以上の外用継続が推奨されています。症状が消えても菌が残っている可能性があるため、皮膚科でKOH鏡検による陰性確認を受けてから治療を終了することが勧められます。
- Q. 爪白癬があると足白癬は治りにくいですか?
- はい。爪は白癬菌の温床になるため、爪白癬を放置したまま足白癬を治療しても繰り返しやすくなります。爪白癬には内服薬や爪専用の外用薬が用いられます。足白癬と爪白癬を同時に診断・治療することが、再発を防ぐうえで重要です。
- Q. 家族の中で水虫をうつさないようにするには?
- 水虫は感染症で、バスマット・床・スリッパの共有が主な感染経路です。患者がいる家庭では、バスマットと足拭きタオルを個人用にする、使用後の床は定期的に清潔に保つ、といった対策が有効です。家族の誰かが未治療の爪白癬を持っている場合、他の家族への再感染が続くため、同居家族全員で皮膚科を受診して状態を確認することを勧めます。
まとめ
水虫の完治に最も必要なのは、「症状が消えた=治った」という認識を改めることです。白癬菌は角質の深部に潜伏するため、自覚症状がなくなっても外用薬の継続が必要で、病型ごとの期間(指間型2か月・小水疱型3か月・角化型6か月以上)を守ることが、再発しない治療への近道です。
市販薬を試しても改善しない場合、爪の変形が気になる場合、または角化型が疑われる場合は、皮膚科での正確な診断を受けてください。自己判断での中断や、爪白癬の見落としが再発の主な原因になります。気になる症状がある方は、ぜひ皮膚科へご相談ください。
麹町皮ふ科•形成外科クリニック/BIOTOPECLINIC両院でも診察を承っています。
気になる症状があれば皮膚科へご相談ください
セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。
所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
References
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会、2025年 出典
- 丸帆株式会社「白癬の疫学・病態」医療関係者向けサイト(日本臨床皮膚科医会2007年調査・日本医真菌学会2016年調査を引用)出典
- 丸帆株式会社「白癬の治療」医療関係者向けサイト(日本皮膚科学会 皮膚真菌症診療ガイドライン2019を引用)出典
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「国内の抗真菌薬耐性白癬菌について」IASR Vol.45、2024年 出典
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監修医師

苅部 淳
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