梅雨の時期の体調不良について

梅雨の時期は気圧の変化が大きく、日によって寒暖の差も大きくなることから頭痛やだるさなどの体調不良を訴える人も少なくありません。このような体調不良は不定愁訴や自律神経失調症とも呼ばれ原因が特定しづらいのも特徴ですが、近年適切な食事やサプリメントの摂取などの栄養療法で改善をめざす「オーソモレキュラー栄養療法」が注目されています。この項目では、オーソモレキュラー栄養療法について詳しく解説します。

気象病と体調不良

梅雨や台風の時期や、急に暑くなったり寒くなったりしたときに起こる体調不良のことを、「気象病」と呼ぶことがあります。急に天気が悪くなると頭痛がひどくなる人や、雨の日が続くと肩こりがひどくなるという人は気象病を起こしていると言えるでしょう。気象病は人によって起きる人と起こらない人がいますが、日本人の約2割にあたる人が天気の変化で何らかの不調を訴えているとみられます。

気象病はこれまで不定愁訴や自律神経失調症と言われ、原因となる病気が特定できず、痛み止めの薬などを飲んで休む対症療法に頼りがちでした。中には、慢性的に頭痛薬を服用することで、かえって頭痛がひどくなってしまう悪循環に見舞われる人もいたのです。近年、気圧の変化と体調不良に関係があることが徐々に分かってきて、多くの人にも知られるようになりました。まだ研究が進められている段階ではありますが、気圧が変化するときに体調不良を訴える人は、平衡感覚をつかさどり自律神経とも関係のある「内耳」という部分が人よりも敏感になっているとも考えられています。例えば、絶対音感や相対音感のある人、乗り物酔いを起こしやすい人は、気象病を訴える傾向があるとされています。また、気象病を訴えるのは男性よりも女性のほうが多いのも特徴です。

気象病は研究の段階なので、治療法が確立しているわけではありません。これまで、気圧の変化でたびたび片頭痛を起こす人に対しては、片頭痛予防薬が処方されることもありました。最近では、抗めまい薬が気象病で起こる体調不良に対し、一定の効果があるのではないかとも言われています。一方、食事などの栄養療法も気象病に効果があるのではないかと言われるようになりました。数々の医療機関の医師が注目している栄養療法が「オーソモレキュラー栄養療法」です。

オーソモレキュラー栄養療法とは

「オーソモレキュラー栄養療法(以下、オーソモレキュラー)」は投薬ではなく、栄養素を取り入れることで体の中にある細胞を活性化し、体調の改善をめざす栄養療法です。海外では1930年代からサプリメントなどでビタミンなどの栄養素を補うことで、病気が改善するのではないかという仮説のもと、研究が進められてきました。その後、1960年代のアメリカでは精神医学の中でその知見が応用されるようになりました。現代では精神医学だけでなく、ほとんどの医療分野でオーソモレキュラーに基づいた治療が行われています。日本でも多くの医師に注目され、多くの医療機関でオーソモレキュラーに基づいた健康指導が行われています。

オーソモレキュラーでは、食事習慣の見直しやサプリメントの摂取、生活習慣の見直しの3つを行っていきます。まず食事習慣の見直しでは、健康によいとされる栄養バランスにすぐれた野菜たっぷりの食事をすすめるのではなく、個人の体調や食事習慣に合わせて改善をはかります。食事習慣の見直しで特に重視されるのは、血糖値のコントロールとタンパク質を最適な量、摂取することです。血糖値をコントロールするために、糖質コントロールが行われます。精白された白飯やパン、砂糖を使った菓子は血糖値の乱高下につながり、それが不定愁訴につながります。オーソモレキュラーで行う糖質コントロールは、糖質をただ制限するのではなく、必要十分な量だけとるという考え方です。タンパク質については不足すると疲れやすさやだるさにつながるのですが、不定愁訴を訴える人は食事で十分な量のタンパク質がとれていないこともあります。そのため、タンパク質が足りているかどうかにも注目をするのです。

オーソモレキュラーの2つ目の柱はサプリメントの摂取です。オーソモレキュラーでは栄養素がもつ代謝トラブルを改善するため、高濃度のサプリメントをそれぞれの人の体調に合わせて処方します。処方前には血液検査が行われ、その人に最適なサプリメントの量を決めます。場合によっては点滴治療が行われることがあります。なお、健康診断では「異常なし」の場合であっても、オーソモレキュラーの観点では栄養素が足りていない場合もあります。

そして3つ目に行われるのが生活習慣の見直しです。栄養不足はストレスによって強く影響を受けます。患者に適度な運動や十分な睡眠を意識してもらうことで、より効果が感じられるようになるのです。

 

栄養療法の効果

オーソモレキュラーを受けた患者の中からは、イライラや頭痛が減ったなどの声もあがっています。栄養療法によって血糖値の乱高下を抑えたことや、栄養不足によって起きていた不調が改善されたのはもちろん、自然に生活習慣が整ったという人もいます。一方でオーソモレキュラーを実施している医療機関では、定期的に患者の血液検査を行い、栄養不足がきちんと改善できているかどうかも確かめています。患者の感想に耳を傾けるのはもちろん、栄養を摂取したことで血液の状態がどのように改善したのかも分かるようになっているのです。近年では、アトピー性皮膚炎、疥癬の方などの皮膚疾患の方やうつ病、気分障害などの心療内科領域でも注目を集めています。

薬を飲んでいてもなかなか「気象病」や不定愁訴ががよくならないという人は、一度当院へご相談ください。当院では、オーソモレキュラー栄養療法専門の医師やスタッフが適切なアドバイスをいたします。

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監修医師

今野 裕之Konno Hiroyuki

今野 裕之 日本精神神経学会精神科専門医
略 歴
順天堂大学大学院卒業。
老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。 日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニック開院。
各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。
認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事就任。2019年より現職。
著書に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」、その他監修など多数。
美咲クリニック顧問
瞳美容研究所ドクター
予防医療研究協会理事
専 門
博士(医学)
精神保健指定医
日本精神神経学会精神科専門医
日本精神神経学会認知症診療医
日本抗加齢医学会専門医
リコード法(米国発のアルツハイマー病の統合治療プログラム)認定医