虫刺され・蜂窩織炎にお悩みの方

虫刺され

暖かくなり外に出る機会が増えてくる春は、虫刺されで皮膚科を受診される方が増えてきます。
通常は数日で症状がおさまりますが、中には皮膚の中で細菌が繁殖し、赤く腫れたり痛みが強くなる『蜂窩織炎(ほうかしきえん)』という皮膚の病気になる事があります。
虫刺されの症状と蜂窩織炎では、症状の進行度合いや対処方法、そして治療方法が大きく異なります。蜂窩織炎は重症化すると感染が重症化する可能性があるため注意が必要です。今回は、虫刺されや蜂窩織炎の症状、どういった時に皮膚科を受診した方が良いか解説していきます。

刺された時の対処法

虫に刺された時に起こる症状は、虫の種類によっても多少異なりますが、多くは、刺された箇所が赤くなり、かゆみを引き起こすパターンが一般的です。例えば、生息場所が広い蚊の場合、赤く腫れた後に、かゆみが激しくなってきます。布団に多く生息するダニに刺されると、強いかゆみが起こると同時に、皮膚が赤くなり、さらに隆起した状態になる点が、大きな特徴です。虫に刺されたと感じた時点で対処できる方法としては、刺された箇所に雑菌が入らないよう、綺麗に洗って患部をきれいにします。

かゆみや強い場合は、水や氷を使って患部を冷やすことで、かゆみや炎症を抑える事ができます。それでも症状が治らない場合は、皮膚科を受診して、適切な治療を受けることがおすすめです。幼児の場合は、大人に比べて症状が悪化しやすいため、はやめに皮膚科を受診することが望ましいでしょう。皮膚科受診の目安としては、刺された部位がひどく腫れたり、患部以外にも症状が出る、発熱が全身に及ぶ、炎症が数日感続くケースです。

蜂窩織炎とは

皮膚科で診察してもらった結果、皮膚組織に細菌が侵入し、真皮深層から筋膜までの部分で炎症が起こっているとわかった場合は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)と診断されます。急性化膿性炎症の一種で、黄色ブドウ球菌及び化膿レンサ球菌といった、原因菌が関係する皮膚系の病気です。、蜂窩織炎になりやすい人は虫刺され、アトピー性皮膚炎で肌のバリア機能が低下している方、引っかき傷や火傷により、皮膚に傷がついていると、細菌が皮下組織まで到達する可能性が高くなり感染しやすくなります。また、虫以外の犬や猫といった、動物に噛まれた場合でも、蜂窩織炎になるケースがあります。

蜂窩織炎の治療方法は、黄色ブドウ球菌及び化膿レンサ球菌に有効な、抗菌薬の投与によって行われるパターンが一般的です。ジクロキサシリンやセファレキシンといった、ペニシリン系の抗菌薬が使用されますが、アレルギーがある人は、クリンダマイシン及びマクロライド系の抗菌薬を投与します。症状が軽い場合は投与治療がメインですが、症状が悪化しているケースでは、オキサシリン等の抗生剤を点滴する場合もあります。蜂窩織炎は重症化すると、入院を余儀なくする場合もありますので、虫刺されで症状が辛い場合は早めに皮膚科の受診をすることが大切です。

虫刺されの傷跡にお困りの方は

当院では、虫刺されや蜂窩織炎の治療の他に虫刺されの傷跡の治療も行っております。虫刺されの跡は放置する皮膚が黒くなり、シミへと変化する場合があります。これらの症状は『炎症性色素沈着』といいます。メラニン色素の生産量および排出量が関係してくる症状で、メラニン色素の生産量が多いと炎症が起こりやすくなります。お肌のターンオーバーにより、メラニンが繰り返し排出されるため、自然に症状は軽快していきますが、中には半年~1年以上かかることもあります。
炎症性色素沈着の治療方法としては、ハイドロキノンの塗布や、レーザー治療、ケミカルピーリングが該当します。炎症性色素沈着やシミの治療で広く用いられるハイドロキノンは、いちご類や麦芽に含まれる天然成分由来の薬品です。美容クリニックにて、シミや美白治療の手段として用いられていますが、虫さされの跡を消す方法としても活用されています。メラニン色素を作り出すメラノサイトという細胞に作用する形で、メラニン自体の生産を抑える役割を果たすからです。

その他には虫さされの跡やシミを消す方法としては、レーザー治療も選択肢の一つです。メラニン色素を直接する粉砕する種類のレーザーを照射する治療法では、1回から3回の施術によって、患部の黒ずみを消せるため、即効性が高い点が大きな特徴です。一方、レーザーによる刺激を軽減しながら虫さされの跡を消したい場合は、レーザー出力を抑えたトーニングという選択肢もあります。
古い角質をグリコール酸を含む薬品で溶かし、新しい皮膚の再生を促すための治療法が、ケミカルピーリングです。にきびの治療に用いられることが主ですが、ターンオーバーを促してくれるため、虫刺されの傷跡の治療にも用いられています。

まとめ

今回は虫刺されと蜂窩織炎についてお話させていただきました。虫刺されは皮膚科で適切な治療をうけることで、傷跡や症状の悪化を防ぐことができます。大切なことは、『虫に刺されないこと』ですが、万が一虫に刺されてお困りの場合はお気軽に当院にお問い合わせください。

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監修医師

坂本 淳Sakamoto Atsushi

坂本 淳 日本皮膚科学会皮膚科専門医
略 歴
2009年3月 順天堂大学医学部 卒業
2009年4月 順天堂大学病院 初期研修
2011年3月 同病院 研修終了
2011年4月 同病院皮膚科入局、同病院大学院入学
2015年3月 同病院大学院修了
2015年4月 順天堂静岡病院 助教
2017年5月 東京臨海病院 医局派遣
2020年1月 順天堂練馬病院 准教授
専 門
日本皮膚科学会皮膚科専門医
専門分野
尋常性ざ瘡・アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・花粉症・乾癬・湿疹/皮膚炎・円形脱毛症・尋常性白斑・白癬・イボなど一般的な皮膚科疾患の治療、しみの治療、男性型脱毛症(AGA)の治療など。

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