紫斑(しはん)とは? 皮膚にできる紫色の斑点と原因を正しく理解する

「ぶつけた覚えがないのに、いつの間にか腕や足に紫色のあざができていた」「子どもの足に赤紫色の点々が出て、何の病気か心配」――そんな経験はないでしょうか。皮膚に現れる紫色の斑点を「紫斑(しはん)」と呼びます。打撲によるありふれたあざの場合もありますが、中には血液疾患や血管の炎症など、体の内側にある病気のサインである場合もあります。
この記事では、紫斑の種類と原因、皮膚科・病院を受診すべきタイミング、受診先の選び方をわかりやすくまとめています。
- 紫斑とはどんな状態か、紅斑や普通のあざとの見分け方
- 原因として考えられる主な疾患と、それぞれの特徴
- 「自然に消えるから大丈夫」という誤解が危険な理由
- 早めに病院を受診すべき症状のチェックリスト
- 皮膚科・血液内科・内科のどこに行けばよいか
紫斑とは

紫斑とは、皮膚の内側で血液が漏れ出し、紫色・赤紫色の斑点として見える状態です。内出血が皮膚の浅い部分に起きるため、外からはあざのように見えます。大きさはさまざまで、米粒ほどの小さな点状のもの(点状出血)から、手のひらを超える広い範囲に及ぶものまであります。
紫斑を見分けるうえで役立つ簡単な方法が「圧迫テスト」です。皮膚を指や透明なガラスで押したとき、色が消えなければ紫斑(皮下出血)、色が薄くなれば紅斑(血管拡張・炎症)と区別できます。紅斑はアレルギーや虫刺されなどによる炎症性の赤みで、紫斑とは成り立ちが異なります。
紫斑の原因として考えられること

紫斑は、大きく「血管そのものの問題」「血小板・凝固因子の問題」「外からの力(打撲)」の3つに分けられます。それぞれで関係する疾患や対処法が変わるため、原因を把握することが重要です。
血管が弱くなることで起きる紫斑
加齢やステロイド薬の長期使用により、毛細血管の壁がもろくなると、ちょっとした刺激だけで内出血が起きやすくなります。代表的なのが老人性紫斑とステロイド性紫斑です。日本血栓止血学会の用語集によれば、老人性紫斑は加齢と日光暴露による結合組織損傷が主因で、65歳以上では約5%、90歳以上の男性では30%に見られるとされています。
また、単純性紫斑はぶつけた覚えがないのに膝下などに点状出血が繰り返し現れる状態で、原因は明確にわかっていません。若い女性に多く、血小板・凝固機能は正常で、基本的に治療不要です。
血管に炎症が起きることで起きる紫斑
IgA血管炎(旧称:アレルギー性紫斑病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)は、小さな血管に炎症が生じ、足を中心に触れると盛り上がった紫斑が現れる疾患です。慶應義塾大学病院のデータでは、約2/3の患者で発症前に上気道感染(かぜ)が先行することが報告されています。皮膚症状だけでなく、腹痛・関節痛・血尿・むくみを伴うことも多く、注意が必要です。
発症年齢は4〜6歳がピークで、成人患者は全体の約25〜30%とされています。
血小板が減ることで起きる紫斑
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、自身の免疫が誤って血小板を攻撃し、血小板数が減少することで出血しやすくなる自己免疫疾患です。慶應義塾大学病院のKOMPASによれば、国内に約2万人の患者がいるとされており、厚生労働省の指定難病として医療費補助の対象になっています。
血小板数が2万/μL以下に低下すると、ぶつけていないのに手足にあざができやすくなります。重症例では鼻血や歯茎からの出血、まれに頭蓋内出血が起きることもあるため、見過ごさないことが重要です。
その他の全身疾患が背景にある場合
白血病・再生不良性貧血・骨髄異形成症候群といった血液疾患でも、血小板が減少して紫斑が現れることがあります。また、膠原病(全身性エリテマトーデス・関節リウマチなど)、腎臓病、肝臓病、ウイルス感染、特定の薬剤(抗凝固薬・抗血小板薬など)も紫斑の原因になります。
紫斑の主な種類と特徴の比較

| 種類 | 主な原因 | 出やすい部位 | 伴う症状 | 受診の優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 老人性紫斑 | 加齢・日光暴露による血管の脆弱化 | 手の甲・前腕 | なし(かゆみなし) | 低(経過観察) |
| ステロイド性紫斑 | ステロイド薬の長期使用 | 四肢全般 | なし(2週間程度で自然消退) | 低〜中(担当医に相談) |
| 単純性紫斑 | 原因不明 | 膝下・腕 | なし(自然消退) | 低(経過観察) |
| IgA血管炎 | 血管への免疫複合体沈着 | 足・臀部 | 腹痛・関節痛・血尿 | 高(早期受診) |
| ITP(特発性血小板減少性紫斑病) | 自己免疫による血小板減少 | 全身 | 鼻血・歯茎出血 | 高(早期受診) |
| 白血病・再生不良性貧血等 | 造血機能障害 | 全身 | 倦怠感・発熱・貧血 | 最高(早急に受診) |
見落としがちなポイント:「自然に消えたから安心」は禁物

紫斑の多くは2〜4週間ほどで色が薄くなり、自然に消えていきます。そのため「また消えた、気にしなくていい」と繰り返してしまう方も少なくありません。しかし、同じ場所や全身に繰り返し出る・範囲が広がる・増えているといった場合は、背景に血液疾患や自己免疫疾患が潜んでいる可能性があります。
もう一つ多い誤解は、「ぶつけていないのに紫斑ができるはずがない」という思い込みです。老人性紫斑や単純性紫斑は、衣服が触れる程度のごく軽い刺激でも出血します。「ぶつけた覚えがない」という状況は、必ずしも稀なことではありません。ただ、理由なく繰り返す場合は自己判断せずに受診することをお勧めします。
皮膚科・病院を受診すべきタイミング

以下のチェックリストに一つでも当てはまる場合は、早めに受診してください。特に複数当てはまる場合や急に悪化した場合は、当日〜翌日を目安に受診することが望ましいです。
- ぶつけた覚えがないのに紫斑が繰り返し出る
- 紫斑が全身に広がっている、または急に増えた
- 腹痛・関節痛・発熱を伴っている
- 尿が赤い・泡立つ、または便が黒い・血が混じる
- 鼻血・歯茎からの出血が止まりにくい
- 口の中の粘膜に点状出血(血豆のようなもの)がある
- 子ども(特に就学前)の足に触れると盛り上がった紫斑が出ている
- 強い頭痛・意識がぼんやりするといった症状を伴う
口や白目の出血、意識障害を伴うほど急激に悪化している場合は、救急受診を検討してください。
何科を受診すればよいか
紫斑は症状の見た目だけでは原因が特定しにくいため、どの科に行けばよいか迷う方も多くいます。以下を参考にしてください。
皮膚科
紫斑の見た目の鑑別(どの種類か見分けること)は皮膚科が得意とする分野です。老人性紫斑・ステロイド性紫斑・単純性紫斑の確認、IgA血管炎の皮膚症状の診察は皮膚科で対応できます。「まず紫斑の原因を調べてほしい」という場合は皮膚科から受診するのが一つの選択肢です。
血液内科
血小板の減少が疑われる場合(ITP・白血病・再生不良性貧血など)は、血液内科が専門です。紫斑とともに鼻血・歯茎出血・倦怠感・発熱などが重なる場合は、血液内科への受診が適しています。
内科・リウマチ・膠原病内科
発熱・関節痛・腹痛など全身症状を伴う場合や、膠原病・血管炎が疑われる場合は内科やリウマチ膠原病内科での精査が行われます。IgA血管炎の腎炎症状(血尿・むくみ)が目立つ場合も同様です。
小児科
お子さんの紫斑は小児科への相談が基本です。IgA血管炎は子どもに多く、腹痛・関節痛を伴うことがあるため、皮膚症状だけでなく全身状態を一緒に診てもらえる小児科が適しています。
皮膚科での主な検査と治療
診断のための検査
受診すると、まず問診(ぶつけた経緯・薬歴・症状の経過)と視診で紫斑の性状を確認します。その後、必要に応じて以下の検査が行われます。
- 血液検査:血小板数・凝固機能・炎症反応・自己抗体など
- 尿検査:血尿・蛋白尿の有無(IgA血管炎や腎炎の確認)
- 皮膚生検:組織を少量採取し顕微鏡で調べる(IgA血管炎はIgA沈着で診断)
- 骨髄検査:ITPや血液疾患が疑われる場合(血液内科で実施)
種類ごとの主な治療方針
老人性紫斑・単純性紫斑は、血小板・凝固機能が正常であれば基本的に経過観察です。外傷予防(転倒対策・保湿ケア)が中心になります。
IgA血管炎は、多くの症例で自然に軽快するため、安静と対症療法が基本です。腎炎や重症の皮膚症状・消化器症状がある場合はステロイドや免疫抑制剤が使われることがあります。経過中に腎症が進行することがあるため、定期的な尿検査・血液検査での経過観察が続きます。
ITP(特発性血小板減少性紫斑病)は、小児の急性型では約9割が自然に軽快します。成人の慢性型ではヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)除菌療法から始めることが多く、約半数の症例で有効とされています(慶應義塾大学病院 KOMPAS)。除菌後も改善がない場合は副腎皮質ステロイドを使用し、さらに脾臓摘出や新薬(リツキシマブなど)が検討されます。
当院の皮膚科では、紫斑の鑑別や血液検査・尿検査による初期精査に対応しています。「どこに行けばいいかわからない」という方もまずお気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. ぶつけた覚えがないのにあざができやすいのですが、何か病気でしょうか?
- 加齢による老人性紫斑や単純性紫斑など、外傷なしに紫斑が生じる状態は珍しくありません。ただし、全身に広がる・繰り返す・他の出血症状(鼻血など)を伴う場合は、血小板減少や血液疾患が背景にある可能性があります。自己判断せず、一度皮膚科や内科で血液検査を受けることをお勧めします。
- Q. 子どもの足に赤紫色の点々が出ました。様子を見ていいですか?
- 子どもの場合、足を中心に触れると盛り上がった紫斑(触知性紫斑)が現れる場合はIgA血管炎(アレルギー性紫斑病)の可能性があります。多くは自然軽快しますが、腹痛・関節痛・尿の異常を伴う場合は早めに小児科または皮膚科を受診してください。放置すると腎臓への影響が出ることがあります。
- Q. 紫斑は皮膚科と血液内科のどちらに行けばよいですか?
- 見た目の鑑別や原因の絞り込みには皮膚科が適しています。血小板の減少や貧血・発熱・倦怠感など全身症状を伴う場合は血液内科への受診も検討してください。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらで相談して紹介を受けるのも一つの方法です。
まとめ
紫斑は「皮膚の内出血」が原因で生じる紫色の斑点で、外から圧迫しても色が消えないことが特徴です。打撲によるあざから、老人性紫斑・単純性紫斑・IgA血管炎・ITP・血液疾患まで、原因は多岐にわたります。
自然に消えるケースが多い一方で、繰り返す・広がる・発熱・腹痛・血尿などの全身症状を伴う場合は、早めの受診が必要です。特に、出血が止まりにくい・全身に急に広がったといった場合は当日中の受診を検討してください。
「念のため調べてほしい」という場合は、まず皮膚科を受診することで、見た目の鑑別と基本的な血液検査・尿検査を受けることができます。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
気になる症状があれば皮膚科へご相談ください
セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。
所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
References
- 日本血栓止血学会 用語集「単純性紫斑・老人性紫斑」一般社団法人 日本血栓止血学会 出典
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「IgA血管炎(IgAV)、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病」慶應義塾大学病院 出典
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」慶應義塾大学病院 出典
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監修医師

苅部 淳
Karibe Jun
理事長
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