【皮脂欠乏症】乾燥・かゆみの原因と皮膚科での治療法を解説

【皮脂欠乏症】乾燥・かゆみの原因と皮膚科での治療法を解説

皮脂欠乏症(乾燥肌)とは?原因・症状・皮膚科での治療法を解説

「冬になると肌がカサカサしてたまらなくかゆい」「保湿クリームを塗っても追いつかない」「特に足のすねや腕がひどく、夜中にかいてしまう」——そんな悩みを抱えていませんか?これらの症状は、皮脂欠乏症(ひしけつぼうしょう)の典型的なサインかもしれません。

皮脂欠乏症は決して珍しい病気ではなく、中高年を中心に多くの方が悩む皮膚のトラブルです。しかし「年だから仕方ない」「市販薬を塗っておけば大丈夫」と放置してしまうケースも多く、悪化すると皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)に進んで治療が長引くこともあります。

この記事では、皮脂欠乏症の症状・原因から、自宅でできるセルフケア、皮膚科での治療法まで、わかりやすく解説します。

  • 皮脂欠乏症の症状・特徴と、似た疾患との違い
  • 乾燥が起きる主な原因(加齢・生活習慣・環境など)
  • 自宅でできる保湿ケアと悪化を防ぐポイント
  • 皮膚科を受診すべきタイミングの目安
  • 皮膚科で行われる主な治療法と保湿剤の種類

皮脂欠乏症とは?症状の特徴

皮脂欠乏症とは、皮膚の表面にある皮脂(ひし)や天然保湿因子(NMF)が不足し、皮膚のバリア機能が低下した状態を指します。医学的には「乾皮症(かんぴしょう)」とも呼ばれ、皮膚科では日常的によく診る疾患のひとつです。

症状が進むと、皮脂欠乏性湿疹(別名:乾燥性湿疹・アステアトーシス)に移行し、強いかゆみや炎症を伴うようになります。乾燥だけで終わらないのが、この病気の注意すべき点です。

主な症状

  • 皮膚のカサつき・ざらつき:触るとキメが荒く、粉を吹いたように見える
  • かゆみ:特に入浴後や就寝中に強くなりやすい
  • 皮膚の亀裂(ひびわれ):ひどくなると細かい線が入る
  • 湿疹・赤み:かくことで炎症が広がり、湿疹に発展する

症状が出やすい部位

すね・ふくらはぎ・二の腕・背中・腰まわりに多く見られます。これらの部位は皮脂腺(ひしせん)の数が少なく、もともと乾燥しやすいため、加齢や環境変化の影響を受けやすいのです。

よく似た疾患との違い

アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎(かぶれ)も乾燥・かゆみの症状をもたらします。皮脂欠乏症との違いは、アレルギー反応の有無や皮疹(ひしん)のパターンにあります。自己判断が難しい場合は、皮膚科での鑑別(見きわめ)が重要です。

皮脂欠乏症の原因として考えられること

皮脂欠乏症の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って発症します。

加齢

皮脂腺の機能は20代をピークに低下し始め、特に50代以降は皮脂分泌量が大幅に減少するとされています。また、皮膚の角質層(かくしつそう)に含まれるセラミドや天然保湿因子(NMF)も年齢とともに減少します。高齢になるほど乾燥が進みやすい背景には、こうした生理的な変化があります。

季節・環境(空気の乾燥)

秋〜冬にかけて湿度が下がると、皮膚の水分が奪われやすくなります。暖房の使用も室内の乾燥を促進します。臨床現場で実感したのは、10月下旬ごろから「急に全身がかゆくなった」というご相談が増えることで、季節変化に敏感に反応する患者さんの多さです。

過度の洗浄・熱いお湯

ナイロンタオルでの強いこすり洗いや、42℃以上の熱いお湯での入浴は、皮膚の表面に存在する皮脂膜を必要以上に取り除いてしまいます。「きれいに洗えば肌によい」という思い込みから、かえって乾燥を悪化させているケースが少なくありません。

薬の副作用・全身疾患

利尿剤・降圧剤・抗アレルギー薬・腎臓病・甲状腺機能低下症・糖尿病なども乾燥肌を引き起こすことがあります。思い当たる持病や服薬がある場合は、診察時に医師へ伝えましょう。

栄養・生活習慣

皮膚のバリア機能を支える必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6)、ビタミンA・C・E・B群、亜鉛などの不足も乾燥に関与します。極端な偏食やダイエットは皮膚の状態にも影響するため、バランスのよい食事が大切です。

見落としがちなポイント・よくある誤解

誤解①「保湿剤はかゆい時だけ塗ればよい」

症状がある時だけ塗るのでは、皮膚のバリア機能を継続的に守ることができません。乾燥による皮膚のバリア低下は、かゆみを感じる前から始まっています。症状がない時期も毎日の保湿を継続することが、悪化を防ぐうえで最も重要です。

誤解②「湿疹になったら保湿は控えたほうがよい」

「ジュクジュクしているから保湿剤は塗らないほうがよい」とお考えの方もいらっしゃいますが、皮脂欠乏性湿疹においては保湿は治療の基本です。ただし、正しい薬剤の選択と塗り方が必要なため、湿疹に発展した場合は自己判断せず皮膚科を受診することをおすすめします。

苅部医師のコメント

外来で多く診るのは「市販のかゆみ止めを塗っても一向によくならない」とご来院される患者さんです。よく伺うと、抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)だけを使って保湿を行っていないケースが非常に多いです。皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹の治療は、かゆみを抑えるだけでなく「乾燥したバリアを修復すること」が根本です。かゆみ止めと保湿剤の両方をしっかり使うことが回復への近道ですので、ご自身のケアに迷いがある方はお気軽にご相談ください。

自宅でできるセルフケア

皮膚科受診と並行して、日常生活でのセルフケアも症状の改善・再発防止に大きく役立ちます。

入浴・洗浄の見直し

  • 湯温は38〜40℃程度のぬるめに設定する
  • 入浴時間は10〜15分程度にとどめる
  • タオルや手で優しく洗い、ナイロンタオルでのこすり洗いは避ける
  • 石鹸・ボディソープは低刺激・弱酸性のものを選ぶ

保湿ケアのポイント

  • 入浴後5〜10分以内(皮膚がやや湿った状態)に保湿剤を塗る
  • 朝・晩の1日2回以上を目安に継続する
  • セラミド配合や尿素(10〜20%)含有の保湿剤を選ぶと、角質の水分保持に役立ちやすい
  • 市販の保湿剤を試す際は、薬局・ドラッグストアの薬剤師に相談しながら自分の肌状態に合ったものを選ぶとよいでしょう

室内環境の整備

暖房使用時は加湿器を活用し、室内湿度を50〜60%に保つことを意識しましょう。乾燥する季節は、特に就寝時の湿度管理が皮膚の水分蒸散を防ぐうえで効果的です。

食事・栄養面のサポート

皮膚のバリア機能を内側から支えるために、以下の栄養素を意識的に摂ることが大切です。

  • オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油・えごま油):皮膚の脂質バランスを整える
  • ビタミンA(緑黄色野菜・レバー):皮膚の角化を正常に保つ
  • ビタミンC・E(柑橘類・ナッツ類):酸化ストレスから皮膚を守る
  • 亜鉛(牡蠣・大豆製品):皮膚細胞の新陳代謝をサポート
  • 腸内環境の整備:発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌など)を取り入れ、腸内フローラのバランスを整えることも皮膚の状態に影響するとする研究が増えています

また、睡眠不足はバリア機能の低下に直結することが知られています。7時間前後の質の良い睡眠を意識しましょう。

皮膚科を受診すべきタイミング

以下に当てはまるような症状がある場合は、セルフケアだけでの対処が難しい状態になっている可能性があります。早めに皮膚科の受診を検討しましょう。

  • 市販の保湿剤やかゆみ止めを2〜3週間使用しても改善しない
  • かゆみが夜間強くなり、睡眠が妨げられている
  • 皮膚に赤みや湿疹・ただれが出ている
  • かいた部分が傷になり、細菌感染を繰り返している
  • 全身の広範囲に症状が広がっている
  • 子ども・高齢者で症状が強い場合

外来で実感するのは、患者さん自身が「これくらいなら大丈夫」と思っていても、診察すると皮脂欠乏性湿疹がかなり進んだ状態になっていたというケースが少なくないということです。かゆみや乾燥が続くようであれば、早めにご相談いただくことをおすすめします。

皮膚科での主な治療法

皮膚科では、症状の程度に合わせて以下のような治療が行われます。

保湿外用薬(処方保湿剤)

市販品よりも濃度・成分が最適化された処方保湿剤が使われます。代表的なものに尿素製剤(ウレパールなど)、ヘパリン類似物質含有クリーム(ヒルドイドなど)があります。これらは保険診療で処方可能です。

ステロイド外用薬

湿疹・炎症が生じている場合は、炎症を抑えるためにステロイドの外用薬を使用します。ステロイドへの不安を持つ方も多いですが、症状・部位に適したランク(強さ)を選んで適切に使用することが大切です。

抗ヒスタミン薬(内服)

かゆみが強い場合は、抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服薬を組み合わせることで、夜間のかゆみや睡眠障害を軽減できます。

免疫抑制外用薬

ステロイドが使いにくい顔面などの部位では、タクロリムス(プロトピック)などの免疫抑制外用薬が選択されることもあります。

市販薬 vs 処方薬の比較

項目 市販薬(OTC) 処方薬(皮膚科)
費用 全額自己負担(1,000〜3,000円程度) 保険適用(3割負担など)
成分濃度 一般向けに調整された濃度 症状に応じた最適な濃度
個別対応 標準的な処方 症状・部位・年齢に合わせた処方
効果の目安 軽度〜中等度の乾燥に対応 中等度〜重度の症状・湿疹まで対応
経過観察 なし 定期的な診察でケアを継続

栄養療法(オーソモレキュラー栄養療法)

当院では、皮膚のバリア機能を内側から整えるアプローチとして、オーソモレキュラー栄養療法(分子栄養療法)のご相談にも対応しています。血液検査をもとに栄養素の過不足を評価し、食事指導や栄養補充を組み合わせることで、乾燥肌の体質改善を目指すものです。気になる方はお気軽にご相談ください。

なお、欧米の複数の疫学研究では、乾皮症(皮脂欠乏症)は65歳以上の高齢者の約75%に認められると報告されており、加齢に伴う皮膚の変化として非常に一般的な状態です。しかし、適切なケアと治療によって症状を大幅に軽減できることも示されています。

よくある質問

Q. 皮脂欠乏症と乾燥性湿疹(皮脂欠乏性湿疹)はどう違いますか?
皮脂欠乏症は皮脂・水分の不足による乾燥した状態そのものを指します。これが悪化して炎症・かゆみ・湿疹が加わった状態が「皮脂欠乏性湿疹」です。乾燥だけの段階でしっかりケアすることが、湿疹への移行を防ぐうえで重要です。
Q. ヒルドイドやヘパリン含有クリームは保険で処方してもらえますか?
皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹などの診断がある場合、ヘパリン類似物質含有外用薬は保険診療で処方されることがあります。ただし、美容目的(シワ・たるみの予防など)の使用には保険は適用されません。詳細は受診時に医師にご確認ください。
Q. 子どもや赤ちゃんにも皮脂欠乏症は起きますか?
はい、乳幼児は皮膚が薄く皮脂分泌も未熟なため、乾燥しやすい状態にあります。特に冬場は注意が必要です。かゆみで泣いたり眠れないような場合は、小児科または皮膚科へご相談いただくことをおすすめします。アトピー性皮膚炎との�別が必要なこともあります。

まとめ

皮脂欠乏症は「ただの乾燥」と軽く見られがちですが、放置すると皮脂欠乏性湿疹に発展し、強いかゆみや睡眠の妨げになることもあります。加齢・環境・生活習慣など複数の要因が重なって起こるため、保湿ケアの継続・入浴習慣の見直し・食事や睡眠なども含めた生活習慣のトータルな改善が回復の鍵となります。

市販薬で改善しない・かゆみが夜間にひどい・皮膚に炎症が出ているなどの場合は、ぜひ皮膚科への受診を検討してください。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でも、皮脂欠乏症・乾燥肌に関するご相談を承っております。症状が続いてお困りの方は、お気軽にご来院ください。

参考情報・出典

監修医師

苅部 淳 形成外科専門医・麹町皮ふ科・形成外科クリニック 理事長

苅部 淳

Karibe Jun

理事長

略 歴

順天堂大学医学部卒業
東京大学附属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
山梨大学附属病院形成外科 助教・医局長
各病院での臨床経験を経て形成外科専門医取得
2019年 麹町皮ふ科・形成外科クリニック 開院(千代田区市ヶ谷)
2021年 BIOTOPE CLINIC 白金 開院(港区白金)

資 格

日本形成外科学会 形成外科専門医
日本抗加齢学会 専門医
日本医師会認定産業医
アラガン社 ボツリヌス注射・ヒアルロン酸 VST認定医

受 賞

東京大学形成外科 最優秀賞(2016年)
日本形成外科学会 優秀賞(2018年)
ASPS(アメリカ形成外科学会)優秀演題発表(2018年)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。気になる症状・お悩みがある場合は専門医にご相談ください。
参考:日本美容外科学会(JSAPS)日本皮膚科学会

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