アトピー性皮膚炎とは?

慢性的なかゆみを伴うアトピーに悩む方はたくさんいらっしゃいます。特に症状がひどい場合には、何で自分だけがこんなつらい目に遭うのだろうと気持ちも落ち込んでしまうと思います。アトピーについて理解し、 適切な対策と治療をすることで症状を落ち着かせ、アトピーになる前の笑顔を取り戻しましょう。

 

アトピー性皮膚炎とはどんな病気?

アトピー性皮膚炎とは、皮膚にかゆみを伴う湿疹が認められ、その症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚疾患の事を指します。
皮膚のバリア機能(外界からのさまざまな刺激や皮膚の乾燥などから体の内部を保護する皮膚の保護機能)が低下して炎症が起きやすくなっている状態で、肌の水分量が減ることから乾燥肌の患者さんが多いこともアトピー性皮膚炎の特徴になります。
アトピー性皮膚炎はかゆみを伴うことが多く、掻くことによりさらに皮膚のバリア機能が低下し皮膚炎が悪化する、という悪循環に陥ってしまいがちです。

アトピー性皮膚炎の診断基準

増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ

アトピー素因:以下の①または②を満たす
①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)
②IgE抗体を産生し易い素因
参照:「アトピー性皮膚炎ガイドライン」 日本皮膚科学会
※正確な診断基準は、さらに詳細に年齢別に皮膚症状の特徴と分布する範囲や、症状の持続する期間をもとに定められていますので、こちらもご確認ください。

アトピー性皮膚炎発症の病因とは?

アトピー性皮膚炎の原因について、発症に関するはっきりしたメカニズムは未だ解明されていませんが、次の3つの要因が相互に関連し合って発症すると考えられています。

皮膚の生理機能異常

アトピー性皮膚炎特有の皮膚異常の特徴として、皮膚のバリア機能の低下や、発汗異常、皮膚血管反応などの異常がみられます。
皮膚のバリア機能が低下することで外界からのアレルゲンの侵入が容易になり、皮膚のアレルギー反応を引き起こすケースも見られます。先天的に皮膚のバリア機能が不足していることもありますが、その多くは生活環境の原因による水分不足やセラミド不足によるものとなります。
また、アトピー性皮膚炎発症の原因の一つに胃腸機能の低下が挙げられます。食事が満足に取れない状況が続くと栄養不足に陥り、皮膚の代謝も不足することになるからです。

免疫学的要因

アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患のひとつです。花粉症やぜんそくなどもアレルギー疾患のひとつですが、疫機能異常の多くは先天性の体質虚弱があることに由来します。
また、アトピー性皮膚炎の発症の原因の一つと考えられている要因に、「アトピー素因」というものがあります。
アトピー素因とは・・・

  1. 家族にアレルギー患者がいる(遺伝、遺伝子)
  2. 自身がアトピー性皮膚炎以外の気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎などにかかったことがある
  3. IgE抗体を産生しやすい体質

のことを指します。
上記に当てはまる方はアトピー性皮膚炎を発症しやすいことが分かっています。
また、食物アレルギーを持つ場合にアトピー性皮膚炎を発症するのではなく、湿疹があり皮膚のバリア機能が低下している皮膚から食物が入り込むことによって、食物アレルギーを発症するという仕組みが、最近の研究で分かってきています。

外的要因

外的要因として挙げられるものはさまざまありますが、発症原因は人によって異なるため、同じ生活環境にいても発症する人や発症しない人がいます。
主に以下のような要因が挙げられます。

  • 季節の変化
  • 花粉、植物
  • ペット、昆虫
  • 心理的緊張、ストレス
  • 体調不良
  • 引っ掻く
  • 高すぎる室温
  • 高すぎる湿度
  • 乾燥
  • ほこり、汚れ、ハウスダスト、カビ、ダニ
  • 衣類の刺激
  • 熱すぎるお風呂
  • 温泉(特に硫黄)
  • せっけん、洗剤、シャンプー、リンス
  • 強い日光
  • 体に合っていない塗薬
  • 食べ物(卵、牛乳、大豆、小麦など)
  • 体のアカ・フケ
  • 金属

これらの悪化要因に対する対策を行うことがアトピー性皮膚炎の治療を行う上では大切になってきますが、発症の可能性のある要因は総合的に判断されるため、一つの対策だけでは的確な効果を得ることはできないでしょう。
自身の生活を振り返り、自分で対策できるものは全てにおいて対策するようにしましょう。

アトピー性皮膚炎の症状について

アトピー性皮膚炎は皮膚が赤くなってブツブツができたり、乾燥してカサカサになった皮膚の皮がむけたり、かさぶたができたりすることが主な症状になります。
また、顔に湿疹ができることで、そのかゆみから目の周りをたたいたり、こすったりすることで、白内障や網膜剥離などの合併症を起こすケースもあります。
口の周りに水疱ができる口唇ヘルペスやとびひ(伝染性膿痂疹)などの皮膚の感染症も見られます。

重症度について

軽度:面積にかかわらず皮膚に軽度の赤みや乾燥だけが認められる状態
中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積のおよそ10%未満に認められる状態
重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積のおよそ10%以上30%未満に認められる状態
最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上に及ぶ状態です。皮疹は面積より個々の皮疹の重症度が重要視

アトピー性皮膚炎の治療について

  
まず、アトピー性皮膚炎の患者さんはもともと皮膚が弱い傾向にあるため、完全に病気を治すことは難しいことが多いです。
ただし、医師の指示の下で適切な治療を行い、日常生活でもご自身で生活環境を整えることで症状は良くなり、最小限の薬で症状が落ち着いた状態を維持することができるようになります。

皮膚の炎症を抑える治療

1. 外用療法

ステロイド外用剤
外用剤にもさまざま種類がありますが、症状が比較的強い部位にはステロイド外用剤が最も効果的です。ステロイド外用剤はその強さによって5段階に分類されており、重症度や症状の出てる部位によって、使用するランクが変わります。
ステロイドと聞くと、糖尿病や成長障害などの副作用を心配される方も多くいますが、適切な量と頻度を守っていれば副作用についてはほとんど心配する必要はありません。
また、色素沈着(肌が黒ずんだ色になること)を心配されるかたもいますが、これはステロイドによる副作用によるものではなく、皮膚の炎症が長く続いたことによる皮膚の損傷によるものです。
そのため、皮膚の炎症を早く抑えるためにも、ステロイド薬を使用することは重要なことなのです。

非ステロイド性アトピー性皮膚炎治療剤
比較的症状が軽い部位に対しては、タクロリムス軟膏(プロトビック軟膏)などに代表される非ステロイド性アトピー性皮膚炎治療剤が効果的です。
特徴としては、ステロイドと異なり長期間便用しても副作用が出にくいことが挙げられ
、顔面を含む全身に対して使用することが出来ます。
また、新しい冶療薬として「JAK阻害外用薬であるデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)」や、「PDE4阻害外用薬であるジファミラスト軟膏(モイゼルト軟膏)」もありますので、ご自身に合った適切な治療薬を選択することが重要です。

プロアクティブ療法について
また、最近では①ステロイド外用と②非ステロイド外用を併用する治療法も推奨されています。プロアクティブ療法を行うことで、副作用を最小限に抑えつつその再発を防ぎ、患者にとってより良い皮膚状態を保つことを目指す治療になります。
これに対して、症状が改善したらステロイド外用を完全に断ち切り保湿剤のみに変更して、再発したらステロイド外用を再開する方法をリアクティブ療法と言います。
どの治療方法がベストかは個人によって異なりますので、詳しくは医師にご相談下さい。

2. 内服療法

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
症状の強い部分の治療に効果的なのはステロイド外用剤ですが、症状が比較的軽度でかゆみを抑えることを目的とするのであれば、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が効果的です。
かゆみが強いと引っ掻くことでまた症状を悪化させてしまうケースも多々あります。
かゆみを減らすことはアトピー性皮膚炎における重要な治療の一つになります。かゆみがひどくてイライラしたり、そのせいで十分な睡眠がとれない時は、かゆみを抑える目的で使用することを検討します。

ステロイド内服薬
皮膚病変の急性増悪時などに有効とされていますが、副作用が強く出る可能性があるため、仮に使用するにしてもできる限り短期間の投与にとどめるべきでしょう。
※なお、ガイドラインでは推奨されていません。

シクロスポリン内服
強力な免疫抑制剤で、ステロイド外用を継続しても症状が改善しないような重症患者に対して使用します。症状の改善効果はとても高いですが、血圧上昇や腎機能障害などの強度の副作用があり、1回の治療期間として最大12週間までの投与までしか認められていません。

3. 注射療法

デュピルマブ(デュピクセント®)
2018年に新たに承認された抗体注射薬です。他治療を継続しても症状が改善しない成人の最重症患者のみがその対象となります。
これまでの他の治療で十分な効果が得られなかった中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、高い改善効果と安全性を示しており、これまでにない優れたアトピー性皮膚炎治療薬であると考えられます。

ネモリズマブ(ミチーガ®)
2022年に承認された抗体注射薬です。
他治療によるかゆみ抑制のコントロールができない13歳以上の重症患者がその対象となります。
アトピー性皮膚炎のかゆみの原因物質としてヒスタミンがよく知られていますが、以前抗ヒスタミン薬ではその物質を完全に抑えられないとされていました。このミチーガは
そのヒスタミンを抑える効果が高い治療方法で、既存治療では満足にかゆみの抑制が出来なかった患者に対し有効な治療方法になるでしょう。

4. 紫外線療法

エキシマライト照射
紫外線のUVBを照射する光線治療は、従来よりアトピー性皮膚炎の付加的治療法として利用されていて、保険適応の対象にもなってる治療方法となります。
特に、ステロイド外用剤が十分な効果を発揮しない場合や、かゆみの強い病変部位や痒疹結節の部位に効果的であると言われています。

日常のスキンケア

毎日の継続したスキンケアと、適切な量の薬をしっかり塗ることが、ご自身でできる治療において重要になってきます。
まず、皮膚を清潔に保つために毎日の入浴・シャワーは必須です。使用するシャンプーや石鹸は洗浄力の強いものは避け、できる限り低刺激、敏感肌用を使うようにしましょう。もちろん、体を洗う際には皮膚をこすらないようにして、流す際には洗い残しがないようにしましょう。
また、高い温度のお湯に長時間浸かることや、入浴剤の使用は避けるべきでしょう。
もちろん、入浴後はなるべく早めに保湿剤を塗ることで肌が乾燥することを防ぎます。その後も、肌が少しでも乾燥してきたら何度でも塗り直すようにしましょう。
症状が比較的軽い状態であれば、肌の保湿のみで症状が改善するケースが多いです。
毎日のスキンケアを怠り、少し悪くなったからといって市販の薬を使ったりしていると、
症状はいっこうに治らないでしょう。
症状がなかなか改善しない場合には医師に相談をし、経過を観察しながら適切な治療方法を選択していく必要がありますので、ご自身で判断せず、まずは医師に相談するようにしましょう。

日常生活における悪化因子の除去

症状が悪化する外的要因はたくさんあります。そのすべてを除去することは現実的に困難なことも多いので、ご自身のライフスタイルに合わせてできる限り悪化因子を取り除くことが大切です。

こうした生活をこころがけよう

  • こまめに掃除をしてダニやほこりを排除する
  • ダニの発生しやすい絨毯やラグ、ソファなどの布製の家具は使わない
    ※ぬいぐるみなどもできる限り避けましょう
  • こまめに換気をして室内温度を適温に保つ
  • ペットはできる限り飼わない
  • 衣類は刺激の少ない素材のものを
  • 洗濯もののすすぎ残しをなくすこと
  • ストレスを出来る限りためない生活環境
  • 夏場の日焼けはできる限り避ける
  • 規則正しい生活の徹底

よくある質問

保湿クリームの適切な量
チューブの軟膏の場合、人差し指のてっぺんから第一関節まで出した量で、大人の手のひら2枚ぶんの面積に塗るのが適量です。
意外とこの量が足りていない方が多いため、もったいないから少なめでとは考えず、適切な量を毎日継続して塗るようにしましょう。
保湿クリームとステロイド外薬って重ね塗りしてもいいの?
塗り方に特に決まりはありませんが、できればステロイド外用薬を先に塗り、その上から保湿クリームを上から塗るようにしましょう。
妊娠中にアトピー性皮膚炎になってしまった場合はどうしたらいいの?
妊娠中であっても基本の対象法は同様で、丁寧なスキンケアにより皮膚のバリアを守ること、アレルギーに対する治療が主な対策となるでしょう。ただし、抗アレルギー外用薬に関しては、比較的副作用の出にくいロコイド軟膏を使用するのがおすすめです。
また、漢方療法などもおすすめで、通常イライラを抑えるような薬であっても、かゆみに対して効果のあるものもありますので、事前に効能は調べておきましょう。
赤ちゃんのアトピー対策はあるのでしょうか。
赤ちゃんのアトピーは、成人とは違い完治が難しい病気ではなく、ほとんどの場合には免疫バランスがよくなる1歳~2歳頃には自然治癒します。それまでは症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、これといって特別な治療法はなく、成人の場合と同じように、スキンケア、薬物療法、環境整備、が基本治療です。
もちろん、乾燥しやすい赤ちゃんの場合には、成人の場合よりも色々丁寧に対策をする必要がありますが、そのお子さんにあった治療法が大切になりますので、ご自身で判断せず医師の判断を仰ぐようにしょましょう。

当院で受診を検討している場合にはこちらを参考にご予約下さい。

担当医師のご紹介

須藤一


医師紹介 – 須藤 一

信田りの


通って下さる患者様が、日々明るく元気に健康に過ごせるように、治療してきます。
医師紹介 – 信田 りの

坂本淳


分かりやすい説明と質の高い治療で安心して通えるよう心がけております。
医師紹介 – 坂本 淳

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監修医師

坂本 淳Sakamoto Atsushi

坂本 淳 日本皮膚科学会皮膚科専門医
略 歴
2009年3月 順天堂大学医学部 卒業
2009年4月 順天堂大学病院 初期研修
2011年3月 同病院 研修終了
2011年4月 同病院皮膚科入局、同病院大学院入学
2015年3月 同病院大学院修了
2015年4月 順天堂静岡病院 助教
2017年5月 東京臨海病院 医局派遣
2020年1月 順天堂練馬病院 准教授
専 門
日本皮膚科学会皮膚科専門医
専門分野
尋常性ざ瘡・アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・花粉症・乾癬・湿疹/皮膚炎・円形脱毛症・尋常性白斑・白癬・イボなど一般的な皮膚科疾患の治療、しみの治療、男性型脱毛症(AGA)の治療など。

須藤 一Sudo Hajime

須藤 一 日本皮膚科学会皮膚科専門医
略 歴
1990年3月 順天堂大学医学部 卒業
1990年5月 順天堂大学医学部附属順天堂医院皮膚科入局
1996年3月 順天堂大学医学部大学院学位取得(医学博士)
1996年4月 順天堂大学医学部附属順天堂医院皮膚科助手
1998年8月 順天堂大学医学部付属順天堂医院皮膚科講師
1998年11月 順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター講師
1999年4月 順天堂大学医学部附属順天堂大学大学院講師
1999年10月 日本皮膚科学会皮膚科専門医取得
2001年4月 順天堂大学皮膚科学講座病棟医長
2002年7月 米国スタンフォード大学留学(3年半)
2008年4月 順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター皮膚科学講座准教授
2012年4月 順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター非常勤講師
2012年7月 医療法人社団須藤皮膚科医院院長(兼任)
専 門
日本皮膚科学会皮膚科専門医

参考文献

アトピー性皮膚炎ガイドライン2021
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2021.pdf

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