大人の汗疹(あせも)は「子どもの病気」ではありません

首まわりや背中、ひじの内側に、赤くて細かいブツブツが出てチクチクとかゆい。汗をかいた翌日に決まって悪化する。そんな症状に心当たりのある大人の方は多くいます。
あせもは乳幼児の病気という印象がありますが、汗を多くかく大人にも起こります。また、ぶつぶつや黒いシミに悩まれてる方も多くご相談を受けます。
この記事では、大人の汗疹がなぜ起きるのか、家庭でできる対処、市販薬と皮膚科の処方の違い、受診の目安までを、私の経験と正しい治療方法をお伝えします。
- 大人の汗疹がどんな見た目・どの部位に出やすいか
- 汗疹が起こる仕組みと、大人ならではの引き金
- 今日から実行できるセルフケアと、やってはいけないこと
- 市販薬と皮膚科の処方薬の違い、使用期間の目安
- あせもと間違えやすい別の皮膚トラブル
汗疹(あせも)とはどんな症状か

汗の出口が詰まって起こる皮膚トラブル
汗疹は、汗そのもののかぶれではなく、汗の通り道が塞がって起こります。
日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』は汗疹を「エクリン汗管の閉塞によって紅色の丘疹が多発する疾患で乳幼児や発汗の多い人に好発する」と記載しています。俗に言う「あせも」がこれにあたります。
MSDマニュアル プロフェッショナル版(2024年3月改訂)の解説も同様で、閉塞によって汗の流れが遮られ、皮膚の中に汗がたまることで皮膚病変が生じる、としています。汗をかく力そのものが問題なのではなく、出口が詰まる点が本質です。
詰まる深さで3つ以上のタイプに分かれる
MSDマニュアルによれば、汗管が詰まる深さによって病型が変わります。表皮の最上層で詰まると水晶様汗疹となり、透明で水滴のような小さな水疱ができ、軽く押すだけで破れます。
表皮の中間層で詰まると紅色汗疹、いわゆる典型的なあせもで、チクチクした刺激感を伴うかゆい丘疹が出ます。膿疱として現れるものは膿疱性汗疹、真皮の浅い部分で詰まるものは深在性汗疹と呼ばれ、より大きく深い丘疹になり痛みを伴うことがあります。
大人で出やすい部位
前出のガイドライン2024には、1〜2mm大のかゆみを伴う紅色丘疹が多発し、体幹、四肢屈側(ひじやひざの内側)、頸部、腋窩(わきの下)などに生じやすいと書かれています。大人の場合、下着やベルトで締めつけられる部分、リュックの肩ひもが当たる部分、長時間座る背中や腰など、衣服がぴったり密着する場所に集中しやすい傾向があります。
大人に汗疹が起きる原因

高温多湿と、汗の逃げ場がない服装
MSDマニュアルは、汗疹の誘因として温暖多湿な気候、厚着、入院中、寝たきりの状態を挙げています。
高温多湿な環境、激しい運動や発熱、通気性の悪いドレッシング材や化学繊維の衣類による皮膚の閉塞が要因として整理されています。
大人の場合、スーツや作業着、防護服、コルセット、サポーターなど、仕事や生活の都合で通気の悪い状態が長く続くことが引き金になります。
熱帯気候の地域に移り住んだ成人では最大30%が汗疹を経験するとも記載しており、環境が変わった直後は起こりやすい状況です。
発熱・入院・長時間の同一姿勢
発熱時は全身から汗が出るうえ、寝具に接した背中は蒸れて熱がこもります。入院中や寝たきりの方で汗疹が出やすいのはこのためです。介護中のご家族が背中の赤いブツブツに気づいて相談されることもあります。
大人の汗疹の治し方:セルフケアでできること

方向性は「汗をかかない」ではなく「汗をためない」
治療の基本は、患部を涼しく乾いた状態に保つことです。MSDマニュアルは、冷却と乾燥を図り、通気性の悪い衣服や厚い軟膏を避けるよう記載しています。DermNetも、空調のきいた環境、ゆったりした通気性のよい衣服、冷たいタオルなどでの冷却、濡れた衣服をすぐに脱ぐことを対策として挙げています。汗を出さないようにするのではなく、出た汗を皮膚の上に長く残さないことが目標です。
セルフケアのチェックポイント
- 汗をかいたら、シャワーか濡れたタオルで洗い流し、こすらずに押さえて乾かす
- 濡れた下着・シャツはすぐ着替える。替えを職場やかばんに用意しておく
- 綿など通気性・吸湿性のよい素材を選び、締めつけの強い衣類を避ける
- エアコンや扇風機で室温と湿度を下げ、寝具の蒸れも減らす
- かゆくても掻かない。爪を短く切っておく
- 厚くべたつく軟膏を広範囲に重ね塗りしない
衣服と室温については、厚生労働省の熱中症予防のページも「通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用する」「エアコン等で温度を調節」と呼びかけています。汗疹対策と熱中症対策は同じ方向を向いています。
市販薬と皮膚科の処方薬は何が違うか

ドラッグストアの薬で様子を見るか、皮膚科に行くか。判断材料になるのが、選べる薬の幅と、診断の裏づけがあるかどうかです。
| 項目 | 市販薬(OTC) | 皮膚科での処方 |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬の強さ | 厚生労働省の検討会議資料(令和6年3月)では、ストロングクラスとミディアムクラスの成分がすでにスイッチOTC化されていると記載 | ストロンゲスト・ベリーストロング・ストロング・ミディアム・ウィークの5段階から、部位と重症度に応じて選択(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024) |
| 使用期間の目安 | 同資料には、5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は受診するよう強く注意喚起する、との記載がある | 経過を診ながら医師が強さと期間を調整 |
| 診断の裏づけ | 自己判断。薬剤師・登録販売者に相談 | 視診に加え、必要に応じて顕微鏡検査(KOH直接鏡検)や細菌培養で他の病気を除外 |
| 感染を伴うとき | 対応できない | 細菌感染には抗菌薬、真菌には抗真菌薬を使い分け |
同じ厚生労働省の資料には、顔や首など薬剤の吸収率が高い部位への外用はできるだけ短期間にとどめるべきという指摘や、漫然と塗り続けることで毛のう炎(ステロイドざ瘡)、皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用が起こりうるという指摘も記載されています。市販のステロイド外用薬を顔や首に長く使い続けるのは避けてください。
見落としがちなポイントとよくある誤解

誤解1:汗をかかないようにすれば治る
汗を止めることは解決策ではありません。厚生労働省は熱中症を「高温な環境下で、発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもることによって様々な症状がみられる状態」と説明しています。発汗は体温を下げる仕組みそのものです。DermNetも、汗疹の合併症として体温調節の障害や、症状のない部位での代償性の発汗増加を挙げています。汗を封じ込めるのではなく、涼しくして汗を洗い流す方向で対処してください。
誤解2:夏のかゆい発疹はすべてあせも
見た目が似ていても別の病気であることがあります。日本皮膚科学会・日本医真菌学会の『皮膚真菌症診療ガイドライン2025』は、カンジダ性間擦疹について、陰股部、指趾間部、皮膚のくびれ部分、絆創膏や衣服・寝具などに覆われて高湿度にさらされる部位に生じる境界明瞭な紅斑で、びらん、薄い膜状の鱗屑、小膿疱、周囲の衛星病巣が特徴だと記載しています。真菌が原因ならステロイドだけでは改善しません。同ガイドラインは、確定診断には顕微鏡での真菌検査が必要としています。
汗をかくと出る発疹には、蕁麻疹の一種もあります。日本皮膚科学会の『蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)』は、コリン性蕁麻疹について「入浴,運動,精神的緊張など,発汗ないし発汗を促す刺激が加わった時に生じる」「小児から30歳台前半までの成人に好発」と記載し、皮疹は出現後数分から2時間以内に消退することが多いとしています。数時間で跡形もなく消えるなら、あせもではなくこちらの可能性があります。
掻き壊すと「とびひ」になることがある
日本皮膚科学会の皮膚科Q&A「とびひ」の解説には、伝染性膿痂疹(とびひ)はブドウ球菌や溶血性連鎖球菌による細菌感染症で、あせもや虫刺されなどを掻くことで二次感染として発症すると書かれています。同じQ&Aでは、とびひは通常は子どもに多いものの大人も発症し、高齢者では皮膚が薄くバリア機能が低下しているため注意が必要で、他の水疱をつくる病気との鑑別のために細菌培養や皮膚生検が必要になる場合もあると説明されています。かゆみを我慢できずに掻き壊してしまう状態は、早めに医療機関で止めるほうが安全です。
皮膚科を受診すべきタイミング
DermNetは、汗疹の多くは涼しい環境に移れば1〜2日で治療なしに軽快すると記載しています。裏を返せば、涼しくしても引かない場合は別の対応が要ります。次のいずれかに当てはまるときは皮膚科を受診してください。
- 涼しい環境で過ごし、汗を洗い流しても数日で改善しない
- 市販薬を5〜6日間使っても症状がよくならない
- 黄色い膿やかさぶたができ、周囲に広がっている
- 発熱や痛みを伴う
- じくじくしたただれや、境界のはっきりした赤みが股や乳房の下、わきに出ている
- 顔や首に出ていて、市販のステロイドを使いたい
- 毎年同じ時期に繰り返す、または広範囲に及ぶ
- 糖尿病などの持病がある、寝たきりや介護を受けている
皮膚科での主な治療法
MSDマニュアルは、汗疹の治療として冷却と乾燥の対策に加え、外用コルチコステロイド(ステロイド外用薬)の使用を記載しています。DermNetは、炎症に対して弱いランクのステロイド外用、二次感染に対して消毒薬や抗菌薬という整理をしています。
日本では、ステロイド外用薬はストロンゲスト(I群)からウィーク(V群)までの5段階に分類され、『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』は「このランクを指標にして,個々の皮疹の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に選択し,必要な量を必要な期間,的確に使用することが重要」としています。同じ赤いブツブツでも、首なのか背中なのか、炎症が軽いのか強いのかで選ぶ薬は変わります。
掻き壊してとびひを起こしていれば抗菌薬、真菌検査でカンジダが確認されれば抗真菌薬というように、原因に応じた薬に切り替えます。当院の一般皮膚科(保険診療)でも、ステロイド外用薬・抗アレルギー薬・抗真菌薬・抗生剤を用いた治療に対応しています。繰り返す湿疹や、市販薬で改善しない皮疹はご相談ください。
よくある質問
- Q. 大人のあせもはどのくらいで治りますか?
- DermNetの解説では、汗疹の多くは涼しい環境に移ることで1〜2日のうちに治療なしで軽快するとされています。涼しくして汗を洗い流しても数日で改善しない場合や、繰り返す場合は、別の皮膚疾患や二次感染の可能性があるため皮膚科で確認してください。
- Q. 市販のかゆみ止めを塗り続けても大丈夫ですか?
- 厚生労働省の検討会議資料(令和6年3月)には、5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は受診するよう強く注意喚起するとの記載があります。同資料では、顔や首など吸収率の高い部位への外用は短期間にとどめるべきとされ、漫然とした使用による皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用も指摘されています。購入時は薬剤師や登録販売者に相談してください。
- Q. あせもは人にうつりますか?
- 汗疹は汗管が詰まって起こるもので、人から人へうつる病気ではありません。ただし掻き壊した部分に細菌が入るととびひ(伝染性膿痂疹)になり、こちらは接触でうつります。日本皮膚科学会のQ&Aでは、あせもや虫刺されを掻くことによる二次感染として発症すると説明されています。
気になる症状があれば皮膚科へご相談ください
セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。
所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
大人の汗疹は、汗の量そのものより「汗の出口が詰まること」で起こります。涼しく保ち、汗を洗い流し、通気性のよい衣類に替えるという基本的な対処で改善する例が多い一方、掻き壊しからとびひに進んだり、カンジダ性間擦疹やコリン性蕁麻疹など別の病気だったりすることもあります。
市販薬を5〜6日使っても変わらないとき、膿やかさぶたが出てきたとき、顔や首に広がっているときは、自己判断を続けずに皮膚科で診断をつけてください。気になる症状があれば皮膚科を受診してください。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(東京都千代田区)でもご相談いただけます。
References
- 日本皮膚科学会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』日本皮膚科学会雑誌 134巻11号 2741-2843、2024年 出典
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会『皮膚真菌症診療ガイドライン2025』日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566、2025年 出典
- 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会『蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)』日本皮膚科学会雑誌 136巻4号 375-493、2026年 出典
- 日本皮膚科学会『皮膚科Q&A とびひ(伝染性膿痂疹)』 出典
- 厚生労働省『熱中症予防のための情報・資料サイト(熱中症予防のための情報・資料/予防行動)』 出典
- 厚生労働省『第27回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議 資料(デプロドンプロピオン酸エステル)』令和6年3月12日 出典
- MSDマニュアル プロフェッショナル版『汗疹』2024年3月改訂 出典
- DermNet『Miliaria (Heat rash)』2020年更新 出典
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監修医師

苅部 淳
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