大人になってから全身がかゆい、その原因を整理します

目立った発疹はないのに、体のあちこちがむずむずしてかき続けてしまう。
夜になるとかゆみが強くなり、眠りが浅くなる。そんな状態が何週間も続くと、皮膚の問題なのか体の中の問題なのか分からず不安になります。
秋ごろより増える”痒み”。大人の全身のかゆみで考えられる原因と、家庭でできる対処、皮膚科を受診する目安を、日本皮膚科学会の診療ガイドラインをもとに整理します。
- 発疹がないのに全身がかゆい「皮膚瘙痒症(ひふそうようしょう)」という病気の考え方
- 乾燥、内臓の病気、薬、蕁麻疹、疥癬など、大人の全身のかゆみの主な原因
- 「保湿すればどんなかゆみも治る」という誤解の落とし穴
- 家庭でできるスキンケアと、皮膚科を受診したほうがよい具体的なサイン
- 皮膚科で行われる検査と、保険適用のある治療・ない治療の違い
発疹がないのに全身がかゆい「皮膚瘙痒症」とは

日本皮膚科学会の『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』は、皮膚瘙痒症を「皮膚病変が認められないにもかかわらず瘙痒を生じる疾患」と定義しています。
ただし、かき壊すことで二次的にかき傷や色素沈着が生じることはあります。つまり、赤みやブツブツがはっきり出ていなくても、医学的にはひとつの病気として扱われます。
同ガイドラインは、体表の特定の部位に限らず広い範囲がかゆくなるものを「汎発性皮膚瘙痒症」、肛門周囲や頭部など限られた部位に固定して出るものを「限局性皮膚瘙痒症」と分類しています。全身がかゆいという訴えは前者にあたります。汎発性はさらに、原因のはっきりしない特発性、加齢性、基礎疾患による症候性、妊娠性、薬剤性、心因性に分けられます。
どれくらいの人に起きているのか
同ガイドラインが引用する疫学調査では、ノルウェー・オスローの成人を対象にした横断調査で皮膚瘙痒症にあたる人が8.4%、ドイツの200名を対象にした試験的研究で点有病率13.9%、生涯有病率22.6%と報告されています。
日本の皮膚科を受診した患者での診断率は6.8%でした。また、同研究班が2009年に全国の大学病院皮膚科を対象に行ったアンケートでは、回答のあった65施設で汎発性皮膚瘙痒症が年間外来患者に占める比率は平均1.89%でした。
かゆみの現れ方は一様ではありません。ガイドラインは、持続性のこともあれば発作性のこともあり、夜間の睡眠が妨げられること、腎不全や透析、胆汁うっ滞によるものでは「体の中から沸くような痒さ」「急に痒みが襲ってくる」と表現される場合があることを記載しています。
大人の全身のかゆみで考えられる原因

『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』は、臨床的には皮膚の乾燥に由来する場合、服用している薬剤が原因の場合、何らかの基礎疾患(主として内臓の異常)に伴う場合の3つに大別できるとしています。ここに、蕁麻疹や疥癬のように別の病名がつく病気が加わります。
皮膚の乾燥(ドライスキン)
同ガイドラインは、皮膚瘙痒症のかゆみで最も多いのが皮膚の乾燥に由来する場合であり、汎発性皮膚瘙痒症の原因として最も多いのは老人性乾皮症によるものだと述べています。乾燥した皮膚では、表皮の中に神経線維が伸びてかゆみの閾値が下がり、わずかな刺激でもかゆみが起きやすくなります。空気の乾燥、洗いすぎ、加齢による皮脂やセラミドの減少が重なると悪化します。
内臓の病気に伴うかゆみ
ガイドラインの表1「汎発性皮膚瘙痒症を惹起する内臓疾患」には、慢性腎不全や血液透析、原発性胆汁性胆管炎・閉塞性胆道疾患・肝硬変・慢性肝炎などの肝胆道系疾患、甲状腺機能異常・糖尿病・妊娠・痛風などの内分泌代謝疾患、真性赤血球増多症・鉄欠乏性貧血・悪性リンパ腫などの血液疾患、内臓悪性腫瘍、神経疾患、AIDSや寄生虫疾患が並びます。実際の頻度として、慢性C型肝炎の21.3%、HIV感染者の13%、尿毒性疾患では10〜77%に皮膚瘙痒症が認められたという報告が引用されています。
薬が原因になるかゆみ
同ガイドラインの表2「かゆみを誘発する薬剤」には、モルヒネなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン系などの中枢系作動薬、抗マラリア薬のクロロキン、アスピリンを含む消炎鎮痛薬、降圧薬や利尿薬、βラクタム系抗生物質、ホルモン剤などが記載されています。薬剤性の頻度は多くはないものの、高齢の方は多種類の薬を飲んでいることが多く、原因を特定できないときは薬の可能性も考える必要があると明記されています。サプリメントや健康食品の習慣的な摂取も、問診で確認すべき項目とされています。
蕁麻疹
『蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)』によれば、蕁麻疹は紅斑を伴う一過性・限局性の浮腫(膨疹)が出没する疾患で、多くはかゆみを伴います。膨疹は全身のどこにでも出現し、一部の例外を除き30分から24時間以内に皮膚が元の状態に戻るのが特徴です。発症から6週間以内を急性特発性蕁麻疹、6週間を超えたものを慢性特発性蕁麻疹と呼びます。同ガイドラインは、蕁麻疹を世界人口の最大20%が生涯のある時点で罹患する頻度の高い疾患と記載しています。
疥癬(かいせん)
『疥癬診療ガイドライン(第3版)』は、疥癬をヒト皮膚角質層に寄生するヒゼンダニの感染により発症し、虫体・糞・脱皮殻などに対するアレルギー反応による皮膚病変とかゆみを主症状とする感染症と定義しています。手関節屈側、手のひら、指の間、指の側面などに好発する「疥癬トンネル」が特徴で、幅は約0.4mm、長さは多くが5mm程度の白っぽい線状の皮疹です。臍部や腹部、胸部、腋窩、大腿内側などに散在する紅斑性丘疹を伴い、かゆみは夜間に特に強く、不眠になることもあると記載されています。
感染は肌と肌の直接接触が主な経路で、感染後およそ1〜2か月(高齢者では数か月のこともある)の無症状の潜伏期間を経て症状が出ます。角化型疥癬では皮膚にヒゼンダニが100〜200万匹、時に500万匹以上存在し、感染力が非常に強く、集団感染を引き起こすことがあります。
アトピー性皮膚炎や湿疹
『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』は、かゆみの誘発・悪化因子として温熱、発汗、ウール繊維、精神的ストレス、食物、飲酒、感冒が特に重要としています。入浴後や布団に入って体が温まったときにかゆみが強くなる、飲酒後にかゆくなる、といった経験に心当たりがある方は、この視点で振り返ってみてください。
よくある誤解と見落としがちなポイント

誤解1「保湿すれば全身のかゆみは治る」
保湿は有効ですが、万能ではありません。『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』のCQ1は、ドライスキンを伴う皮膚瘙痒症に対しては保湿剤使用により瘙痒の軽減が見込まれる(推奨度B)とする一方、ドライスキンのない皮膚瘙痒症に対する効果は不明であり、保湿剤外用で効果が見られない場合は他の方法に変更するほうがよいと明記しています。つまり「保湿を続けても変わらない」ことは、次の手を考えるべきサインです。
誤解2「発疹がないから皮膚の病気ではないし、様子見でよい」
むしろ逆で、発疹がないかゆみこそ全身の状態を確認する必要があります。同ガイドラインは、既往歴や生活歴を詳しく聴取したうえで、血液検査(血算、白血球分画、BUN、Cre、肝胆道系酵素、甲状腺ホルモン、血糖値)などで基礎疾患を除外すると記載しています。さらに、血液検査で異常が見つからず原因不明の頑固なかゆみが長期間続く場合は、内臓悪性腫瘍の合併も念頭に置き、便潜血、腫瘍マーカー、胸部X線、造影CTなどの評価を行う必要があるとしています。
見落としがちなポイント:夜間に強いかゆみと同居者の症状
夜間に特に強いかゆみ、手首や指の間の線状の皮疹、そして家族や同室者にも同じようなかゆみが出ている。この組み合わせは疥癬を疑う手がかりです。疥癬ガイドラインは、通常疥癬でも高齢者や糖尿病、透析中、免疫抑制剤投与中の患者ではヒゼンダニの寄生数が多いことがあると記載しています。単なる乾燥や湿疹として自己判断せず、皮膚科で顕微鏡検査やダーモスコピー検査を受けてください。
セルフケアでできること

『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』は表3として「スキンケアの例」を掲載しています。以下はその内容です。
- 毎日の入浴・シャワーで皮膚を清潔に保ち、汗や汚れは速やかに落とす。ただし強くこすらない
- 石鹸・シャンプーは洗浄力の強いものを避け、残らないよう十分にすすぐ
- かゆみを生じるほど高い温度の湯を避ける
- 入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤を避ける
- ナイロンタオルや硬めのタオルの使用を控える
- 室内を清潔にし、適温・適湿を保つ
- 新しい肌着は使用前に水洗いする。洗剤は十分にすすぎ落とす
- 爪を短く切り、なるべく掻かないようにする。手袋や包帯による保護が有用なことがある
これに加えて、いま飲んでいる薬とサプリメントを書き出しておくと診察が早く進みます。いつから、体のどこが、どんなときにかゆいのかをメモしておくことも役立ちます。市販のかゆみ止めを使う場合は、成分や使用期間について薬剤師に相談してください。
皮膚科を受診すべきタイミング

次のいずれかに当てはまるときは、自己判断で様子を見ずに皮膚科で相談してください。
- 保湿を続けても2週間ほどでかゆみが変わらない、または悪化している
- 発疹がはっきりしないのに、全身のかゆみが長期間続いている
- かゆみで夜間に目が覚める、眠れない日が続いている
- 手首の内側や指の間に白っぽい線状の皮疹がある
- 家族や同居者、同じ施設の人にも同じようなかゆみが出ている
- 新しい薬やサプリメントを始めてからかゆみが出た
- 透析中、肝臓や腎臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気などで通院している
- 皮膚以外の体調の変化(だるさ、体重の変化など)を同時に感じている
受診時は、かき壊した部位を隠さずに見せてください。かき傷や色素沈着そのものが診断の手がかりになります。
皮膚科での検査と主な治療法
皮膚科ではまず視診と問診で、皮疹の有無や分布、かゆみの出方を確認します。疥癬が疑われる場合は顕微鏡検査やダーモスコピー検査でヒゼンダニを探します。発疹のないかゆみが続く場合は、前述の血液検査で基礎疾患のスクリーニングを行います。基礎疾患が見つかれば、その治療が土台になります。
皮膚瘙痒症に対する主な治療の位置づけ
下の表は『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』のクリニカルクエスチョンと治療アルゴリズムの記載をまとめたものです。保険適用の有無は同ガイドライン(2020年時点)の記載に基づきます。実際に使える薬や適用は変わることがあるため、医師に確認してください。
| 治療 | ガイドラインの推奨度 | 保険適用(同GL記載) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 保湿剤 | B | あり | ドライスキンを伴う場合に軽減が見込まれる。伴わない場合の効果は不明 |
| 抗ヒスタミン薬(内服) | C1 | あり | 高いレベルで解析した研究がなく、使用を考慮してもよいが十分な根拠はない |
| ステロイド外用薬 | C2(湿疹病変を伴う場合はB) | あり | 皮疹のないかゆみへの効果は不定。二次的な湿疹を伴う場合に推奨 |
| 鎮痒性外用薬 | C1 | あり | 治療アルゴリズムに保険適用として記載 |
| 紫外線療法 | ブロードバンドUVB:B / ナローバンドUVB・UVA:C1 | 皮膚瘙痒症に対しては適用外 | 腎障害を伴う皮膚瘙痒症へのブロードバンドUVBの有用性が報告されている |
| ナルフラフィン塩酸塩(内服) | 血液透析患者B / 慢性肝疾患患者B / それ以外C2 | 血液透析患者・慢性肝疾患患者の瘙痒症(既存治療で効果不十分な場合)のみ | それ以外の皮膚瘙痒症では適用外で推奨されない |
蕁麻疹の場合は治療の考え方が異なります。『蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)』は、中枢組織への移行が少なく鎮静性の低い第2世代抗ヒスタミン薬(非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬)を第一選択薬として推奨しています。効果には個人差があり、1種類で十分でない場合は他の薬への変更・追加・増量で効果を期待できるとも記載されています。疥癬では、同ガイドライン第3版の時点で保険適用のある薬剤はフェノトリンローション、イオウ外用剤、イベルメクチン内服です。
麹町皮ふ科・形成外科クリニックでも、一般皮膚科の保険診療として保湿剤やステロイド外用薬、抗アレルギー薬の処方、原因を調べるための診察に対応しています。長引く全身のかゆみで困っている方はご相談ください。
よくある質問
- Q. 全身がかゆいのに発疹が出ていません。皮膚科で診てもらえますか。
- 診てもらえます。日本皮膚科学会は、皮膚病変が認められないのにかゆみを生じる状態を「皮膚瘙痒症」として診療ガイドラインを定めています。原因を調べるために血液検査などで基礎疾患を確認する流れが示されているため、発疹がないことは受診をためらう理由になりません。
- Q. 市販のかゆみ止めでしのいでも大丈夫ですか。
- 一時的に楽になることはありますが、原因が乾燥以外にある場合は解決しません。『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』は、保湿で効果が見られない場合は他の方法に変更するほうがよいとしています。市販薬を選ぶときは成分や使用期間について薬剤師に相談し、改善しなければ皮膚科を受診してください。
- Q. かゆみで夜眠れません。急いで受診したほうがよいですか。
- 夜間のかゆみで睡眠が妨げられている状態は、早めに相談する目安になります。皮膚瘙痒症では夜間の就眠が障害されると記載され、疥癬でもかゆみが夜間に特に強く不眠になることがあると記載されています。原因によって治療がまったく異なるため、自己判断で市販薬を続けるより診察を受けるほうが近道です。
気になる症状があれば皮膚科へご相談ください
セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。
所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
大人の全身のかゆみは、皮膚の乾燥、飲んでいる薬、内臓の病気、蕁麻疹、疥癬など、原因の幅が広い症状です。
日本皮膚科学会のガイドラインは、乾燥によるかゆみが最も多い一方で、保湿で改善しないときは薬剤や内臓の異常を考える必要があると示しています。
目立つ発疹がないことは「軽い」という意味ではありません。保湿を続けても変わらない、夜眠れない、同居者にも同じ症状がある、こうしたサインがあれば原因を確かめる段階です。
気になる症状があれば麹町皮膚科・形成外科クリニック、BIOTOPE CLINICを受診してください。オンラインでもご相談いただけます。
References
- 佐藤貴浩ほか『皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020』公益社団法人日本皮膚科学会、日本皮膚科学会雑誌 130(7):1589-1606、2020年 出典
- 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会『蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)』公益社団法人日本皮膚科学会、日本皮膚科学会雑誌 136(4):375-493、2026年 出典
- 日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会『疥癬診療ガイドライン(第3版)』公益社団法人日本皮膚科学会、日本皮膚科学会雑誌 125(11):2023-2048、2015年 出典
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会、日本皮膚科学会雑誌 134(11):2741-2843、2024年 出典
- 公益社団法人日本皮膚科学会『一般公開ガイドライン』(掲載ガイドライン一覧、2026年9月確認) 出典
関連記事
本記事と合わせて読みたい記事はこちらです。
- 【大人の全身かゆみ】原因と治療法・セルフケアを医師が解説
- 【全身かゆみ】大人の原因と対処法を医師が解説
- 【皮脂欠乏症】乾燥・かゆみの原因と皮膚科での治療法を解説
- 【大人のアトピー性皮膚炎】治療法・原因・セルフケアを解説
- 【皮膚科受診タイミング】症状別の判断基準を医師が解説
監修医師

苅部 淳
Karibe Jun
理事長
略 歴
資 格
受 賞
苅部 淳 理事長の発信
関連クリニックの発信

