大人の汗疹(あせも)はなぜできる?症状の特徴と正しい治し方

「夏になるとかゆい赤い発疹が出る」「首や背中にぷつぷつができてなかなか治らない」――汗疹(あせも)は子どもだけの悩みと思われがちですが、大人でも決して珍しくありません。むしろ、デスクワークや運動習慣の変化、マスク着用などの生活環境の変化によって、近年は成人の汗疹のご相談が増えています。この記事では、大人の汗疹の原因・症状の特徴から、日常生活でできるセルフケア、皮膚科での治療法まで、医療機関監修のもとわかりやすく解説します。
- 大人の汗疹(あせも)の症状と種類
- 大人に汗疹ができやすい原因・悪化要因
- 自宅でできるセルフケアのポイント
- 皮膚科を受診すべき症状の目安
- 皮膚科での治療法と市販薬との違い
汗疹(あせも)とは?大人に現れる症状の特徴

汗疹とは、汗腺(エクリン腺)の出口が詰まり、汗が皮膚の外へ正常に排出されなくなることで起こる皮膚の炎症です。医学的には「粟粒疹(miliaria)」とも呼ばれます[1]。汗が皮膚内部に滞留し、周囲の組織を刺激することで、かゆみや赤み、ぷつぷつとした発疹が生じます。
子どものイメージが強い汗疹ですが、大人でも発症します。特に、長時間の発汗・蒸れ・摩擦が繰り返される環境にさらされると、皮膚のバリア機能が低下して汗腺が詰まりやすくなります。成人の場合は首の後ろ・背中・脇の下・肘の内側・膝の裏・おでこなどに多く現れます。
汗疹の主な3種類
汗疹には皮膚のどの深さで汗が詰まるかによって、大きく3つのタイプがあります。
| 種類 | 別名 | 特徴・見た目 | 主な症状 | 多い部位 |
|---|---|---|---|---|
| 水晶様汗疹 | 白いあせも | 透明〜白色の小さな水ぶくれ | かゆみはほとんどない | 顔・胸・背中 |
| 紅色汗疹 | 赤いあせも | 赤い丘疹・小水疱 | 強いかゆみ・チクチク感 | 首・背中・脇・肘裏・膝裏 |
| 深在性汗疹 | 白くて硬いあせも | 皮膚色〜白色の丘疹 | かゆみは少ないが汗をかきにくくなる | 体幹全体 |
大人に最も多いのは「紅色汗疹」です。強いかゆみを伴い、掻き壊してしまうことで悪化・二次感染へ発展するリスクがあるため、適切なケアが重要です。
大人に汗疹ができる原因と悪化させる要因

汗疹の根本的な原因は「汗腺の出口が詰まること」ですが、大人の場合はさまざまな生活習慣や環境要因がそこに関わっています。
主な原因・誘因
- 長時間の発汗・蒸れ:夏の高温多湿な環境、スポーツや肉体労働による大量の発汗
- 衣類による摩擦・蒸れ:通気性の低い合成繊維の衣類、タイトな服や下着
- マスクの長時間着用:口元〜顎・頬への蒸れや摩擦が汗疹の一因になります
- 肥満・体型による摩擦:皮膚同士が重なりやすい部位(脇・股間・腹部の下部など)は蒸れが生じやすい
- 入院・長期臥床:身体を動かせない状態が続くと発汗排出が滞り、深在性汗疹が生じることがあります
- 保湿剤・日焼け止めの過剰塗布:クリームや油分の多いスキンケアが汗腺を物理的に塞ぐ場合があります
大人で汗疹が悪化しやすい理由
大人の皮膚は加齢とともにバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。一方で汗をかく場面では蒸れが生じるという「乾燥と蒸れの共存」が起きやすく、汗腺が詰まりやすい環境になります。また、ストレスや睡眠不足による免疫機能の低下も、皮膚の回復力を下げる要因となります。
当院の外来では、在宅ワーク中に背もたれに密着した背中や、長時間のデスクワークで圧迫された太ももの裏に汗疹が生じたというご相談が増えています。生活環境の変化が汗疹のリスクを高めている実態が感じられます。
見落としがちなポイント・よくある誤解

誤解①「あせもは子どもだけのもの」
汗疹は確かに乳幼児に多い疾患ですが、成人でも十分に起こりえます。特に皮膚の重なる部位(脇・股・腹部下部)や、衣類に覆われた背中・首は大人でも蒸れやすく、汗腺が詰まりやすい環境です。「大人なのにあせも?」と受診をためらわれる方が多いですが、汗疹は年齢に関係なく発症します。
誤解②「かゆければステロイドを塗ればすぐ治る」
市販のステロイド含有クリームで一時的にかゆみが和らぐことはありますが、汗腺の詰まりそのものを解消しなければ根本的な改善にはなりません。また、かゆみに伴って掻き壊し、細菌感染(とびひ・毛包炎)が重なっているケースでは、ステロイドだけでは対応できず、抗生剤が必要になる場合もあります。症状が長引く場合は皮膚科への受診が大切です。
苅部医師のコメント
「当院では、汗疹と思って受診された方が、実際には接触性皮膚炎やカンジダ症(真菌感染)であったというケースが少なくありません。見た目が似ているため自己判断が難しく、市販薬で対処しているうちに悪化してしまうこともあります。特に首や脇・股間などの蒸れやすい部位の皮膚トラブルは、原因を正確に見極めることが改善の近道です。かゆみが強い、2週間以上改善しない、じくじくしてきた、などの場合はお早めにご相談ください。」
セルフケアでできること:大人の汗疹の正しい治し方

軽度の汗疹であれば、日常生活の工夫と適切なスキンケアで改善が期待できます。ただし、あくまで「悪化を防ぎ、自然治癒を助ける」ためのケアであり、重症化している場合や他の皮膚疾患と区別がつかない場合は医療機関への相談が優先です。
スキンケアのポイント
- こまめに汗を拭く:汗をかいたらそのままにせず、清潔な柔らかいタオルで優しく押さえるように拭き取る。摩擦は避ける
- シャワーで汗を流す:1日1〜2回、ぬるめのシャワーで汗と汚れを洗い流す。石けんはよく泡立てて優しく洗う
- 洗いすぎに注意:何度もゴシゴシ洗うと皮膚バリアが壊れて悪化する場合があります
- 保湿は「さらっとしたタイプ」を選ぶ:油分の多いクリームは汗腺を塞ぐ可能性があります。ローションやジェルタイプが向いていることが多いです
- 患部を掻かない:掻くと皮膚が傷ついて細菌感染のリスクが高まります。かゆみが強い場合は冷タオルで冷やして対処しましょう
生活習慣の改善ポイント
- 通気性・吸湿性の高い素材(綿・麻など)の衣類を選ぶ
- エアコンなどで室内温度・湿度を適切に管理する(室温26〜28℃、湿度50〜60%程度が目安)
- 下着は汗をかいたらこまめに替える
- 長時間同じ姿勢でいる場合は適度に体勢を変え、皮膚の蒸れを防ぐ
- マスクは通気性のあるものを選び、可能な場面では適宜外して皮膚を休ませる
市販薬の活用と注意点
ドラッグストアで購入できる外用薬(かゆみ止め・ステロイド外用薬など)は、軽度の汗疹のかゆみ緩和に一定の効果が期待できます。ただし、使用前には薬剤師に相談の上、適切な製品・使用方法を確認してください。ステロイド含有薬は顔・股間・脇などの皮膚の薄い部位への使用に注意が必要です。また、1〜2週間使用しても改善がみられない場合は、皮膚科の受診を検討しましょう。
皮膚科を受診すべきタイミングのチェックリスト

汗疹は通常、適切なケアで自然に改善することが多いとされています。しかし、以下のような状態が当てはまる場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
- ☑ 発疹が2週間以上続いている、または繰り返す
- ☑ 掻き壊して皮膚がただれている、または傷になっている
- ☑ じくじくと滲出液(浸出液)が出ている
- ☑ 赤みや腫れが広がっている、または周囲が熱を帯びている
- ☑ 発疹が首・脇・股間など広い範囲に及んでいる
- ☑ 発熱やリンパ節の腫れを伴っている
- ☑ 市販薬を使用しているが効果を感じられない
- ☑ 汗疹なのか他の皮膚疾患なのか判断がつかない
- ☑ 糖尿病など基礎疾患があり、皮膚の回復が遅い
特に、じくじくして黄色い滲出液が出る場合や、発疹の周囲が赤く腫れてきた場合は、細菌感染(二次感染)が起きている可能性があります。この場合は市販薬の対処では不十分なことが多く、抗生剤が必要になる場合もあります。
皮膚科での主な治療法
皮膚科を受診すると、まず視診・問診で汗疹の種類と重症度を確認し、必要に応じて他の皮膚疾患との鑑別を行います。治療法は症状の程度に応じて異なります。
主な治療薬の比較
| 治療の種類 | 主な薬・方法 | 対象症状 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 市販薬(OTC) | 弱〜中程度のステロイド外用薬・かゆみ止めクリーム | 軽度のかゆみ・赤み | 数百〜1,500円程度 | 処方不要・手軽。成分・強度は限定的 |
| 皮膚科処方薬(保険診療) | ステロイド外用薬(中〜強度)・抗ヒスタミン薬(内服) | 中〜重度の炎症・かゆみ | 数百〜1,500円程度(3割負担) | 症状・部位に合わせた強度選択が可能 |
| 抗生剤(外用・内服) | 抗生物質の外用薬・内服薬 | 二次感染(細菌感染)が疑われる場合 | 数百〜1,500円程度(3割負担) | 感染が確認された場合のみ使用 |
| 抗真菌薬 | 抗真菌外用薬・内服薬 | カンジダ症など真菌感染との鑑別後 | 数百〜2,000円程度(3割負担) | 汗疹と類似した症状の真菌感染に対応 |
実際の診療では、外用ステロイド薬と抗ヒスタミン薬(内服)を組み合わせることで、かゆみを抑えながら皮膚の炎症を鎮める治療が一般的です[2]。処方されるステロイドの強度は、部位・年齢・症状の程度に応じて医師が判断します。
難治性・繰り返す汗疹の場合
汗疹を繰り返す方や、汗によるスキントラブルが慢性化している方には、保湿・スキンケアの見直しとあわせて、皮膚バリア機能を整える治療を継続することが重要です。また、アトピー性皮膚炎や多汗症が背景にある場合は、それぞれに応じた専門的な治療が必要になります。当院では一般皮膚科として、症状や生活背景を丁寧に確認した上で治療方針をご提案しています。
なお、近年の研究では、汗疹の発症にピティロスポルム(Malassezia属)などの常在真菌が関与している可能性も指摘されており[3]、単純なステロイド治療だけでは改善しない場合の原因の一つとして注目されています。皮膚科での正確な鑑別が重要な理由の一つです。
汗疹と間違えやすい皮膚疾患
汗疹と似た症状を示す皮膚疾患は複数あります。自己判断で市販薬を使い続けると、別の疾患を悪化させてしまう可能性もあるため、以下の疾患との鑑別を医師に行ってもらうことが大切です。
- 接触性皮膚炎:洗剤・金属・衣類の染料などによるアレルギー・刺激反応。特定の部位に限定した赤みが特徴
- アトピー性皮膚炎:慢性的な強いかゆみ・乾燥を伴う。汗で悪化することも多い
- カンジダ症(カンジダ皮膚炎):真菌(カビ)が原因。蒸れやすい股間・脇・皮膚の重なる部位に赤みや白い苔状の変化が現れる。ステロイド外用で悪化することがある
- 毛包炎(毛嚢炎):毛穴の細菌感染。赤いぷつぷつの中心に膿がみられることがある
- 多形性紅斑:感染症や薬剤を契機に起こる免疫反応。ターゲット様の発疹が特徴
当院の外来では、「汗疹と思っていたが実はカンジダ皮膚炎だった」「ステロイドを塗っていたが感染症だったため悪化してしまった」というケースもみられます。見た目が似ていても原因が異なれば治療法も変わりますので、自己判断で長期間対処するより、早めに皮膚科を受診されることをおすすめします。
よくある質問
- Q. 汗疹は放置していても自然に治りますか?
- 軽度の水晶様汗疹や紅色汗疹であれば、発汗・蒸れの原因を取り除くことで数日〜1週間程度で自然に改善することが多いとされています。ただし、掻き壊しによる二次感染が起きている場合や、2週間以上改善がない場合は皮膚科の受診を検討してください。放置による悪化を防ぐためにも、早期のケアが大切です。
- Q. 汗疹と多汗症は関係がありますか?
- 多汗症(必要以上に汗をかく状態)の方は、汗腺が詰まりやすく汗疹を繰り返しやすい傾向があります。汗疹を繰り返す場合には多汗症の治療を並行して行うことで改善することもあります。多汗症が疑われる場合は、皮膚科にてあわせてご相談ください。
- Q. 汗疹の予防のためにデオドラント剤を使ってもよいですか?
- 市販のデオドラント剤(制汗スプレー・ロールオンなど)は汗疹の直接的な予防薬ではなく、製品によっては皮膚への刺激や汗腺の詰まりの一因になる場合もあります。汗疹が出やすい部位への使用は慎重に行い、成分や使用感に注意してください。汗疹が繰り返す場合は、デオドラント剤の使用方法についても皮膚科医に相談することをおすすめします。
まとめ
大人の汗疹(あせも)は、高温多湿の環境・衣類による蒸れ・長時間の発汗など、日常生活のさまざまな要因で起こります。子どもだけの悩みではなく、生活習慣や環境の変化によって大人でも十分に発症しうる疾患です。
軽度であれば、汗をこまめに拭き取る・通気性のよい衣類を選ぶ・シャワーで清潔を保つといったセルフケアで改善が期待できます。一方で、2週間以上改善しない・じくじくしてきた・発疹が広がっているといった場合は、汗疹以外の疾患の可能性も含めて皮膚科での診察を受けることが重要です。
汗疹は見た目が似た疾患と区別がつきにくく、誤ったセルフケアで悪化させてしまうケースも少なくありません。「なかなか治らない」「繰り返す」「市販薬が効かない」と感じたら、自己判断を続けず早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
気になる症状があれば皮膚科へご相談ください
セルフケアで改善しない、症状が長引いている、原因が分からないといった場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(千代田区市ヶ谷)でもご相談いただけます。
所在地: 東京都千代田区(市ヶ谷/半蔵門/永田町) / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
References
- 日本皮膚科学会『皮膚科Q&A(汗疹・あせも)』https://www.dermatol.or.jp/
- 日本皮膚科学会『湿疹診療ガイドライン2020』https://www.dermatol.or.jp/
- Mowad CM, et al. Miliaria. In: Clinical Dermatology. 皮膚科領域における汗疹・真菌関連研究に関する総説. Journal of the American Academy of Dermatology, 2004
- 厚生労働省『医療広告ガイドライン(令和元年改訂版)』https://www.mhlw.go.jp/
- PMDA『一般用医薬品(ステロイド含有外用薬)に関する情報』https://www.pmda.go.jp/
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監修医師

苅部 淳
Karibe Jun
理事長
略 歴
資 格
受 賞
苅部 淳 理事長の発信
関連クリニックの発信
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苅部 淳
Karibe Jun
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