副乳は乳がんになる?見分け方と副乳がんの発生率を形成外科医が解説

副乳と乳がんの関係

「副乳がある」と聞くと、乳がんとの関係が気になる方は少なくないかもしれません。

当院でも日本全国から患者さまがいらっしゃっており、高周波超音波で詳しく検査をしております。

結論から言うと、副乳自体は病気ではなく、副乳があること自体が乳がんの発症リスクを高めるわけではありません。

ただし、副乳の中には乳腺組織を含むタイプ(Kajava分類の第1〜4型)があり、その乳腺組織からごく稀に副乳がん(副乳癌/異所性乳癌)が発生することが医学文献で報告されています。

本記事では、副乳と乳がんの違い、副乳がんの発生率、見分け方、受診の目安を形成外科医の視点で解説します。

副乳と乳がんの違い

副乳とは

副乳は、胎児期に消えるはずの「乳腺堤(にゅうせんてい)」の一部が退縮せず残った先天的な組織です。多くは脇の下に現れ、乳腺・乳頭・乳輪のいずれかを含みます。女性の約2〜6%、男性の約1.5〜3.6%にみられ、それ自体は良性の変異です。

乳がんとは

乳がんは乳腺組織にできる悪性腫瘍で、通常の乳房内に発生する場合がほとんどです。日本人女性の生涯罹患率は約9人に1人(約11%)と報告されており、40歳以降で罹患率が上昇します。

両者の主な違い

項目 副乳 乳がん
性質 先天的な良性組織 悪性腫瘍
発生場所 脇〜胸〜鼠径部の「乳腺線」上 通常の乳房内が中心
硬さ 柔らかい〜やや弾力 コリコリ硬い、動きにくい
ホルモンでの変化 生理前・妊娠中に腫れる 基本的に変化しない
成長 ゆっくり、または変化なし 急速に大きくなることがある
皮膚の変化 基本的になし くぼみ・引きつれ・オレンジ皮様変化
分泌物 授乳中は母乳が出ることも 血性分泌物のことがある

副乳がん(副乳癌)の発生率

副乳内に発生するがんを「副乳がん」または「異所性乳癌」と呼びます。全乳がんの中で副乳がんが占める割合は約0.3〜0.6%と非常に稀です。それでも医学文献では継続的に症例報告があり、副乳の中でも乳腺組織を含むタイプ(Kajava第1〜4型)で発生の可能性があります。

副乳がんの発生頻度が低い理由は明確ではありませんが、副乳の乳腺組織量そのものが通常の乳腺よりごく小さいためと考えられています。ただし、副乳があるからこそ通常の乳がん検診では見落とされやすい部位(脇の下)にできる点は、注意すべきポイントです。

副乳と乳がんの見分け方|7つのチェックポイント

自分でできる見分けの目安を7項目にまとめました。1つでも当てはまる場合は診察を受けることをおすすめします。

1. しこりの硬さ

副乳は柔らかい〜やや弾力ある触感ですが、乳がんはコリコリと硬く、周囲組織との境界がわかりにくいのが特徴です。

2. しこりの動き

副乳は皮膚と一緒に動きます。乳がんは深部で固定されて動きにくいことが多く、指で押しても位置が変わりません。

3. ホルモンでの変化

副乳は生理前・妊娠中・授乳中に腫れる・痛むといった変化がありますが、乳がんはホルモン変動に関係なく徐々に大きくなる傾向があります。

4. 成長速度

副乳は基本的に大きくなりません。数週〜数ヶ月で明らかに大きくなるしこりは要注意です。

5. 皮膚の変化

副乳では皮膚に変化は起こりません。乳がんではくぼみ(えくぼ徴候)・引きつれ・オレンジの皮のような凹凸が現れることがあります。

6. 分泌物

授乳中の副乳からは母乳が少量出ることがあります。授乳期以外に血性・褐色の分泌物が出る場合は乳がんの可能性を否定できません。

7. 家族歴・年齢

家族に乳がんの方がいる場合や40歳以降の方は、副乳のしこりでも一度は乳腺外科での確認をおすすめします。BRCA遺伝子変異の家族歴がある方は特に注意が必要です。

こんな場合は必ず受診を

次のいずれかに該当する場合は、副乳と自己判断せず医療機関を受診してください。

  • しこりが急速に大きくなっている(数週〜数ヶ月で明らかな変化)
  • しこりが硬くて動かない
  • 皮膚にくぼみや引きつれがある
  • 授乳期以外に血性・褐色の分泌物がある
  • 脇の下のリンパ節が腫れている
  • 体重減少・寝汗・持続する倦怠感を伴う
  • 乳がんの家族歴がある(母親・姉妹)
  • 40歳以上でしこりの性質を確認したことがない

診断の流れ|副乳がどう判定されるか

皮膚科・形成外科・乳腺外科では次の流れで副乳と乳がんを鑑別します。

1. 触診

しこりの硬さ・動き・境界・大きさを医師が触れて確認します。副乳と乳がんの多くはこの段階で見当がつきます。

2. 超音波検査(エコー)

しこりの内部構造を確認する検査です。副乳は乳腺組織や脂肪組織として写り、悪性を疑う所見(不整な形・後方陰影・血流異常)がないかを確認します。

3. マンモグラフィ

40歳以上の方や、エコーで悪性を疑う所見がある方に行う画像検査です。副乳の中の微細石灰化などを確認します。

4. 針生検・細胞診

画像で悪性が完全に否定できない場合は、しこりから細胞や組織を採取して顕微鏡で調べる検査を行います。

5. 切除生検

針生検で確定しない場合や、切除自体が治療になる場合は、しこりを切除して病理検査に出します。

ほとんどの副乳は触診とエコーで診断がつき、追加の検査は不要です。悪性を疑う所見がある場合のみ精密検査に進みます。

副乳がんが見つかった場合の治療

副乳がんが確定した場合の治療は、通常の乳がんに準じて行われます。

  • 手術:副乳部分の切除+周囲のリンパ節郭清が基本
  • 放射線治療:術後に再発予防で行われることがある
  • 薬物療法:ホルモン療法・化学療法・分子標的治療をがんの性質に応じて選択

副乳がんは早期発見できれば予後が良好なケースが多いですが、脇の下という気づきにくい部位のため、日常的なセルフチェックが重要です。

副乳の方に知っておいてほしいセルフチェック

副乳がある方は、通常の乳房のセルフチェックに加えて、副乳部分も月1回程度触ってみることをおすすめします。

セルフチェックのタイミング

  • 月経後4〜7日目(乳腺の張りが少ない時期)
  • 閉経後の方は毎月同じ日

チェックのポイント

  • 先月と比べて明らかに大きくなっていないか
  • 硬さが変わっていないか
  • 指で押して痛みが変わっていないか
  • 皮膚に変化はないか
  • 脇のリンパ節が腫れていないか

1つでも「あれ?」と感じたら、迷わず皮膚科・形成外科・乳腺外科で診察を受けてください。

よくある質問

Q1. 副乳があると乳がんになりやすいですか?

副乳があること自体が乳がんの発症リスクを高めるという医学的根拠はありません。ただし副乳の中の乳腺組織から副乳がん(全乳がんの0.3〜0.6%)が発生する可能性はごく稀にあります。副乳の有無に関わらず、40歳以降の定期的な乳がん検診を受けることが大切です。

Q2. 副乳を切除すれば乳がんのリスクは下がりますか?

副乳を切除しても、通常の乳房での乳がん発症リスクには影響しません。副乳内の副乳がんリスクは切除でゼロにできますが、そもそもの発生率が非常に稀なため、予防目的だけで切除をおすすめすることはありません。切除を検討する場合は、症状や見た目のお悩みが主な理由になります。

Q3. 副乳のしこりが痛くありません。乳がんの可能性はありますか?

痛みの有無だけでは判断できません。乳がんの多くは初期には痛みが出ないため、「痛くないから安心」とは言えません。触ったときの硬さ・動き・皮膚の変化・分泌物などを総合的に確認する必要があります。40歳以上の方や家族歴のある方は、痛みがなくても一度診察を受けることをおすすめします。

Q4. 妊娠中に副乳が大きくなりました。乳がんではないですか?

妊娠中の副乳の腫大は、妊娠ホルモンで乳腺組織が発達した生理的な変化であることがほとんどです。乳がんは基本的にホルモン変化で急激に変化しないため、妊娠に伴う腫大は副乳のサインである可能性が高いといえます。ただし急速な硬化・皮膚の変化・血性分泌がある場合は診察が必要です。

Q5. 副乳の検査はどこで受けられますか?

皮膚科・形成外科・乳腺外科で診察を受けられます。しこりの性質評価は皮膚科・形成外科でも可能で、悪性を疑う所見があれば乳腺外科への紹介を行います。麹町皮ふ科・形成外科クリニックでは、触診とエコー検査で副乳の評価を行っています。

Q6. 副乳がんの初期症状は何ですか?

副乳がんの初期症状は、脇の下のしこりが徐々に大きくなる・硬くなる・動きが悪くなる・皮膚にくぼみが出るなどです。ただし副乳がんは非常に稀な疾患のため、まずは通常の副乳の可能性を医師と一緒に確認することが第一歩です。

Q7. 副乳がある場合、乳がん検診はどうすればいいですか?

40歳以上の方は、通常の乳がん検診(マンモグラフィ・エコー)を2年に1回受けることが推奨されています。副乳がある方は、検診時に医師に副乳の存在を伝え、脇の下も含めて確認してもらうと安心です。副乳の変化が気になる時期は、検診の間隔にとらわれず随時受診してください。

まとめ|副乳と乳がんは別物、正しい知識で安心を

副乳は先天的な良性の変異であり、副乳があるだけで乳がんの発症リスクが高くなるわけではありません。ただし副乳内の乳腺組織からごく稀に副乳がんが発生する可能性はあるため、セルフチェックと必要に応じた受診で早期発見に努めることが大切です。

関連記事もご参考ください。

麹町皮ふ科・形成外科クリニックでは、形成外科専門医が触診とエコー検査で副乳のしこりを評価します。悪性を疑う所見があれば乳腺外科への紹介も行います。脇のしこりで不安がある方はお気軽にご相談ください。

References

診察・ご予約のご案内

麹町皮ふ科・形成外科クリニック

  • 院長:苅部 淳(形成外科専門医)
  • 診療科目:皮膚科・形成外科(保険診療/自由診療)
  • 住所:〒102-0093 東京都千代田区平河町1-4-5 平和第一ビル地下1階
  • 電話:03-6261-2458
  • LINE予約:https://lin.ee/8UM3xjw
  • アクセス:東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」3番出口 徒歩3分/有楽町線「麹町駅」1番出口 徒歩5分/南北線・有楽町線「永田町駅」9a出口 徒歩5分

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