眼瞼下垂は保険適用になる?費用相場や治療法を解説

「最近まぶたが重く、目を開けにくい」
「慢性的な肩こりや頭痛の原因がわからない」

このように感じたことはありませんか?
目が開きにくかったり、まぶたがさがっていたりすると不安に思いますよね。

もしかするとその症状は、「眼瞼下垂症」かもしれません。

この記事では、眼瞼下垂症とはどのような症状があらわれ、原因はどのようなものなのか解説していきます。

あわせて眼瞼下垂症と診断された場合、保険適用で治療を受けられるのか、費用はどれくらいかかるのかも説明しています。

治療を検討されている方は今後の参考になるはずですので、ぜひ最後までお読みください。

眼瞼下垂とは

「眼瞼下垂」とは、なんらかの原因によりまぶたがさがることで黒目を隠し、前が見にくくなる状態のことをいいます。

原因はさまざまですが、目のまわりの筋肉や腱膜の伸びや断裂であったり、神経に異常をきたしている病気の場合もあります。

そのため、ひとことに「眼瞼下垂症」といっても複数の種類があるため、治すためにはまず根本的な原因を判明させなければなりません。

症状の重さも軽症・中等症・重症にわかれており、人によって異なります。
さらに眼瞼下垂と診断される症状のひとつである、「まぶたがさがり黒目を隠す」以外にも、随伴症状とよばれる不快な症状が伴う場合もあります。

治療するにはしっかりと状態を見極めてもらう必要があるため、クリニックへの受診がかかせません。

眼瞼下垂の症状

眼瞼とは「まぶた」のことであり、下垂は「たれさがること」を意味しており、眼瞼下垂とは文字通りの症状です。
しかし、症状はそれだけではありません。

まぶたが「たれさがる」ことにくわえて、別の症状もあらわれます。

以下に眼瞼下垂の5つの症状をまとめています。

・まぶたが重く目を開けにくい
・額のシワが深くなる
・頭痛がする
・肩・首が凝る
・体がだるくなる

それぞれの原因を解説していますので、ひとつずつ確認していきましょう。

まぶたが重く目を開けにくい

目を開けようとしても、まぶたがうまく上がらず目を開けにくいため、視野が狭くなります。

まぶたを持ち上げる際に使用している筋肉を眼瞼挙筋といいますが、通常この眼瞼挙筋が収縮しまぶたの先端にある眼瞼をもちあげ、目を開けています。

しかし老化や外傷によりその筋肉が弱まったり、眼瞼とつながっている腱膜がうまく機能しなかったりすると、まぶたがもちあがりません。

そのため目を開けるのに必要以上の力が必要となり、目まぶたが重いと感じるのです。

「まぶたが重く目を開けにくい」ことは、眼瞼下垂の中でもっとも認知されている症状ともいえます。

額のシワが深くなる

眼瞼下垂は、見た目の問題として額のシワが目立つようになります。

通常は眼瞼挙筋を使いまぶたをもちあげていますが、それだけでは目を開けるのが困難になり、おでこにある前頭筋を使いまぶたをもちあげようとします。

前頭筋を使うことにより自然と眉毛がもちあがり、おでこにシワがよってしまうのです。

たとえば、驚いたときを想像してみるとわかりやすいでしょう。
咄嗟に目を大きく開くと額にシワがよりますよね。
その状態がずっと続いていると考えていただければ、おでこのシワが深くなるのも頷けるでしょう。

眼瞼下垂の症状は黒目を隠すことによる視界不良だけでなく、額にシワがよることで老けて見えることもあるのです。

頭痛がする

眼瞼下垂の症状として、意外にも思われますが頭痛の症状があります。

まぶたを持ち上げる際に前頭筋を使ったり、前を見るために姿勢が悪くなったりするからです。

前頭筋に過度な力がかかり、常に筋肉の緊張を続けた結果、慢性的な頭痛を引き起こすといわれています。

通常は筋肉や神経などがうまくバランスを保ちながらまぶたの開閉をしていますが、どこかに不具合が発生すると、偏って負荷がかかり体に不調をきたします。

眼瞼下垂はまぶたがさがったり、視野が狭くなったりする症状以外にも、多数の不快な症状がでてくるのです。

肩・首が凝る

眼瞼下垂により肩や首の凝りを引き起こす場合があります。

まぶたが瞳を隠すことにより視野が狭くなるため、物を見る姿勢が悪くなるからです。

たとえば前が見にくく顎を前に突き出す姿勢をとると、首から背中にかけてつながっている僧帽筋が収縮します。

この僧帽筋は、肩こりに大きくかかわっている筋肉のため、収縮を続けることで肩や首が凝りやすくなります。

まぶたがさがっていることにより、ものを見る姿勢が悪くなることで生じる症状のひとつです。

体がだるくなる

まぶたをもちあげようと筋肉に力がかかることで、だるさを感じたり倦怠感が続いたりする症状もでてきます。

眼瞼下垂はまぶたがさがった状態であるため、目を開くには力をいれる必要があり、そのせいで交感神経が刺激され体が緊張します。
その緊張状態が続くことによりだるさを感じたり、倦怠感が続いたりするのです。

普段は意識せずにまぶたをあげているため、「目を開けるのに力が必要」とは、どのような状態かわかりにくいかと思います。

たとえば眉毛をもちあげた状態で維持してみてください。
この状態を継続するためには眉毛あたりに力をいれている必要があるため、非常に疲れを感じるかと思います。

「体がだるくなる」原因は、筋肉の緊張状態が毎日続くことにより、目の疲労から全身疲労につながることなのです。

眼瞼下垂の原因

眼瞼下垂の原因はさまざまです。

筋肉や腱膜の異常、または神経の病気など多岐にわたります。
今回は大きく3つにわけて説明していきます。

先天性の眼瞼下垂
後天性の眼瞼下垂
偽眼瞼下垂

 

それぞれ原因が異なりますので、ひとつずつ見ていきましょう。

先天性の眼瞼下垂

先天性眼瞼下垂とは、生まれつきまぶたが たれさがっている状態です。

原因は、主に眼瞼挙筋の発達が未熟であることですが、それ以外にも神経の異常が原因の場合もあります。
また片側性、両側性とありますが、多くは片側性です。

先天性眼瞼下垂で注意しなければいけないのは、視力の発達を妨げる恐れがある点です。

多くの場合は急いで手術をする必要はありませんが、視野の狭窄によりものを見にくい状態が続くと視力の発達に影響を及ぼします。

子どもの視力は1〜3歳頃に急成長し、6歳頃に完成するといわれていますので、その間に目でものを見る力を育てなければ、弱視になる恐れがあります。

もし子どものまぶたが さがっているかもしれないと気になった場合は、早期に病院を受診しましょう。

後天性の眼瞼下垂

後天性眼瞼下垂とは、生まれたときは正常であっても、あとからまぶたが さがってくる状態です。

眼瞼挙筋や腱膜の問題であったり、これらは正常であっても神経に異常のある別の病気であったり、理由はさまざまです。

後天性の場合、多くの原因は「腱膜性眼瞼下垂」といわれています。

眼瞼挙筋は途中から挙筋腱膜いわれる薄い腱膜となり、まぶたの先端にある瞼板とつながっています。

腱膜性眼瞼下垂は腱膜が緩んでしまったり、腱膜と瞼板とのつながりが切れてしまったりし、うまくもちあげられなくなった状態です。

主に原因は加齢であることも多いですが、他にもハードコンタクトレンズの着脱により腱膜を傷つけてしまったり、女性であればアイメイクによる目への刺激が原因の場合もあります。

後天性の眼瞼下垂は理由が複数あるため、治療には原因の特定が不可欠です。

偽眼瞼下垂

偽眼瞼下垂とは、実際には目を開く力があっても、皮膚のたるみによってまぶたが黒目にかかっている状態です。

まぶたを動かす筋肉には異常がなく、原因が皮膚であるため、眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)ともよばれています。

加齢に伴い、皮膚がたるんでしまうのは仕方のないことです。
年齢とともに偽眼瞼下垂が発症することは多くありますが、同時に腱膜性眼瞼下垂になっている場合も多くありますので、医師の診察がかかせません。

目を開けにくい原因は皮膚がたるんでいるからだと自己判断せず、病院にかかり正確な診断を受けましょう。

眼瞼下垂が保険適用となる条件

眼瞼下垂症の手術を保険適用で受ける場合、条件はいくつかありますが明確に基準が数値化されている訳ではありません。
そのため、医師により保険適用の判断も異なる場合があります。

保険適用の条件として以下に3つあげます。

医師から「眼瞼下垂」と診断されていること。
目を開けにくいことで日常生活に支障がでていること。
まぶたがさがり、視野が狭くなっていること。

上記にあげた条件の場合、眼瞼下垂としては中等度~重度の症状基準にあてはまります。
ですが、軽度であっても保険適用で手術を受けられる場合があります。

ある程度視野確保ができていても、ものを見るため常に顎を上げている状態であったり、まぶたを持ち上げるために眉毛に力をいれている必要があり、肩こりや頭痛が発生している場合です。

眼瞼下垂の手術が保険適用になるかどうかは医師の判断に委ねられているため、実際に自身の症状が該当するか気になる方は、一度形成外科に相談してみてください。

眼瞼下垂の手術費用の相場

眼瞼下垂の手術を受ける際、費用が気になるかと思います。

この章では以下2つにわけて解説していきます。

保険適用の場合
保険が適応ではない自費診療の場合

保険診療や自費診療のそれぞれのメリットや、費用を解説していますので見ていきましょう。

保険適用の場合

眼瞼下垂症の手術の場合、保険適用で受けられる手術はいくつかあります。
ですが保険適用で手術する場合、医学的に治療が必要と判断され、かつ治療内容に制限のある中からの選択が必要です。

今回は、以下に4つの手術方法と特徴、あわせて費用も説明しています。
また受けられるものによって異なりますが、手術時間は約1〜2時間程度です。

・眼瞼挙筋前転法
まぶたを切開し、緩んだ挙筋腱膜を目の開く場所で縫い留める手術
・挙筋短縮法
まぶたを切開し、伸びた筋膜を短くカットし縫い留める手術
・筋膜移植法(前頭筋吊り上げ術)
太ももや側頭部から採取した筋膜で、前頭筋と瞼板をつなぐ手術
・眉毛下皮膚切除術
眉下の皮膚をカットし、たるんだ皮膚を取り除く手術

手術名3割負担のおよその費用(片目)
眼瞼挙筋前転法約22,000円
挙筋短縮法約22,000円
筋膜移植法

(前頭筋吊り上げ術)

約56,000円
眉毛下皮膚切除術約18,000円

※別途、診察代・薬代などかかります。

保険適用の場合は皮膚の切開が必要ですので、切らない治療を希望される場合は自費での診療となります。

自費診療に比べて自由はききませんが、自身のQOL(Quality Of Life)を向上させるには保険適用の手術で十分かと思います。

医師の判断で可能と判断された場合、費用面のみで考えると保険適用の手術がよいといえるでしょう。

保険が適応ではない自費診療の場合

保険が適応ではない自費診療の手術相場は、クリニックにより異なりますが200,000〜600,000円程度です。

眼瞼下垂は病気ですので、基本的には保険適用で手術を受けられます。
ただし自分好みの見た目に仕上げたいなど、美容的な意味を含む場合は保険適用での手術は受けられません。
また、眼瞼下垂の程度が軽症と診断され、保険適用での手術対象外といわれた人も自費診療であれば手術を受けられます。

自費診療は保険適用での手術より費用はかかりますが、自分好みの外見を希望できます。
たとえば、「二重幅を自分で決めたい」や「皮膚のたるみをしっかりとりたい」などです。

保険適用での手術でも、ある程度の相談はできますが、あくまでも「病気の治療」が目的であるため、細かい指定はできません。

まぶたが目にかからないなど機能的な問題の改善にくわえて、美容面を意識したい方は自費診療での手術がおすすめです。

眼瞼下垂の治療方法

眼瞼下垂の治療は、手術が基本です。

理由として眼瞼下垂は筋肉の衰えや、眼瞼につながっている腱膜が緩んだり、はずれてしまうことにあるため、服薬やマッサージなどで改善できるものではないからです。

また、多くの場合は筋肉や腱膜の伸びなどが原因ではありますが、一部はまったく別の疾患でまぶたをもちあげられずに眼瞼下垂になっている場合もあります。

たとえば脳動脈瘤や脳梗塞による動眼神経麻痺であったり、神経と筋肉のつなぎ目に異常がある重症筋無力症などがあげられます。
このような、まぶたのまわりの筋肉や腱膜に異常がなく別の疾患であった場合は、もちろん眼瞼下垂の手術では改善がみられませんので注意が必要です。

そのような別の疾患ではなく、眼瞼下垂症であった場合は、手術で症状の改善が期待できます。

眼瞼下垂かも?と思ったら形成外科へ

自身の症状をチェックし、眼瞼下垂かもしれないと思った場合は形成外科を受診しましょう。

まぶたがさがっている状態は、目のまわりの異常であることには違いないため、眼科の受診を検討する方も多くいると思います。
たしかに眼科でも診察はおこなっていますので、眼瞼下垂と診断すること自体は可能でしょう。

しかし、実際に眼瞼下垂と診断後に治療を望んだ場合、外科的な手術をおこなっていない眼科も多々あります。

そのため眼瞼下垂の診断〜手術まで一貫して診察可能な、形成外科の受診がおすすめです。

「眼瞼下垂かもしれないが、何科にいけばよいかわからない」と悩んでいる方は、形成外科へ受診し相談してみましょう。

監修医師

苅部 淳Karibe Jun理事長

苅部 淳 日本形成外科学会形成外科専門医
略 歴
順天堂大学医学部卒業
東京大学附属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
福島県立医大付属病院 形成外科
寿泉堂総合病院 形成外科
山梨大学附属病院形成外科 助教・医局長
東京大学附属病院 精神科
専 門
日本形成外科学会形成外科専門医
日本抗加齢学会専門医
日本医師会認定産業医
専門分野
形成外科一般、マイクロサージャリー、リンパ管吻合術、乳房再建術、性適合手術、美容外科手術、静脈瘤、レーザー治療など。
美容外科手術、レーザー、ボトックス、ヒアルロン酸等
大手美容外科クリニックで長年にわたり研鑽を積み、形成外科専門医として医師の診療、指導にあたっている。

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