【高齢者の乾燥湿疹】対処法と原因・セルフケアを解説

高齢者の乾燥湿疹とは?症状の特徴と見分け方

「お母さんの腕や足がひどく乾燥して、かゆがっている」「高齢の父が冬になると全身を搔きむしってしまう」――こうした悩みを抱えるご家族や、ご本人から寄せられるご相談は、皮膚科の現場でも非常に多く見られます。

高齢者に起こりやすい「乾燥湿疹(かんそうしっしん)」は、肌の保湿力が低下した状態で引き起こされる皮膚炎の一種です。放置すると夜も眠れないほどの強いかゆみに発展することがあり、生活の質を大きく下げてしまいます。

この記事では、高齢者の乾燥湿疹の症状の特徴・原因・自宅でできるセルフケア・皮膚科を受診すべきタイミング・治療法の選択肢まで、わかりやすく解説します。「どこから手をつければよいかわからない」という方にも、すぐ実践できる情報をお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

乾燥湿疹とはどんな皮膚トラブルか

乾燥湿疹(皮脂欠乏性湿疹)の基本

乾燥湿疹は、医学用語では「皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)」または「乾皮症(かんぴしょう)に伴う湿疹」とも呼ばれます。皮膚の表面を守る皮脂や天然保湿因子(NMF)、セラミドなどが不足し、バリア機能が壊れることで炎症が起きた状態です。

単なる「乾燥」の段階では皮膚がカサカサしてひび割れる程度ですが、炎症が加わると赤み・かゆみ・小さな湿疹(ブツブツ)が現れ、湿疹へと進行します。湿疹になると搔きこわしにより皮膚がさらに傷つき、さらにかゆくなるという「痒疹サイクル(かゆみの悪循環)」に陥りやすくなります。

高齢者に多い理由

加齢とともに皮脂腺の分泌量は低下し、角質層の水分保持能力も落ちていきます。60代を過ぎると皮膚のバリア機能が若年時に比べて著しく低下することが知られており、乾燥湿疹は高齢者にとって非常に身近な皮膚トラブルです。

特に空気が乾燥する秋〜冬にかけて症状が出やすく、すねや太もも・腕の内側・お腹・背中などに好発します。かゆみが強くなる夜間は特につらく感じられることが多いです。

高齢者の乾燥湿疹の主な症状

  • 皮膚のカサつき・粉ふき:角質がはがれ落ち、白い粉がふいたように見える
  • 細かなひび割れ:すね・足首・手の甲などに亀裂が入る
  • 赤み・炎症:搔いた部分や乾燥の強い箇所が赤くなる
  • 小さなブツブツ(丘疹):湿疹が進行するとプツプツとした発疹が現れる
  • 強いかゆみ:特に入浴後や就寝時に悪化しやすい
  • 搔きこわしによる傷・かさぶた:繰り返し搔くことで皮膚が厚くなる(苔癬化)ことも

これらの症状は「ただの乾燥だろう」と見過ごされがちですが、炎症が広がると治療に時間がかかるため、早めのケアと適切な受診が大切です。

高齢者の乾燥湿疹の原因として考えられること

加齢による皮膚バリア機能の低下

前述のとおり、年齢を重ねると皮脂の分泌量が減り、角質層のセラミドや天然保湿因子が不足します。これによって皮膚内部の水分が蒸発しやすくなり、少しの刺激でも炎症が起きやすい状態になります。

また、高齢者の皮膚は細胞の代謝(ターンオーバー)が遅くなるため、傷ついたバリア機能の回復にも時間がかかります。

環境的な要因

暖房による室内の乾燥、入浴時の過度なこすり洗い、アルカリ性の強い石けんの使用などは、もともと乾燥しやすい高齢者の肌をさらに痛める原因になります。冬場は外気の湿度も下がるため、室内外のダブルの乾燥ストレスがかかります。

生活習慣・栄養状態の影響

皮膚を健やかに保つには、食事からの栄養摂取も重要です。特に以下の栄養素は皮膚バリアの維持に関わるとされています。

  • 必須脂肪酸(オメガ3・6):青魚・えごま油・亜麻仁油などに含まれ、皮膚の脂質バリアの原料になる
  • ビタミンA:レバー・にんじん・かぼちゃに含まれ、皮膚の細胞の正常な分化をサポート
  • ビタミンE:ナッツ類・アボカドに含まれ、抗酸化作用で皮膚の老化を抑える
  • 亜鉛:牡蠣・豆腐・豚肉に含まれ、皮膚の再生に欠かせないミネラル
  • たんぱく質:コラーゲンの原料となるため不足しないよう注意

高齢になると食が細くなりがちで、これらの栄養素が慢性的に不足するケースもあります。バランスのよい食事を心がけることが皮膚環境の改善にもつながります。

腸内環境と皮膚の関係

近年、腸と皮膚は密接に関連していることが研究で示されており(「腸皮膚軸」とも呼ばれます)、腸内細菌のバランスが乱れると皮膚の炎症が起きやすくなるとも言われています。高齢者は腸内の善玉菌が減りやすいため、食物繊維を多く含む野菜・海藻類や、発酵食品(ヨーグルト・味噌・納豆)を日常的に取り入れることが、皮膚環境を整える一助になる可能性があります。

睡眠・ストレスの影響

睡眠中は皮膚のバリア機能を修復するための成長ホルモンが分泌されます。睡眠不足や強いストレスが続くと免疫バランスが崩れ、皮膚の炎症が悪化しやすくなります。高齢者は睡眠が浅くなりやすいため、良質な睡眠を確保する生活リズムの維持も大切です。

自宅でできるセルフケアと日常の注意点

保湿を徹底する

乾燥湿疹のセルフケアの基本は「保湿」です。入浴後15分以内(皮膚にまだ潤いが残っているうち)に保湿剤を全身に塗るのが効果的とされています。ヘパリン類似物質配合のクリームや尿素配合の保湿剤は薬局でも購入できますが、種類や使い方については薬剤師にご相談ください。

特にすね・太もも・腕・背中など乾燥しやすい部位は、1日2回以上の保湿が望ましいです。塗る際は擦らず、手のひらで優しく押さえるように伸ばすのがポイントです。

入浴時の正しいケア

熱いお湯は皮脂を奪い、乾燥を悪化させます。38〜40℃程度のぬるめのお湯が推奨されます。また、タオルで強く身体をこするのは禁物です。泡立てたボディソープを手またはやわらかいタオルでなでるように洗い、シャワーで丁寧に流しましょう。

入浴後は柔らかいタオルで押さえるように水分を拭き取り、すぐに保湿剤を塗るルーティンを習慣にしてください。

室内の湿度を管理する

暖房を使う季節は、加湿器を活用して室内湿度を50〜60%程度に保つことが皮膚の乾燥予防に役立ちます。就寝時も加湿器を使うか、濡れタオルを置くだけでも湿度の維持に効果的です。

衣類の素材選び

ウールや化学繊維などの刺激が強い素材は、乾燥湿疹の部位を刺激してかゆみを悪化させることがあります。肌に直接触れる下着や寝衣はコットン(綿)や絹など、肌への刺激が少ない素材を選ぶと良いでしょう。

搔くことを避ける工夫

搔くとさらに皮膚が傷つき炎症が広がります。就寝時は薄い綿の手袋をつける、かゆい部分を冷やすなどして搔く行為を防ぐ工夫をしましょう。冷却は血管を収縮させてかゆみ感覚を和らげる効果があるとされています。

皮膚科を受診すべきタイミング

以下のような状態が見られる場合は、自己判断のセルフケアだけで対処するのは難しい可能性があります。早めに皮膚科の受診を検討しましょう。

  • かゆみが強く夜眠れない、または睡眠を妨げるほどの症状が続く
  • 保湿剤を2週間ほど使用しても改善しない
  • 赤みや湿疹が広範囲に広がっている
  • 搔きこわして皮膚から滲出液(じゅくじゅく)が出ている
  • 皮膚が厚くなって盛り上がってきた(苔癬化)
  • 症状が顔・頭皮・手のひら・足の裏など特殊な部位にも出ている
  • 全身に症状が急激に広がった

また、「乾燥湿疹と思っていたら実は疥癬(かいせん)だった」「アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎だった」というケースも少なくありません。特に高齢者施設への入居歴がある方や、家族に同様のかゆみがある場合は、専門医に診てもらうことが重要です。

皮膚科での主な治療法

ステロイド外用薬

炎症を抑えるための基本的な治療薬です。かゆみや赤みの程度・部位に合わせて強さの異なるランクのステロイドを選択します。正しく使えば安全性の高い薬ですが、自己判断での長期使用は避け、医師の指示のもとで使用することが大切です。

非ステロイド系外用薬・タクロリムス軟膏

ステロイドが使いにくい部位(顔周辺など)や、長期管理が必要な場合に使用されることがあります。ただし、乾燥湿疹では主に保湿と炎症コントロールが中心になるため、症状や部位に応じて医師が適切な薬剤を選択します。

よくある質問

高齢者の乾燥湿疹は自然に治りますか?

軽度の乾燥であれば、適切な保湿や生活習慣の見直しで改善することがあります。ただし、赤みや強いかゆみが出ている場合は炎症が起きている可能性があり、自然に改善しにくいこともあります。

乾燥湿疹とアトピー性皮膚炎の違いは何ですか?

乾燥湿疹は加齢や皮膚の乾燥が主な原因となることが多く、高齢者に多くみられます。一方、アトピー性皮膚炎は体質や免疫反応が関係する慢性的な炎症性疾患です。症状だけで区別が難しいこともあるため、自己判断は避けた方が安心です。

市販の保湿剤だけでも改善しますか?

症状が軽度であれば、市販の保湿剤で改善する場合もあります。ただし、赤み・湿疹・強いかゆみがある場合は、保湿だけでは不十分なケースもあります。

乾燥湿疹でお風呂は控えた方が良いですか?

入浴自体は問題ありません。ただし、熱すぎるお湯や長時間の入浴、強いこすり洗いは乾燥を悪化させる可能性があります。38〜40℃程度のぬるめのお湯がおすすめです。

高齢者の全身のかゆみは乾燥湿疹以外の病気の可能性もありますか?

あります。乾燥湿疹以外にも、疥癬、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、腎機能障害、肝機能障害などが原因になることもあります。全身に急激に広がる場合や、保湿をしても改善しない場合は受診を検討しましょう。

監修医師

苅部 淳Karibe Jun理事長

苅部 淳 形成外科専門医・麹町皮ふ科形成外科クリニック理事長
略 歴
順天堂大学医学部卒業
東京大学附属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
福島県立医大付属病院 形成外科
寿泉堂総合病院 形成外科
山梨大学附属病院形成外科 助教・医局長
東京大学附属病院 精神科
資 格
日本形成外科学会 形成外科専門医
日本抗加齢学会 専門医
日本医師会認定産業医
アラガン社 ボツリヌス注射 VST認定医
アラガン社 ヒアルロン酸 VST認定医
スリランカにてアーユルヴェーダを学ぶ
所属学会
日本形成外科学会 / 日本美容外科学会(JSAPS) / 日本美容皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会 / 日本再生医療学会 / アメリカ形成外科学会 / アメリカ抗加齢医学会 / 日本東洋医学会 / 日本人類遺伝学会 / GID学会 / 日本マインドフルネス学会 ほか
受 賞
東京大学形成外科 最優秀賞(2016年)
日本形成外科学会 優秀賞(2018年)
ASPS(アメリカ形成外科学会)優秀演題発表(2018年)
英語での学会発表・国際学術活動(海外学会での研究発表多数)
得意施術
【美容外科】目の下のクマ取り(裏ハムラ法)・忘れ鼻形成・タレ目形成・二重手術(埋没法)・目尻靭帯移動術・鼻の手術・性適合手術・乳房再建術・静脈瘤手術
【美容皮膚科・機器治療】HIFU(ハイフ)によるたるみ治療・ボルニューマ・Morpheus 8(モフィウス)・エンブレイスRF(高周波たるみ治療)・ボトックス・ヒアルロン酸・ICI療法(ED治療)・ピコレーザー・CO2フラクショナルレーザー・ダーマペン
取り組み
外見のケアだけでなく、食事・運動・睡眠など生活習慣の見直しから内側を整える「予防医療」に注力。オーソモレキュラー栄養療法・遺伝子検査(ダイエット遺伝子・アルコール感受性)・腸内細菌検査(マイキンソー)を取り入れ、体質に合ったオーダーメイドの健康アプローチを提供。サプリメント(NMN等)や点滴療法も提案している。英語による診療・美容施術カウンセリングにも対応。英語での国際学会発表も行っており、海外の学術情報を継続的に診療へ反映している。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
参考:公益社団法人 日本皮膚科学会厚生労働省

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