薬を使用しない不眠治療について

不眠症の治療のひとつとして睡眠薬があります。ただ、睡眠薬は依存性があったり、反跳性不眠があったりと服用や減薬する際には気をつけなければなりません。そのため、可能であれば非薬物療法で生活習慣の改善を行うことで不眠症の改善を目指すのが望ましいです。そこで、本記事では薬を使わない不眠症の治療法について解説します。

睡眠薬は正しい使い方をすれば十分な睡眠をとるサポートになりますが、不眠症治療の最終目標は薬なしでも十分な睡眠がとれる状態になることです。そのため、できるだけ睡眠薬の服用を抑え、症状を見ながら減薬していかなくてはなりません。ただし、自己判断で急に減薬したり、服用の中止をしたりすると離脱症状が起こってしまうので避けましょう。離脱症状は「不眠症の症状が重くなる」「不安を強く感じる」などがあります。

減薬のスケジュールとは

症状は個人差があるので多少の違いはありますが、一般的には十分な睡眠がとれる範囲内で1~2週間ほどかけて減薬を行います。減薬する量も様子を見ながら4分の1~2分の1程度と少しずつ減らし、それに慣れたら次は服用を1日おきにするなど薬を飲まない日を作る段階です。薬を飲まない期間を徐々に長くし、最終的には完全に睡眠薬なしで眠れる状態にします。

睡眠前のカフェインの摂取には注意

カフェインは覚醒作用があるため、睡眠前には摂取しないようにと聞いたことがある人もいるかもしれません。カフェインの覚醒作用の持続時間はおよそ8~14時間、多く摂取してしまうと夜眠れなくなってしまうのも無理はないというわけです。睡眠のことを考慮するのであれば、カフェインを多く含む食べ物や飲み物は少なくとも眠る4時間前からは摂取しないほうが無難でしょう。カフェインを含むものを挙げますと、たとえば、コーヒー、紅茶、日本茶などの飲み物、チョコレートなどがあります。

睡眠薬の減薬をはじめた際には非薬物治療として、食事指導(栄養療法)やサプリメントの摂取、高濃度ビタミンC点滴、アロマオイルやハーブティでリラックス効果を得るといった方法をとります。

食事指導(栄養療法)

毎日の食事から睡眠に効果を期待できる栄養素を摂取することも重要な治療のひとつです。セロトニンは幸せホルモンと呼ばれており、リラックス効果があるといわれています。脳が緊張やストレスを感じたときに自律神経のバランスを整えるために多く分泌されますが、セロトニンを作り出すために摂取しておきたいのが必須アミノ酸のトリプトファンです。ただ、トリプトファンは外から摂取するしかないため、毎日の食事から積極的に摂取するのが望ましいです。トリプトファンを多く含む食べ物は豆腐や納豆のような大豆製品、牛乳やヨーグルトといった乳製品、お米やバナナなどです。なかなか食事を見直す機会がない、どんな栄養が不足しているかわからない人は、当院のオーソモレキュラー栄養療法がおすすめです。専門の医師が、栄養状態を調べ不眠の原因にあわせたサプリメントや食事指導を行います。近年、栄養療法が医療業界でも注目されており、食事や生活習慣から不調の根本的原因を治療していくことが注目されています。

 

睡眠をサプリメントで摂取

睡眠や覚醒をコントロールしているホルモン「メラトニン」をサプリメントから摂取するのも良いでしょう。メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、簡単にいえば人間の体内時計です。眠る1時間ほど前にメラトニンを摂取しておけば、十分な睡眠をとることが期待できます。メラトニンは依存性がなく、睡眠薬を飲むよりも安全です。

GABAの摂取も睡眠のサポートとしておすすめです。GABAは脳の興奮を抑える神経伝達物質で体内で作られています。しかし、ストレスなどが原因で多く消費され、不足してしまうことも珍しくありません。そこで、体外からもサプリや食べ物などで取り入れることが大切です。食べ物であれば発芽玄米や味噌、野菜などに多く含まれています。GABAを過剰摂取したことによる副作用は報告がありません。一般的には、1日あたり50~100mgほどの摂取が良いとされています。食事だけで十分な摂取ができないときはサプリから摂取するという方法もあります。

高濃度ビタミンC点滴

ストレス過多になると、それに対抗するためにアドレナリンが大量に分泌されます。アドレナリンを作り出す際に必要なのがビタミンCです。点滴によって高濃度のビタミンCを摂取すると、短時間で全身にビタミンCを行き渡らせることにつながります。点滴をする頻度は個人差もありますが、一般的には2週間に1回ほどです。当院の高濃度ビタミンC点滴は防腐剤不使用の安全性の高いビタミンCを使用しております。日焼けをしやすい方、疲れやすい方、免疫力をあげたい方にもおすすめです。

 

アロマオイルやハーブティーでリラックス

自宅で簡単にできることとして、アロマオイルを使用したり、ハーブティーを飲んだりという方法が挙げられます。不眠症に効果を期待できるアロマオイルはラベンダーやベルガモット、サンダルウッド、マンダリンなどです。ディフューザーやアロマポットにアロマオイルを数滴たらし、寝室に香りを広げてから眠ります。また、お風呂にアロマオイルを3~4滴程度たらして混ぜてから入浴するのもおすすめです。ハーブティーは気分を落ち着けるカモミールやオレンジブロッサム、ローズといったものがあります。好きな香りのものを選べば、よりリラックスして過ごせるでしょう。ただ、妊娠中には向かないハーブもありますので、あらかじめ確認をしておくことが大切です。

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監修医師

今野 裕之Konno Hiroyuki

今野 裕之 日本精神神経学会精神科専門医
略 歴
順天堂大学大学院卒業。
老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。 日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニック開院。
各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。
認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事就任。2019年より現職。
著書に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」、その他監修など多数。
美咲クリニック顧問
瞳美容研究所ドクター
予防医療研究協会理事
専 門
博士(医学)
精神保健指定医
日本精神神経学会精神科専門医
日本精神神経学会認知症診療医
日本抗加齢医学会専門医
リコード法(米国発のアルツハイマー病の統合治療プログラム)認定医

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