男性にも副乳はある|まず知っておきたいこと
「副乳」というと女性特有のものと思われがちですが、男性にも一定の割合で存在します。日本人男性を対象とした古い報告では、4,000人中145人(約3.6%)に副乳がみられたとされ、決して珍しいものではありません。
男性の副乳は女性に比べて症状が乏しく、多くは「脇の下や胸に小さなできものがある」「乳輪状の色素沈着がある」など、見た目の悩みで気づかれます。本記事では、男性の副乳の発生率・原因・見た目の特徴・治療法・女性との違いを、形成外科医の視点で解説します。
男性の副乳の発生率|男の副乳の確率は?
男性の副乳の発生率は、報告により幅がありますが日本人男性で約1.5〜3.6%と考えられています。
- 日本人男性を対象とした古い報告:4,000人中145人(約3.6%)
- 諸外国の一般集団調査:1〜2%前後
- アジア人男性はやや高い頻度で報告される傾向
つまり日本人男性のおよそ30〜60人に1人に副乳があると考えられます。女性の約2〜6%(15〜50人に1人)よりは低いものの、決して稀ではありません。
男性の副乳ができる原因
男性の副乳の原因は、女性と同じく胎児期に消えるはずの乳腺堤の一部が残ったことによる先天的な変異です。乳腺堤は胎生6週ごろに脇の下から鼠径部にかけて左右一対に現れ、通常は妊娠9週ごろまでに退縮しますが、その一部が残ることで副乳となります。
男性の副乳は乳腺組織の発達が乏しいのが特徴で、多くは第4型(乳腺のみ)や第6型(副乳頭のみ)といった組織量の少ないタイプに分類されます。ホルモンで発達しにくいため、生涯を通して大きさや形が大きく変化しないケースがほとんどです。
遺伝の関与
家族内で副乳が複数人にみられる報告があり、遺伝的な要素は男性の副乳にも関与するとされています。ただし必ず遺伝するわけではなく、父親や兄弟に副乳がなくても副乳ができるケースは多くあります。
男性の副乳の見た目と症状
できる場所
男性の副乳のほとんどは脇の下にできますが、まれに胸部や下腹部、鼠径部にできることもあります。ちょうど乳腺線に沿った位置が特徴です。
見た目の特徴
- 小さな盛り上がり(乳頭状の突起)
- 周囲の肌より少し濃い褐色〜灰色の色素沈着
- 大きさは数ミリ〜1cm程度がほとんど
- ほくろやイボと間違われることがある(第6型:副乳頭のみ)
症状
男性の副乳は乳腺組織が少ないため、痛みや腫れといった症状はほとんど出ません。多くは以下の理由で気づかれます。
- 入浴時や着替え時に「脇に小さなできものがある」と発見
- 皮膚科・美容皮膚科でほくろ相談の際に指摘される
- 健康診断や職場検診で医師から指摘される
- 思春期以降にわずかに膨らんできて気づく
男の子の副乳|子供に見つかった場合
男の子の副乳は乳児期〜幼児期に発見されることもあります。多くは母親が入浴時に気づいて相談されるケースです。
放置しても大丈夫?
男の子の副乳は健康上の問題を起こすことがほとんどなく、成長とともに大きくなることも少ないため、基本的に経過観察で問題ありません。思春期にホルモン変化でわずかに膨らむ場合はありますが、女性のように張って痛むといった症状は稀です。
切除を考えるタイミング
小学校高学年〜中学生になり、本人が見た目を気にする場合は形成外科での相談が可能です。切除は原則自由診療で、日帰りの局所麻酔手術で対応できます。ただし未成年は保護者の同意が必要です。
男性の副乳と女性の副乳の5つの違い
| 項目 | 女性の副乳 | 男性の副乳 |
| 発生率 | 約2〜6% | 約1.5〜3.6% |
| 症状 | 痛み・腫れ・張り(ホルモン反応) | ほとんど無症状 |
| 妊娠授乳での変化 | 大きく膨らむ・母乳が出る | 該当なし |
| 典型的なタイプ | 第1〜4型(乳腺あり)が多い | 第4型・第6型(乳腺少ない)が多い |
| 保険適用可能性 | 症状があれば適用 | 症状ない場合が多く自費が中心 |
男性の副乳の治療法
経過観察
症状がなく見た目も気にならない場合は治療の必要はありません。副乳自体は病気ではないため、放置しても健康上の問題は起こりません。
切除
見た目が気になる、下着や衣服でこすれて日常生活に支障が出るといった場合は切除の対象になります。局所麻酔の日帰り手術で、副乳のサイズに応じて2〜3cmの切開と縫合で対応します。抜糸は術後7〜10日、日常生活は当日〜翌日から可能です。
脂肪吸引
男性の副乳の主成分が脂肪組織のみで、乳腺組織が乏しい場合は脂肪吸引だけでも対応可能なことがあります。ただし男性の副乳は乳腺量が少ないタイプが多く、切除で十分な結果が得られるケースがほとんどです。
治療費用
- 切除(自由診療):片側5万〜15万円/両側10万〜30万円
- 切除(保険適用の場合):症状がある稀なケース。3割負担で1〜3万円程度
- 脂肪吸引:片側15万〜25万円/両側30万〜50万円
男性の副乳は症状に乏しいため原則として自由診療となります。炎症を繰り返す・下着でこすれて皮膚がただれるなど医療上の症状がある場合のみ、保険適用が検討されます。
男性の副乳と男性乳がん
男性にも稀に乳がんが発生することが知られており、全乳がんの約0.5〜1%を占めます。ただし男性の副乳から発生する副乳がんはさらに稀で、報告例は極めて限られています。
それでも、次のような変化がある場合は皮膚科・形成外科・乳腺外科での診察が必要です。
- 脇や胸のしこりが急に大きくなっている
- 硬くて動かないしこりがある
- 皮膚のくぼみや引きつれがある
- 血性の分泌物が出る
- 脇のリンパ節が腫れている
詳しい鑑別ポイントは副乳は乳がんになる?見分け方と副乳がんの発生率でも解説しています。
受診の目安と選び方
男性の副乳で受診を検討するタイミングは次のとおりです。
- 見た目が気になる、コンプレックスになっている
- 下着や衣服でこすれて痛みや炎症がある
- しこりが大きくなっている、硬さが変わっている
- ほくろかイボか副乳か判断がつかない
受診先の目安
- 皮膚科・形成外科:副乳の診察・切除。傷跡を最小限にしたい場合は形成外科専門医のいるクリニックへ
- 美容外科:見た目重視の自由診療での治療
- 乳腺外科:しこりの性質判断で悪性が疑われる場合
よくある質問
Q1. 男性で副乳がある確率はどのくらいですか?
日本人男性の約1.5〜3.6%、つまり30〜60人に1人程度に副乳があると報告されています。女性より頻度は低いものの、決して珍しくはありません。
Q2. 男の子の副乳は放置しても大丈夫ですか?
男の子の副乳は健康上の問題を起こすことがほとんどなく、成長とともに大きくなることも少ないため、基本的に経過観察で問題ありません。本人が見た目を気にする場合は、小学校高学年以降に形成外科で相談することができます。
Q3. 男性の副乳は乳がんになりますか?
男性の副乳から発生する副乳がんは極めて稀です。ただし男性にも乳がんは発生する(全乳がんの0.5〜1%)ため、しこりの急な大きさや硬さの変化、皮膚のくぼみ、血性分泌などがある場合は皮膚科・形成外科・乳腺外科での診察をおすすめします。
Q4. 男性の副乳の切除は保険適用になりますか?
男性の副乳は症状に乏しいため、原則として自由診療になります。炎症を繰り返す・下着でこすれて皮膚がただれるなど医療上の症状が明確な場合のみ、保険適用が検討されます。
Q5. 男性の副乳の切除費用はいくらですか?
自由診療の場合、片側5万〜15万円、両側10万〜30万円が相場です。麻酔代・薬代・術後通院費が別途かかることもあります。初診時に総額の見積もりを確認することをおすすめします。
Q6. 男性の副乳と女性化乳房の違いは?
女性化乳房は男性の胸部の乳腺組織がホルモン異常や薬剤の影響で発達したもので、通常の乳頭・乳輪部分が膨らむ疾患です。副乳は胎児期の乳腺堤の残りが脇の下などに現れる先天的な変異で、発生場所も原因も異なります。判別は診察と必要に応じてエコーで行います。
Q7. 男性の副乳の切除の傷跡はどれくらい目立ちますか?
脇のシワに沿って切開し細い糸で丁寧に縫合するため、半年〜1年で白い線状になり目立ちにくくなります。ケロイド体質の方は事前に医師に伝えることが大切です。
まとめ|男性の副乳は珍しくない、迷ったら形成外科へ
男性の副乳は約30〜60人に1人にみられる先天的な変異で、症状に乏しく多くは経過観察で問題ありません。見た目が気になる、下着でこすれる、しこりの性質が心配といった場合は、形成外科・皮膚科での相談をおすすめします。
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麹町皮ふ科・形成外科クリニックでは、形成外科専門医が男性の副乳の診察・治療を行っています。カウンセリングだけでもお気軽にご相談ください。
References
- 木田文夫. 人体の副乳に関する遺伝体質学的研究. 日医大誌 1959;26(2):151. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnms1923/26/2/26_2_151/_pdf
- Adler DD, et al. The ABCs of Accessory Breast Tissue. AJR. 2014. https://ajronline.org/doi/10.2214/AJR.13.10930
- Loukas M, et al. Accessory Breasts: A Historical and Current Perspective. Am Surg. 2007;73(5):525-528.
- 日本形成外科学会. 副乳. https://jsprs.or.jp/general/disease/umaretsuki/kyobu/fukunyu.html
- Fentiman IS, et al. Male breast cancer. Lancet. 2006;367(9510):595-604.
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